失踪
「ここで間違いなさそうです」
山口隊の人が指す場所には何もない。
映像の最後に残っていた場所まで辿り着いたようだけど、当然石橋隊のメンバーは見当たらない。
「皆さん、ここを中心に、各自しばらく周囲を探ってください」
周囲を探れと言われても、見える限りはなにもない。
となると、砂の中を探るしかないか。
砂の中に何かがあるということは、それは、ここで石橋隊に何かがあったということを示すことになるが、今は手掛かりになるものを探すしかない。
当然スコップなど持ってはいないので、錆びた剣を手に砂を掘り返していく。
人数がいるとはいえ、何かあるかもわからない砂の中を探るのは、骨が折れる。
全員が無言で周辺を掘り返していく。
まだ、24時間は経過していないが、その間にどのくらいの砂が積もっているのかもよくわからない。
おそらく30分ほど経過したころだろうか、隊員の一人がなにかを見つけたようだ。
「これ……」
砂の中から取り出したのは、折れた剣。
おそらくはセイバーギア。
「ふ~~っ、最悪の事態かもしれませんね」
「湊隊長」
「あれは、間違いなくセイバーギアです。それがあの状態で砂の中にあるということは、その可能性が高いですね。花岡さんも気を抜かないように」
「はい」
結局、その場から見つかったセイバーギアは2本。
一本は折れ、もう一本は持ち手に血と思われる黒っぽいものが張り付いていた。
「本部に連絡を入れました。今日はこれで戻れとのことです」
戻るのか。
納得できない部分もあるけど理解はできる。
2次被害拡大を防ぐため。
小隊を壊滅させるほどのなにかがいる可能性がある。
ここまで来れる小隊が、いつものモンスターにより突然壊滅する。
ここ最近5階層を周回していてわかるが、それは考え辛い。
ひとりがそうなるならわかるが、全員、それも映像も途切れたとなれば通常ではないモンスターの襲撃。
その可能性がある。
日の浅い俺でもそれはわかる。
周囲の隊員たちは一様に苦い表情を浮かべている。
当然だ。
同じ職場の、人によっては親交があったであろう石橋隊が最悪の結果を迎えたのだから。
俺にしてもこの仕事を軽く考えていたわけではない。
危険が伴い、可能性としてこういうことも起こりえる。
それは十分に理解しているつもりだったけど、目の前にある2本のセイバーギアをみると死を強く意識する。
「この周囲に何かいる可能性もあります。十分に注意して戻りましょう」
そうだ。
戻るまでが仕事だ。
それにあのセイバーギアを持ち帰る必要もあるだろう。




