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おっさんの想い

「もう私無理かもしれません」


こういう時にどう言えばいいのか俺にはわからない。

俺にとってダンジョンはきつい部分もあるけどそれ以上に充実感がある。

一切やめようと考えたこともない。


「まだ、スタートしたばっかりじゃないですか。せっかく学校も行ったわけだし、これからじゃないですか?」

「そうなんですけど、この仕事女性にはきつすぎます」

「確かにきつい部分もありますよね」


正直、後藤隊の女性陣のそういう素振りを見たことが無かったので、今までそこに考えが至らなかったけど市川さんの言うこともわかる。


「私、今まで山登りとかもほとんどしたことないですし、生き物とかも殺したことなかったんです」

「そうなんですね」

「魔法が使えるようになったからって、私が超人になったわけじゃないんです」

「そうですよね」

「学校の同期に遠藤さんっていたの憶えてますか?」

「遠藤……千佳さんですか?」

「はい、そうです。遠藤さんはもう、退職したそうです」

「え⁉ そうなんですか」

「次は私の番かなって」


衝撃だ。

同期ともいえる人がもう辞めてるなんて。


「市川さん、市川さんはどうして防衛機構に入ろうと思ったんですか?」

「それは、魔法が使えるようになって、これを活かすなら防衛機構かなって。もちろんお金がいいのもありますし」

「そうなんですね。俺はこの年まで魔法が使えなかったんで、今まで防衛機構に入るっていう選択肢がなかったんです。でもいつかはいれたらいいなと憧れは持ってました」

「はい」

「だから、この年で入隊することに悩みはしましたけど、思い切って入ってよかったと思ってます。今は微力ですけど、俺が活動することでモンスターが減って、それが誰かの助けになる。そんな風に考えてるんです」

「誰かの助けに……」

「あまり人に言うのもあれなんですけど、俺、ヒーローになりたかったんです」

「ヒーローですか?」

「恥ずかしながら、子供の時に観たヒーロー物が今でも大好きで、憧れてたんです。それがこうして魔法を使えるようになって自分がヒーローになれるんじゃないかとか思っちゃいまして」

「はい」

「いろいろ大変だし、肉体労働だけど誰かの役に立って、勝手にヒーロー気分を味わって、おっさんの自己満足というか結構充実してるなって」

「はい」

「今まで俺がよく知らなかっただけで、毎日防衛機構の人達がこうやって世界を護ってたんだと思ったら、今までの仕事とはまた違ったやりがいがあって」

「はい」

「俺はこの仕事好きですよ。もちろん他の防衛機構の職員の事も尊敬してます。もちろん市川さんの事もです」

「え? 私ですか?」

「もちろんです。山に登ったことも、生き物殺したこともない女性が、日々ゴブリンと格闘して世界の平和を護ってるんですよ? すごいです。尊敬しかないですよ」

「尊敬……」

「おっさんの俺に言われてもかもしれませんが、市川さんはすごいです」


俺には女性を喜ばせるような言葉をうまく選ぶことは出来そうにないので、自分が思っていることを伝える事しかできない。




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オッサンの素直で砕けた言葉は乙女のハートを元気付けるだろうか。
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