堀は水たまり
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚13が発売中です。
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非モテは春ごろに……。
よろしくお願します。
父さん黙ってないで、止めてくれ。
「凛香さん、私も呼んでもらっていいだろうか」
父さん⁉
挨拶以外に一言も発していなかった父親がおかしくなってしまった。
「お義父さん」
「……もういちどいいかな」
「お義父さん」
「……はい」
なんだ。
異様な光景が俺の前に繰り広げられている。
父親の反応がおかしい。
これって、俺が四十迄結婚できなかったから両親が壊れてしまったのか。
お義父さんお義母さんってなんだ。
しかも二人とも感極まった表情を浮かべている。
俺が大学に受かった時でさえそんな表情は見たことはない。
「凛香ちゃん、もう帰らなくてもいいんじゃない? このままここに住んじゃえばいいわ。防衛機構って危ない事もあるんでしょ。危ない事は修太朗にまかせて凛香ちゃんはこっちに住めばいいわ」
母さんがとんでもない事を言い出した。
「え~っいいんですか~」
「もちろんいいに決まってるじゃない。ねえお父さん」
「あたりまえだろう。部屋は修太朗の部屋をつかえば何の問題もない」
「本当ですか? 嬉しいです~」
凜までおかしくなった両親に合わせなくていいから。
「母さん、凜はそんなんじゃ……」
「修太朗、いい年して見苦しいわよ」
「いや、そういうんじゃ」
「ちょっと黙ってなさい」
だめだ全く聞いてくれる様子はない。
そこから一時間以上取りつく島なく、自分の無力感を味わいつつ、異世界に来たようなファンタジーな空間を味わう事となってしまった。
「なんなんだ……」
ようやく解放され、俺の部屋に凜を連れて入る。
「すまない」
「え~っ、なにが? いいご両親じゃない」
「いや……」
「こんなに優しくしてもらえると思わなかったよ~。ちょっと泣きそうだよ」
「そう……か?」
「うん、りんたろ~のご両親に会えてよかったよ」
凜の表情を見る限りお世辞とかそういうのではない気がする。
「ここがりんたろ~の育った部屋なんだね」
「ああ、今はなにも無いけど」
「やっぱり、ついてきて来てよかったよ」
それからの三日間は俺が考えていたものとは全く違うものになってしまった。
俺の両親が張り切ってしまった。
いや張り切り過ぎてしまった。
無力な俺では止めることは叶わなかった。
凜を連れてご近所回りした挙句、花岡家の墓参りにまで行き、父親の車に四人で乗り込み市内観光。
おまけに富士山の五合目まで行く張り切りよう。
富士山を訪れたのは俺でさえ二十年ぶりだった。
「凜ちゃん、本当に帰っちゃうの?」
「仕事があるんです~」
「やめちゃっていいのよ」
「これでも責任があるのですぐには難しいんです~」
「修太朗、絶対に凜ちゃんの事は護るのよ」
「言われなくてもわかってるよ。それに凜の方が先輩だし強いんだから」
「修太朗、そういう事を言ってるんじゃないの。死んでも護るのよ」
「はいはい」
「凜ちゃん、ここを実家だと思っていつでも来てくれていいからな。待ってるから」
「お義父さんありがとうございます」
俺たちはまた新幹線に乗り東京へと戻った。
「もっと普通の観光とかできればよかったんだけど」
「ううん、最高のお休みになったよ~。また連れて行って欲しいな~」
「本当に?」
「あたりまえじゃない。お義母さんもお義父さんもいい人で良かったよ~」
「ありがとうな」
「え~っなにが~?」
「いや、ありがとう。両親も喜んでたよ」
「うん」
かなり誤解を生んでしまった感はあるが、両親のあのテンションと表情を見ればこれでよかったのかもしれない。
きっとそうだ。
そう思うしかない。
今回の帰省、凜には感謝しかない。




