78 世界トレンドとは
「あ~~修太朗さん、昨日はすごかったみたいっすね~」
湊隊長と話していると今度は大仁田さんが出社してくるなり声をかけてきてくれた。
「昨日ですか?」
「そうっす。一人でゴブリンキングやっちゃったでしょ。もうあれでもちきりですよ」
「ああ、ゴブリンキングの事ですか」
「そうですよ~。あれ? なんかふつうじゃないっすか?」
「え⁉ 普通ってふつうですよ?」
「大仁田君。修太朗さんはエゴサとかしないそうなので」
「あ~~じゃあもしかして知らないんすか?」
「え~っとなにをでしょうか?」
「世界トレンドですよ。世界トレンド1位ですよ」
「なにがでしょうか?」
俺の理解能力が低いのか大仁田さんの言ってることがよくわからない。
世界トレンドってネットの話かな。
「『#花岡修太朗40歳独身彼女無し』が世界1位取ったんすよ」
「…………」
やばい。大仁田さんが何を言っているのか本当にわからない。
「わかってないっすね。これは快挙ですよ快挙。今まで防衛機構の職員が世界トレンド1位とったことなんかないんじゃないですか?」
「はあ、そうなんですか」
「大仁田君、修太朗さんがついて来ていませんよ。修太朗さんスマホ持ってますか?」
「は、はい」
「よかったら”#花岡修太朗40歳独身彼女無し”で検索してみてください」
???
よくわからないけど湊隊長に促されるままスマホに”#花岡修太朗40歳独身彼女無し”を入力してみる。
それにしても、このワードを会社の先輩と上司から連呼されると事実とはいえ居た堪れない。
????
え~っとこれはなんでしょうか?
#花岡修太朗40歳独身彼女無しを入力して検索するととんでもない数のヒットが……。
「あ~っ、え~っ」
人間理解の出来ないことにに遭遇すると思考が停止してしまうらしい。
「これは……いったい」
たしかにスマホの画面に”花岡修太朗40歳独身彼女無し”に関する表示が……。
日本広しといえど40歳独身の花岡修太朗がそう多くはないことはわかる。
いや、わかってる。これは俺だ。
俺の事がなんでこんなに⁉
思い返してみると、昨日の防衛機構のメインチャンネルのインタビューの中で独身を告白した。
まさかあれか?
あれがこんな事に⁉
なんで?
そんなに40男の独身がレアだったのか⁉
まさか、あのインタビューを世界中の人がみてそれで話題にしてるって事⁉
いや、本当に意味が分からない。
「その様子じゃ本当に知らなかったんすね」
「はい……」
「だって、あれ早朝のあの時間で同接500万超えてましたし、そりゃあトレンドにもなりますって。ゴブリンキングですよ? いや、ほんとヤバかったっす。修太朗さん、マジパネえっす。さすがっす」
「そうなんですね……」
朝から大仁田さんのテンションがおかしな事になってるけど、本当に俺の個人情報が世界トレンド1位となったらしい。
下手をすれば世界中の人が俺が40歳の独身男で彼女無しだと知ってるのか。
世界を相手の羞恥プレイ。
俺はやってしまったらしい。
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