流れる時代
俺は約束通り翌日も道場へと来て素振りをしている。
たかが素振り、されど素振り。
魔力を纏わせ、途切れる事なく木刀を振り下ろす。
簡単なようで、なかなかに難しい。
完全に止まった状態なら問題ないが、身体を少し動かすと格段に難度が上がる。
案外、ダンジョンで役に立つのでないだろうか。
それにしても……。
平日だからなのかもしれないけど昨日も、今日も俺1人だけだ。
マンツーマンでみてもらえているので言う事はないけど、大丈夫なのかと心配になってしまう。
「花岡くん、契約してもらったからぶっちゃけるがこの時勢難しいんだよ」
「はぁ」
「ここが子供も習える道場なら良かったんだが、一撃必殺を旨とする南辰示現流、今の時代親が子供に習わせるか? ないな」
確かに子供が習う流派ではないかもしれない。
「同じく女性もない.ただなぁ、意味はあると思うんだよ。ちゃんと習えばゴブリン程度ならヤレる。私ならオークでも問題ない。護身の為にはいいと思うんだがなぁ」
「茂田さんは、魔法は?」
「残念ながら使えない」
魔法が使えない素の状態でゴブリンやオークを倒せるというのは普通にすごいのでは?
「昨日は聞きそびれたが、花岡くんが南辰示現流を習う目的はなんだ? 誰かそういう相手がいるのか?」
「そういう相手ですか?」
「ヤリたい相手だよ」
「ヤリたい……いえいえちがいます」
「なんだ、違うのか」」
「モンスターを倒すためです」
「モンスター? もしかして花岡くん防衛機構の」
「そうです。新米ですが」
「そうか、そうか.それは健全で何よりだ」
さっきの質問は……。
深く考えない方がいいんだろうな。
「花岡くん死ぬなよ」
「はぁ」
「うちの生徒でもいたんだ。防衛機構の人間が」
「そうなんですか」
「なかなか筋が良かったんだが、死んだよ。ダンジョンでな。今でも悔いが残る。もっと鍛えてやっていれば死ぬ事はなかったんじゃないかと。そうか防衛機構か。それは鍛え甲斐があるな」
そこから茂田さんに火がついたのか、訓練の強度が上がった気がする。
終わる頃には汗だくになってしまっていた。
マンツーマンなので休む暇がなかった。
ありがたい事だけど運動不足の俺にはかなりハードだった。
家に戻り、シャワーを浴びてレモン酎ハイを手にする。
「あ〜〜うまい」
いつもとは違ったうまさがある。
最近控えていたけどこれだけ運動したんだから今日は2本飲んでも大丈夫だろう。
運動した後の酎ハイってなんでこんなに美味しいんだろうか。
頑張った自分へのご褒美だ。
スマホを確認すると凛からお誘いの連絡が入っていたが、もう既に飲んでしまったしこの状態で今から出るのは難しい。
所用があるのでまた今度誘って欲しいと返信しておいた。
4/18日発売の非モテサラリーマン。
Amazon、bookwalkerさん等で予約受付中です。
よろしくお願いします。




