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白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~  作者: YUU
第一章 幼少編

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15 リリア

 それはアルベルトの突然の訪問から数週間がたった頃のある日の事だった。


「姫様、少しよろしいでしょうか」


 アルメリアにそう声を掛けてきたのは彼女の暮らす離宮で侍女長を務めている女性だった。

 また、彼女の傍には見覚えのない一人の侍女が控えている。


「どうしたのかしら?」

「本日より新しい侍女がこの離宮に配属になった為、彼女の紹介を行いたいと思いまして」


 侍女長がそう言うと、後ろの侍女が一歩だけ前に出てきた。


「こちら、本日よりこの離宮に配属される事になった侍女のリリアです」

「初めまして。私はリリアと申します。姫様、これからよろしくお願いいたします」


 リリアと名乗ったその侍女は一歩前に出て、アルメリアに一礼をする。皇宮付きの侍女だけあってその所作には何の問題も見られない。

 だが、アルメリアは何故だかその侍女の事が気になった。


「リリアと言ったかしら。あなた……」


 アルメリアはそこまで言うと、リリアの顔をじっと見つめる。

 彼女はリリアのその所作や纏う雰囲気といったものが気になったのだ。特に雰囲気に関しては何処かで似たようなものを感じた覚えがあった。

 しかし、それを何処で感じたのか、アルメリアにはどうしても思い出せなかった。


「姫様、リリアがなにか?」

「……いえ、何でもありませんわ。これからお願いしますわね」

「はい、よろしくお願いいたします」


 侍女長とリリアはアルメリアに一礼をした後、そのまま侍女としての仕事を始めていった。




 リリアがアルメリアの元に配属されてから数日後の事、今日はマティアスとの模擬戦の日だった。


「アルメリア殿下、本日はよろしくお願いいたします」

「ええ、よろしくお願いいたしますわ」


 アルメリアとマティアスは相対しながら、一礼をした後、剣を構える。そして、開始の合図と共に二人の模擬戦が始まった。

 今日の模擬戦はアルメリアが攻勢、マティアスが防御主体で立ち回る形で行われている。しかし、マティアスも時折、攻撃側に回りアルメリア側もそれに応戦する立ち回りになる事もあった。


「これは、どうかしらっ!?」

「今のは悪くありませんな」


 アルメリアはマティアスに出来た一瞬の隙を突き、そのまま攻撃を仕掛けた。だが、マティアスはその攻撃を紙一重の距離で躱し、その勢いを利用して、カウンターを仕掛けた。しかし、アルメリアも剣を引き戻しそのままマティアスのその一撃を上手く逸らす。

 まさに一進一退という言葉が相応しい攻防が繰り広げられていた。

 アルメリアへの剣術が始まった当初は護身術程度であったが、今ではこうして近衛騎士団の副団長を務めるマティアスを相手に模擬戦を行える程度にはアルメリアの技量は上達していた。


「流石はマティアス副団長ですわね。今のわたくしでは全く勝てる気がしませんわ」

「私は皇帝陛下の御身を守る誉ある近衛騎士団の副団長。その肩書を持つ以上、アルメリア殿下であったとしても後れを取るわけには参りません」

「それもそうですわね。では、続けましょうか」

「はい」


 そして、二人は模擬戦を再開する。だが、そんな様子の二人を少し離れた場所で見ていた女性がいた。


「これは、一体……」


 目の前の光景に思わずそう呟いていたのは新人侍女、リリアだった。彼女はまさかアルメリアがこんな事をしているとは思わなかった。

 そして、リリアがその光景に見入っていたその時だった。


「ふふっ、驚いたかしら?」


 後ろからそう声を掛けてきたのはリリアの先輩にあたる侍女だった。リリアは流石に後ろから声を掛けられた事で硬直するが、それも一瞬だけだった。


「ええ、流石に驚きました」

「そうよね。あなたもそう思うわよね」


 リリアもこの離宮に配属されるにあたり、アルメリアの境遇をある程度は知らされている。だからこそ、この光景を見るまではアルメリアは箱入りで育てられてきたと思っていたのだ。


「姫様は何時からこんな事を?」

「そうね……。確か、始めてからもう数か月になるわね」

「数か月ですが……」

「ええ、最初は護身術の筈だったのだけどね。何時の間にかこうなっていたわ。気が付いた時にはもうマティアス様と模擬戦をするまでに成長なされていたわね」


 そして、二人はその視線を再び目の前で繰り広げられている模擬戦へと向ける。その中でリリアが一番驚いたのはアルメリアの技量だ。

 マティアスの方も多少手を抜いているように見受けられるが、それでも箱入りである筈の皇女が近衛騎士との模擬戦が成立しているという事実だけでも、アルメリアの剣技は相当な物になっている事がはっきりと分かる。

 そして、リリアの目を何よりも目を惹かれたのはアルメリアの戦い方だった。


「美しい……」


 彼女の戦い方はまるで演舞の様な美しさを兼ね備えており、アルメリアのその容姿も相まって戦乙女と呼んでも差し支えないほどの美しさを放っていた。


「ええ、本当に美しいわよね……」


 先輩侍女もリリアの言葉に合わせたかのように同じ言葉を呟いた。

 彼女は戦いについては分からない。それでも、アルメリアの戦い方からある種の美しさを感じ取っていた。


「……あっ、私は次の仕事があるんだったわ。あなたもそろそろ仕事に戻りなさいね」

「はい、分かりました」


 そして、先輩侍女がこの場から去ってから、少しすると何らかの形で決着が着いたのか、模擬戦が終了した。


「アルメリア殿下、また腕を上げられたようで」

「ここまで剣技が上達できたのはあなたの働きがあってこそ。その尽力に感謝いたしますわ」

「その言葉、私にとって何よりも誉れでございます」


 模擬戦を終えた二人はそう言葉を交わしながら、今後についての話をしていく。

 そんな訓練風景を見ながら、リリアは一瞬だけ何かを考えこんだ後、仕事が残っている事を思い出し、この場から去っていくのだった。

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