82大仁田と錆びた剣
「やっぱり納得いかないっす」
大仁田さんが、錆びた剣でゴブリンがスパスパ斬れるのに納得がいかないらしく、大仁田さんに錆びた剣を貸すことになった。
「持った感じ、普通の錆びた剣ですよね。それにこれ刃なんか生きてないっすよ。ほらちょっと触ってみても全然ですよ」
「はあ、そういわれても斬れましたよ?」
「修太朗さん、次俺がやるんでこれ借りてもいいっすか?」
「はい、もちろん全然いいですよ」
そんなやり取りがあって錆びた剣は今大仁田さんの手の中にある。
「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」
大仁田さんがゴブリン相手に魔法を発動する。
「ええええ~っ。なんだこれ」
大仁田さんが驚いたような声を上げているけど、こちらから見ていても少しおかしい。
大仁田さんを覆う緑色の光がいつもより薄い気がする。
”今度は陸人の番”
”陸人が錆びた剣って違和感しかない”
”錆びた剣はオッサンしか似合わん”
”りくとくんがんばって~~”
”スパっといっちゃって~”
大仁田さんがゴブリンへと向かっていくが、いつもに比べていくぶん動きが鈍い気がする。
「くっそ~身体がうごかんっすけど、これでやるしかない」
大仁田さんがゴブリンに剣を振るう。
「湊隊長?」
「少しおかしいようですが、ゴブリンなら大丈夫でしょう」
錆びた剣は俺の時同様ゴブリンの身体をスパっと切り裂いた。
大仁田さんの様子に不安を覚えたけど、まったくの杞憂だったようだ。
やっぱりあの錆びた剣は斬れる。
「うわっ、なんだこれ」
大仁田さんから驚きの声が聞こえてくる。
大仁田さんはそのまま剣を振るい、ゴブリンを倒していく。
”大仁田剣も結構いけるな”
”りくとくんはなんでもいけてる。かわいいい~”
”なんか不安定じゃね?”
”いつもの勢いはない”
”やっぱ大仁田には斧が似合う”
”錆び剣、てつくずじゃなくてよかったな”
しばらくして、ゴブリンを倒し終えた大仁田さんが戻って来たけど様子がおかしい。
それほど苦戦したようにもなかったけど、肩で息をしてるし身体が重そうにみえる。
「修太朗さん、この剣なんなんすか。やばいっす」
「よく斬れますよね」
「いや、そうじゃなくてこれ、魔剣の類じゃないですか?」
「魔剣?」
魔剣って、あの魔剣?
「魔法発動した瞬間、めっちゃ持ってかれましたよ? これはヤバいっす。まともに魔法発動できなかったんですけど」
「え?」
もしかして、あの魔力が剣に流れる感じって、錆びた剣に魔力吸われてたって事⁉
「だけど、りんたろ~は普通に戦ってたよ~」
「いや、普通むりっす。たぶん修太朗さんが異常なだけです」
異常……。
「これ返しますね。確かに切れ味は悪くなかったです。だけど俺がそれ使ってダンジョンに潜ってたら魔力が枯れてミイラになりそうっす」
「そうなんですね……」
俺は、特に体に変調をきたすようなこともなかったけど、大仁田さんの様子はよっぽどっぽいしこのまま使い続けても大丈夫なんだろうか。
「修太朗さん、大丈夫でですよ。修太朗さんですから」
「そうですか」
湊隊長の言葉に嘘はないと思うけど、いつもの俺だからというのは全く説得力に欠ける。
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