体験入学1
HJ文庫 モブから始まる探索英雄譚11が絶差発売中です。
HJノベルス非モテサラリーマン1巻は4/18発売です。
いっぱい買ってもらえると2巻が出ます。
よろしくお願いします。
「それじゃあ、素振りをやってみよう。まあ、振るだけでもなかなか大変だから」
「そうですか」
俺は受けとった木刀を手にして、茂田さんがやっていたように上段に構えてから軽く振ってみる。
確かに重い。
先端が太くなっているせいで振ると余計重く感じる。
ただ、普段使っている錆びた剣に比べると木なのでずっと軽い。
「ほう、問題なく振れるようだな。それだけでも大したものだ。振り方を見ると経験があるようにはないが、他に何か運動でもしてるのかい?」
「そんなようなものです」
「花岡さんは歳はいくつだ?」
「40歳になります」
「ほう、歳の割に鍛えているようですな」
ダンジョンに潜ることが運動だし、この1ヶ月くらいでちょっと筋力もついてきた感じはある。
確かに、以前の俺ならこの木刀を振るだけでも苦労したかもしれない。
「それじゃあ、こちらもそのつもりで教えますな。まず持ち手はこう。それで頭の真上に構えて相手の頭から一気に真っ直ぐ斬り下ろす」
「はい」
斬り下ろすって言葉を初めて聞いた。
指示に従って木刀を斬り落としてみる。
「それでは斬れんな。全く気が感じられん。身体と木刀に気を巡らせ振る時、刀に集約させるんだ」
「気ですか」
「もう一度やってみせるから、よく見てるんだ。キエエエエエエエエエエ〜!」
気合いと共に振られた木刀が風切り音をあげる。
「南辰示現流は初太刀が全て。己の全てを賭け、必ず斬り下ろす。肉と骨を断ちおろす。防ぐことは許さない。躱されたら自分が死ぬ.そのくらいの気持ちで振り下ろすんだ.それには相応の覚悟が必要になる」
「……はい」
おろすという言葉が妙に生々しい。
南辰示現流は、町の習いごととしては異質。
殺人剣の類ではないのか?
茂田さんが真剣に教えてくれているので逃げる事はかなわない。
「さあ、振ってみなさい。声も出して!」
「はい」
もうやるしかない。
「いやああ」
声を上げ、思い切り木刀を振り抜く。
「なんだその弱々しい声は.そんな事で人が斬れると思っているのか?」
「いえ」
「それに全く気が巡っていない。気の巡りを意識するんだ.そうすれば木刀に生命が宿る」
色々突っ込みたい所だが、茂田さん相手にそれは難しい。
俺は別に人斬りになりたいわけではない。
それに気の巡りというのがよくわからない。
「あの〜気の巡りとはなんでしょうか?」
「気は気だが。なんと言えばいいかな。血液とは別のパワー的なアレだな。全身に流れるのを感じるんだ!」
「はぁ」
茂田さんは、完全に感覚の人だ。
順序立てて教えてくれた北王地さんとは対極に位置する感じだ。
そう言えば北王地さんにも最初同じような事を習ったな。




