49 昔からヒーロー?
「花岡さ~ん。わたしも~犬は苦手なんです。お揃いですね~」
「はぁ、そうなんですね」
「そうですよ~わたしは猫派で~す。花岡さんは猫ってどうですか~」
「猫ですか? いいと思います。ペットを飼えるマンションに住んだことはないんですけど」
「こんどペットOKのマンションに住んでみます?」
「え~っと、寮はペットダメだったと思うんですけど」
「だ~か~ら~引っ越してみます?」
「どこにですか?」
「わたしのところです~」
「いや、いや、いや、わたしのところって、本気にしちゃいますよ」
「もちろん本気ですよ~」
小谷さんのは冗談とはわかっていても心臓に悪い。
「小谷さんお酒飲み過ぎましたか?」
「ぜんぜん~ん。それより、今日すごかったですけど〜花岡さんって昔から強かったんですか?」
「え? いや、ぜんぜんですよ。どっちかといえば弱い方かと」
「だって、言ってたじゃないですか~。前に犬に襲われてた女の子を助けたって~」
「あ~そんな話しましたかね」
「花岡さん犬に襲われた女の子も助けたんですか?」
犬の話に興味をひかれたのか今まで静かに飲んでいた後藤隊長が、突然反応して話しかけてきてくれた。
「いえ、もう十年も前の話ですよ。それにあれは助けたというより、俺が勝手に襲われたというか」
「よかったら、詳しく聞かせてください」
昔の失敗談を軽く終わらそうと思ったけど、思いの外後藤隊長が真剣な顔で聞いて来るのであの時の事を話す事にする。
「あれは、たぶん十年くらい前なんですけど、仕事で営業回りしてたんです。そしたら女の子の泣く声が聞こえてきて」
「そうなんですね。それで花岡さんが助けに向かったと」
「いえ、そういうつもりじゃなかったんですけど気になってしまって」
「花岡さんらしいですね」
俺らしい? 俺ってこの二日で、そんなお助けキャラみたいな雰囲気出していただろうか。
「声のする方に向かったら女の子が結構大きな犬に襲われそうになってたんです。これはまずいと思って、大声で犬の注意を引いたんですけどね」
「さすが花岡さんですね」
「いえ、それが情けないことにそのあと犬がこちらに襲いかかってきまして。必死に逃げた次第です」
「大丈夫だったんですか?」
「いや~スーツはびりびりに破れるし、結構激しく噛まれて流血するし散々でした」
「…………」
あれ……。
女性陣の人達にちょっと引かれてしまったかな。
「花岡さ~ん。その時の女の子の事憶えてますか~?」
「え? 女の子ですか? いえ、必死でしたし戻った時にはいなくなってたんですよ」
「あ……ごめんなさい」
「え? 小谷さんどうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもないで~す。ありがとうございました~」
失敗談の落ちが流血でちょっと変な空気になっちゃったな。
「花岡さんは、昔からヒーローだったんですね」
「ヒーロー⁉︎ そんなんじゃないですよ」
「花岡さん謙遜が過ぎますよ。そんなの助けられた女の子からしたらヒーローそのものじゃないですか」
「喜田さんまでそんな……」
やばい。あの時の失敗談をこんな風に持ち上げられたら、恥ずかしくていたたまれない。
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