帰省
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「どう、りんたろ~変じゃない?」
このセリフ何度目だろう。
凜は一緒に実家の浜松へと向かう新幹線の中でしきりに服装を気にしている様子をみせている。
「大丈夫、似合ってるよ」
これはお世辞でも何でもなく本当に似合っている。
普段の凜ともちょっと違う。
落ち着いた感じのワンピース。
大人の女性に使う言葉としては適当ではないかもしれないけど、いつもの凜よりも大人びて見える。
よそ行きの服という言葉がぴったりかもしれない。
たぶん、俺の実家を意識してくれて気を遣ってくれたんだと思うけど、俺の両親に全くそんな気遣いは無用だ。
「う~っ、緊張してきたよ~」
「だいじょうぶだよ。俺の両親だよ? いたって普通だから」
駅からはタクシーで実家へと向かう。
ここ何年か戻って来てなかったけど、移動中の景色も特に変わった様子はない。
いつもと変わらない景色だけどいつもとは違う帰省。
となりにはなぜか凜がいる。
ここに至っても自分でもこの状況がよくわかってはいない。
「四千百七十円になります」
「カードでお願いします」
しばらくして実家へとついた。
「ここだけど」
「うん」
俺の実家は父親が建てたこの辺りではごく普通の一軒家。
インターフォンを鳴らしてから家の扉をひらく。
「ただいま」
俺が声をあげると奥のリビングから出てきた母親が迎えてくれた。
「おかえり~。あら~~~あら~~こちらのお嬢さんは」
「は、初めまして。小谷凛香といいます。修太朗さんにはいつもお世話になっています。これつまらないものですが」
いつの間に用意していたのか凜が菓子折りらしきものを取り出して母親に渡す」
「あら~これはご丁寧に。お人形さんみたいにかわいいお嬢さんね~~。さあ、中に入って」
「お邪魔します」
リビングに入ると父親も待ち構えるように座っていた。
しかもなぜか部屋の中なのにスーツにネクタイ姿だ。
「はじめまして、小谷凛香です」
「これは遠いところを。修太朗の父です」
「父さん硬いって。凜も楽にしてくれていいから」
「そうよ凛香ちゃん、楽にしてそこにでも座って~」
「はい、失礼します」
まあ、知らない家に来たんだから気持ちはわかるが、凜が緊張しすぎじゃないだろうか。
そういうタイプじゃないと思ってたんだけど。
凜の緊張具合を見てはじめこそ心配になったけど、全くの杞憂に終わった。
母さんが弾丸トークでガンガン斬り込んできたので、すぐに緊張状態は解けてしまった。
「そうなの~。修太朗がね~~。この朴念仁がね~。それにしても凛香ちゃんかわいいわ~。私も女の子が欲しかったのよ~。修太朗がいつまでたってもお嫁さんを連れてこないからもうあきらめてたんだけど。修太朗、式はいつなの? 式なんかどうでもいいから籍だけ先に入れないさい。あんたもう四十でしょ。急がないと逃げられたら大変だわ」
「いや、凜はそういうんじゃ」
「なによ~凜ってよんでるの? 凛香ちゃんは修太朗の事なんて呼んでるの?」
「えっと、りんたろ~って呼んでます」
「きゃ~っ、仲いいわね~。私の事も呼んでみてもらっていい?」
「お義母さん?」
「きゃ~~っ、もういちどいいかしら」
「お義母さん」
「これは、たまらないわね。録音するからもう一度いいかしら」
「母さん」
「あんたじゃないの。凛香ちゃんお願い」
「お義母さん」
「きゃ~~ッ、永久保存版だわ」
やばい。母さんが完全に暴走している。




