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白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~  作者: YUU
第二章 学園編

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38 工房

 迷宮内で見つけた隠し扉の先にあった通路、アルメリア達はその道を進んでいた。その道はかなり長かったが、通路の両端には予め光源が設置されており、足元が疎かになる事は無かった。

 また、その通路はそれほど長くなく、数分も進めば通路の先が見えてきた。

 

「さて、行きますわよ」

「「はい」」


 そして、通路の最奥に辿り着いた三人はそのままの勢いで、その中へと入っていく。

 だが、その先にあった光景を目にした瞬間、彼等は思わず言葉を失った。


「ここは、一体……」


 そこにあったのは筒状の大きな装置が無数に置かれている巨大な空間だったからだ。

 その装置の中は不可思議な液体で満たされているようで、その液体が不思議な光を放っていた。また、装置の前には操作盤の様な物が置かれているのが目に入った。

 その異様な光景に三人は思わず息を飲む。

 そして、一番彼らの目を惹いたのは一番中央にある一際大きい装置だった。その中にも他の装置と同様に発光する液体が入っているが、他の装置と違うのはその中に狼の様な姿をした漆黒の体毛を持つ大きな獣が入っていた事だ。

 アルメリア達はおもむろにその装置の前まで歩みを進める。


「……これは一体何なのかしら?」

「魔獣、です。アルメリア様……」


 その獣を見たアークスが思わずそう呟く。その言葉にアルメリアは耳聡く反応した。魔獣、それは魔族が従える下僕だった筈だ。


「あら、これが魔獣ですの?」

「ええ、その通りです。昔に何度か見た事があるので間違いないかと」


 そして、アルメリアはその装置に入った魔獣を見つめる。


「これが、魔獣ですのね……」


 アルメリアは思わずそう呟く。魔獣と言えば、アルメリアにも関係しているかもしれない存在だ。まさか、こんな場所で出くわすとは想像もしていなかった。


「アルメリア様、恐らくここは魔族の工房なのかもしれません」

「その装置や魔獣の事を考えても間違いないかと」


 この光景を見れば誰でもここが魔族の工房だという事は嫌でも理解させられるだろう。

 しかし、二人はそう言いながらも心の中に一抹の疑問を抱いていた。学園の施設である迷宮の中に何故こんなものがあるのか、その理由が分からなかったのだ。


「アルメリア様。一旦、戻ってここの事を学園に報告するべきでは?」

「そうですわね。直ぐに戻って報告を……」


 アルメリア達は身を翻し迷宮へと戻ろうとする。だが、その時、何の偶然か運悪く彼女の手がその装置の操作盤に当たってしまったのだ。

 すると、その直後の事だ。突如として工房内に警報音のようなものが響き渡ったのだ。何事かと焦るアルメリア達だったが、その直後アルメリアと二人を分断するかのように大きな結界が発生した。


「「っ、アルメリア様っ!!」」


 二人は慌てて彼女の元に駆け寄ろうとするが、結界に阻まれそれは叶わない。ならばと、今度は結界を破壊するために攻撃し始める。

 しかし、二人がどれだけ攻撃しても、結界は壊れる気配を全く見せなかった。


「一体、何が……」


 そして、アルメリアがそんな事を呟いたその直後だった。目の前にある魔獣が入っている装置のガラスが一瞬にして砕けたかと思うと、その中の液体が勢い良く外に流れ出す。そして、全ての液体が外に出た直後、装置の中にいた魔獣が起き上がったかと思うと、目の前にいるアルメリアを睨みつけた。

 そんな魔獣の姿を見た二人は先程以上に慌てた様子を見せる。それも当然だろう。その魔獣は明らかにアルメリアを敵とみなしているのだから。


「……こうなっては致し方ありませんわ。あなた達はここから逃げなさい」

「そういう訳には参りません!! 」

「ですが、今のあなたたちではこの結界はどうする事も出来ないでしょう?」

「それは……。ですが……」


 彼女の強さの一端は先ほど見ている。だが、それでも魔獣を相手に生き残れるとは到底思えない。

 しかし、それ以上にアルメリアを閉じ込めているこの結界がどうしようもない事は彼等自身が一番良く分かっている。


「わたくしの事が心配なのでしたら、すぐにここから抜け出して、助けを呼んできてくださいな」

「………………っ、畏まりました。すぐに助けを呼んできます!!」

「アルメリア様、それまでご無事で!!」


 アークスとアミィの二人はアルメリアにそう言うと、そのまま工房の入り口から迷宮の中へと戻っていった。

 二人の去っていく足音を聞きながら、アルメリアは魔獣へと剣を向ける。


「ふふっ、魔獣と戦うのは初めてですわね。是非ともわたくしを楽しませてくださいな」


 そして、アルメリアは剣を構えると、襲い掛かってくる魔獣を迎え撃つのだった。

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