64 人生初土下座
「リリィン~リリィンリリィン~リリィン」
こんな時間に誰だろう?
うう~ん。頭が痛いし身体が重い。
電話の音に重い瞼をどうにか開ける。
あれ?
なんだろうこの違和感。
なんか違う。
布団が俺がいつも使ってる布団じゃない。
ベッドもいつものベッドとは違う。
天井も……違う。
ここ、どこだ?
え~っと、本当にどこだ?
ぼ~っとして頭が回らない。
「うぅ~ん、りんたりょ~、もうだめ~」
俺の横から、寝言のような声が聞こえてきて眠気が吹き飛び一気に意識が覚醒した。
まさか……。
おそるおそる声のした方へと顔を向ける。
「凜⁉」
いや、寝言が聞こえた時点でその可能性しかなかったのかもしれない。
だけど、目の前の光景に思考が完全に停止してしまった。
なぜか俺の隣に凜がいる。
いるというか、寝ている。
なんで……。
目が覚めて女の子が横で寝ていたことなんかこの四十年一度もなかった。
いや、厳密にいうと女の子ではないけど母親が横で寝てくれていたことはある。
だけど、これは全くそれとは違う。
そもそも、ここはどこだ?
俺の部屋でないことは間違いない。
広くてきれいな部屋だけど、ホテルって感じでもない。
それに、俺は昨日凛と一緒に居酒屋に行って……。
お店を出てタクシーを探そうとしてたはずだけど。
そのあとの記憶が無い。
そして今の状況。
理解はできないけど、大変なことをしてしまったのはわかる。
やってしまった。
なにも憶えてないけど、凜が同じベッドに寝ている。
そんな非現実的な状況が、俺を現実へと引き戻す。
どう考えても俺がやらかしている。
社会的に終わった……。
俺は若い女の子相手になんてことをしてしまったんだ。
よりによって、職場の先輩でアイドルな凜を……。
「りんたろ~、もうむりだよ~」
全身から変な汗が噴き出してくる。
もう無理ってなにが?
いったい俺は何をやったんだ?
それに俺の恰好。
着ていたはずの服はなく、下着だけになっている。
そして、布団越しに見える凜の肩は肌が見えている。
うん、これはあれか。
この状況、経験したことがないので全く理解が追い付かないけど、四十年も生きていればわかる。
謝って許されるはずもないけど、謝るしかない。
そういう問題じゃない。
警察か。警察に行った方がいいか。
自首した方がいいのか。
だけど記憶が無いのに何も話す事がない。
「うぅ~ん、りんたろ~起きたの~?」
「え、あ、はい」
凜が眠そうに目を開いた。
俺はベッドの上で即座に土下座した。
人生初土下座がこんなシュチュエーションだとは想像もできなかったけど身体が勝手に反応してしまった。
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