冗談だろ?
「なんか怪しいんだよね~」
「何の話?」
「べつに~りんたろ~がモテるってお話で~す」
「本当に何の話?」
結局、一連の今の話は何の意図があったのかよくわからなかった。
本当のことを言えば、黒髪のお姉さんも年下の女の人ももちろん興味はある。
ただ、セクハラおやじ扱いは避けたいのでここでは明言を避ける。
「それはそうと、りんたろ~あの時の映像とかみた?」
今までと凜の表情が少し異なる。
「ああ、一応聞き取りの時にみせられたから」
「なにか気づいた?」
「いや、何もわからなかった」
「あれって、ちょっと不思議なんだよね~」
「なにが?」
「あんなイレギュラーあの日だけでしょ?」
「そうか? ゴブリンキングの時もそうじゃないか?」
「そうなんだけど、タイミングがね~」
さっきの話といい凜の話の意図がよくわからない。
「ゴブリンキングは先発隊で、たおされちゃったからオーガが出てきたのかな~って」
「う~ん」
「それで石橋隊はわたしたちを引き寄せるため」
「そんな事あるか?」
「ゴブリンキングもみんながいない明け方だったし、オーガキングは捜索隊に合わせて出てきたし」
「そうかもしれないけど、そんなのはモンスターがこっちの動きを把握してないと無理だろ」
「だからだよ~」
もしかして、凜の話はそういう意味か。
「それは……」
「りんたろ~は知らないと思うけど、初めてではないんだよね~。タイミング?」
「そうなのか?」
「う~ん、今回のでちょっと噂にはなってるんだよ~。表立ってじゃないけど」
「そうなんだ」
「うん」
俺よりキャリアのある隊員たちがそう感じているのならそういう事もあるのかもしれない。
まあ、噂をそのまま鵜吞みには出来ないけど。
もし凜の話が本当だとしたら、モンスターの襲来には意図があって、おまけに防衛機構に内通者があることになる。
モンスターとの内通者?
そんな非現実的な事はない気がする。
そもそも、あのオーガキングたちと日本語なり言葉が通じるとは思えない。
いくら魔法でも、モンスターと言葉を交わす術はない気がする。
「それでね、噂には続きがあって、今回のオーガキングたちの目的なんだけど」
「目的ね~」
「うん、その目的がりんたろ~じゃないかって」
「ブッ、ゲホッ、ゲホッ。す、すまない」
予想もしてなかった突飛な答えに思わずむせ返ってしまった。
「だいじょうぶ?」
「ああ、だいじょうぶだ」
「だからね、今回の襲撃はりんたろ~をおびき出して倒そうとしたんじゃないかって」
「いや、ないない。俺モンスターに知り合いとかいないから」
「りんたろ~冗談じゃないんだからね」
いや、どう考えても冗談だろ。




