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白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~  作者: YUU
第一章 幼少編

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14 兄の二度目の出会い

 それは父であるガイウスから呼び出された日から暫くの日が経ったある日の事だった。今日はクラインやマティアスによる授業が無い休息日の為、アルメリアは自室で紅茶を嗜んでいた。

 だが、そんな楽しい時間も呆気なく崩れ去った。本来なら静かなはずの部屋の外から何やら話し声のようなものが聞こえてきたのだ。


「あら、一体どうしたのかしら?」


 すると、その直後、一人の侍女が部屋まで入ってきたかと思うと、そのままアルメリアの元まで近づいてきた。


「姫様、お騒がせして申し訳ありません。少しだけよろしいでしょうか?」


 侍女のその言葉にアルメリアは彼女の用件が部屋の外で起きている騒動の事だと察した。


「……一体、外で何があったのかしら?」

「それが……。この離宮にお客様が来られておりまして、姫様に面会を求めておられるのです」

「わたくしに? 一体どなたなのかしら?」

「それが……」


 侍女がそこまで言った直後、部屋の外の話声は更に大きくなっていった。


「侍女風情が私の邪魔をするな!!」

「こ、困ります。いくら殿下といえど、事前の約束もなしに来られるのは……」

「第三皇子である私が開けろと言っているのだ」

「そ、そういう訳には参りません。わたしたちは陛下の命によって……」

「ええい、退け。これ以上、邪魔立てするようであれば、皇宮仕えの侍女であっても切り捨てるぞ!!」


 そして、激しい怒鳴り声と大きな物音がした後、アルメリア達がいる部屋の扉が大きな音を立てて勢いよく開いた。

 直後、扉の向こう側から現れたのは何処かで見覚えのある男性だった。アルメリアはその男の顔を見ながら、数日前の出来事の事を思い出していた。


(あの方は確か、お父様に呼び出されたあの日にお姉様が教えてくださった方でしたわね。わたくしたちの兄で、お名前は確か、アルベルト、でしたかしら?)


 また、アルベルトの周りには護衛と思われる複数人の騎士や彼の側近と思われる男たちの姿がある。

 室内に無断で入ってきたアルベルトに対し、室内にいる侍女たちはアルメリアを守るかのように彼の前に立ち塞がる。

 しかし、相手が皇族というのもあり侍女達も強く抵抗は出来なかったようで、アルベルトは彼女達の間を押し退けながら、アルメリアの元まで近づいて来る。

 そして、アルベルトはアルメリアの元に辿り着くと、そのまま彼女と向かい合うように勢い良くソファーに腰かけた。


「初めましてだな、我が妹よ。私はヴァレリア帝国第三皇子であるアルベルト・フォン・ヴァレリア。つまり、私はお前の兄だ」


 アルベルトはそう名乗るが、事前の連絡すらもない突然の訪問にアルメリアは内心では辟易としながらも表面上はそれを表に出す事は無く、淡々とアルベルトに対応する。


「なるほど。そうなのですね。では、貴方の事は、お兄様、とお呼びしてもよろしいかしら?」

「好きに呼ぶといい」

「ああ、あと一つだけ訂正してくださいな。わたくしたちがこうして会うのは初めてではなく二度目ですわ」

「二度目、だと?」

「ええ、覚えておりませんの?」


 アルメリアの言葉にアルベルトは数分ほど考え込むが、ふと何かを思い出したように顔を上げた。


「ああ、思い出した、思い出したぞ。確か、あの時、マリアーナの後ろにいた娘か」

「ええ、思い出していただけたようで何よりですわ」


 そして、アルメリアは改めてアルベルトの方へと向き直った。


「では、改めまして。ごきげんよう、お兄様。本日は一体どのようなご用件でこちらまでいらしたのかしら?」

「別に大した用ではない。お前の兄として、そして近い将来この国を継ぐ者として曲がりなりにも妹であるお前の顔を一度は見ておこうと思っただけだ」

「……はぁ」


 彼の言葉の節々には幼い頃より皇族として育てられてきたが故の傲慢さが含まれている。しかし、アルメリアはそこにまた別の感情が込められているのを察した。


(これは、敵意、でしょうか? わたくし、お兄様に何かしてしまったのかしら?)


 しかし、アルメリアにはほぼ初対面である筈のアルベルトから敵意を向けられる覚えなどなかった。


「それにしても、アルメリア、お前は父上に全く似ていないのだな。面影が全くと言っていいほどないぞ」


 アルベルトの口から突如として放たれたその言葉にアルメリアの侍女たちは揃って彼を睨みつけた。

 彼の言葉はアルメリアが不義の子であると言っているとも捉えられかねない発言だ。実際に後ろにいる護衛の騎士の中には焦った様子を見せる者もいる。


「……わたくしはお母様に似ているそうですから、それも当然なのかもしれませんわね」


 だが、アルメリアは彼の言葉に興味もなく淡々と返事を返した。無関心、というのがアルメリアの内心を表すのに最も相応しい言葉だろう。


「用は済んだ。これで帰る事にする」

「あら、もうお帰りになられますの?」

「ああ。暇なお前と違って、私は忙しいのだ。お前たち、行くぞ」


 アルベルトはそう言った直後、勢いよく立ち上がり、そのまま護衛を引き連れて離宮から去っていった。


「結局、お兄様は何をしにいらっしゃったのかしら……?」


 そして、残されたアルメリアは困惑の表情でポツリと呟くのだった。




 一方、アルベルトは自室に戻り、側近たちを集めての会合を行っていた。


「で、殿下、先程のような発言はお控えになった方がよろしいかと……」

「分かっている。だが、アルメリアの顔を見た瞬間に思わず口に出してしまったのだ」


 先程の発言とは、アルメリアが父と似ていないという旨の発言だ。

 彼はあの時、アルメリアに対して父と全く似ていないと言った。しかし、それは彼の本心ではなかった。アルベルトは彼女から何処か父の面影を感じ取っていた。だが、アルベルトはそれを否定したくあのような言葉を放ったのだ。


「しかし、父上はあんな小娘の何がいいというのだ。皇太子の座は私こそが相応しいというのに」


 父から直々に後継者に選ばれるぐらいなのだから余程優れているのだろうと思い、彼女の顔を直接見に行った。しかし、アルメリアに直接相対しても彼女からは才知の欠片も感じる事は出来ず、父の後継者に相応しい者とは到底思えなかった。


「こうなっては致し方あるまい。例の計画を実行に移せ」


 その言葉にその側近は一瞬だけ息を飲むが、その直後彼は覚悟を決めた表情を浮かべた。


「……畏まりました。ですが、例の計画の為には各所への根回しもありますので実行までには少しばかりお時間を頂戴する事になります」

「分かっている。だが、時間は掛けすぎるなよ。いつ父上が公の場でアルメリアを後継者として指名するか分からんからな」

「はい、出来るだけ早急に実行に移したいと思います」

(こうなれば、あの娘には消えてもらう他ない。これも私が皇帝になる為だ。恨んでくれるなよ、我が妹よ)


 そして、彼は内心で心にもない謝罪をアルメリアにするのだった。

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