第7話 フィンの過去
俺は魔族だ。そして現魔王は俺の妹だ。
ルイは驚いた表情をしていた。
俺はルイにすべて話した。
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俺は父(前魔王)ゲルドと人間の母セレナとの間に産まれた。
俺は望まれた子ではなかった。
幼少期から父であるゲルドには魔王を継ぐため厳しく育てられた。
母であるセレナは優しかった。
魔法の訓練や、剣術の訓練で辛い時にはいつも母に慰められた。
俺が5歳の頃、妹ザラが産まれた。
妹はゲルドと魔族であるイザベルとの間に産まれた純魔族だ。
それからも俺は厳しい訓練をする毎日に耐えた。
それから月日が経ち、俺は成人した。
だが俺の力は父ゲルドを超えられなかった。
今思えばゲルドと並ぶくらいの力はあったのかもしれないが、ゲルドはそれを認めなかった。
俺は魔王にはなれなかった。
ゲルドは俺と同様、妹にも訓練をしていた。
訓練自体は厳しいものだったが、ゲルドとイザベルは妹には優しかった。
イザベルは俺に良く意地悪をしてくる嫌な女だったが、俺は父ゲルドの方が嫌いだった。
ザラとはそれなりに仲が良かった。
ザラは俺をお兄ちゃんと呼び、慕ってくれていた。
ある日の夜、俺は寝付けず城の中を歩いていた。
すると母の部屋から悲鳴がした。
俺は走って母の部屋へ向かった。
そこには母がひとり倒れていた。
母の白い服は血で染まり、胸にはナイフが刺さっていた。
俺は母のところへ駆け寄った。
母は虫の息だった。
最後の力を振り絞り俺に言った。
「お父様を恨まないで・・」
俺は武器を取り、父ゲルドのところへ向かった。
父は王座の間で王座にどっしりと座って眠っていた。
俺は我を忘れ、父の胸に深く一突き剣を刺した。
父は俺の方を見ていた。
父の目が憎かった。
俺はその目をじっと見つめながら何度も何度も父を突き刺した。
物音に気付き、ザラとイザベルが王座の間に着た。
ザラはその光景を目にして震え泣き、膝から崩れ落ちた。
それを見た俺は我に返った。
血で染まった自分の手を見て自分のやった事の意味を痛感した。
ザラは涙を流しながら言った。
「お兄ちゃん、どうして・・」
俺は妹になんと言えば良いかわからなかった。
そうして俺は城から逃げた。
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「これが俺の過去だ」
ルイは泣いていた。
「軽蔑するよな、当たり前のことだ。ルイありがとう。もうお前の前には現れないよ。」
そう言って俺は店を出ようとした。
「待ってください!!」
「なんだ?」
「そんなこと言わないでください!わたしは軽蔑なんてしません!!」
「なぜだ!俺は魔族だぞ!実の父を殺したんだぞ!」
ルイは俺の手を握って言った。
「あなたが人間でも魔族でも関係ありません、フィン様はフィン様です!」
ルイはそう言って涙を拭った。
「わたしの母は魔王軍に殺されました」
「魔王軍に!?」
「この街、バールヘヴンは今は活気が戻ってきましたが、10年前、魔王軍に襲われました。その時に母はわたしを守って死にました」
「そうだったのか、なら尚更俺を軽蔑するべきじゃないか」
「いいえ、むしろ恩人です。このお店は元々小さな魔道具店だったんです。わたしの父は自分では戦えない為、魔法専門の武器屋を始めたんです。母のことがあったから魔王軍を倒すために武器屋を始めたんです!」
「・・・・」
「魔王を殺してくれてありがとうございます・・!」
俺は胸の奥がスーッと軽くなった気がした。
それと同時に涙がこぼれた。
「ルイ、ありがとう」
ルイに話して良かった。
ルイの顔に笑顔が戻った。
「暗い話はここまでにしてっ、本題に戻りますよ!!」
「おう!」
「先程フィン様の中のマナを覗かせていただきましたが、フィン様の中には人間のマナと魔族のマナ2つが共存しています。本来共存できるわけないのですが」
「あぁ、そうみたいだな」
「ちょっとここでなにか下級魔法使ってみて頂けますか?」
「なんの魔法でも良いのか?」
「できれば属性魔法でお願いします」
「わかった!」
(火は危ないし水はびしょびしょになるし・・)
「ブロー!」
風が下から上に向けて吹き上げた。
そのせいでルイのスカートがめくれ上がりパンツがもろに見えてしまった。
「フィン様っ!!!」
ルイは顔を赤くして怒った。
「ご、ごめん!火と水はダメだと思って・・」
「もぅ・・言ってくれれば心の準備を・・」
「え・・?」
「ごほんっ・・なんでもないです!それにしてもすごい威力ですね・・ブローって暑い時にうちわ変わりに使う魔法なのに・・・とにかく原因はわかりました」
「お、おう、原因わかった!?」
「通常、フィン様が魔法を使うときには人間のマナが使用されています。魔族のマナは全く出てきていません」
「確かに魔法を使うときに魔族のマナは感じない・・」
「でも威力が異常です。」
ルイの説明はこうだった。
魔法を放つときにはその魔法用に用意されたマナを100%だとすると、魔法を押し出すマナが50%、魔法の媒体に含まれているものが50%になるそうだ。
たとえば火の玉を標的へ飛ばす魔法であるフレアの場合、火の玉を飛ばす力が50%、火の玉に含まれているが50%のマナらしい。
俺の場合は魔法を押し出すマナが魔族のマナで、魔法自体に含まれているものが人間のマナの為、出力される魔法から魔族のマナを感じないということだ。
そして俺は魔族のマナを操れていないので100%出力しかできないようだ。
「なるほど~」
「そしてフィン様の場合、ただでさえ魔力量が多いうえに二人分のマナを持っているので、ぶっ飛んだ火力が出てしまうわけです」
そう言ってルイはお店の奥から箱を持ってきた。
箱の中からひとつの指輪が出てきた。
「フィン様これを付けてもう一度ブローを唱えてください」
「え、でもブローは・・」
「いいから」
「はい」
俺は指輪を付けた。
少し視界が明るくなった気がした。
「ブロー!」
スーッ
風が程よく吹き上げている。
スカートもめくれない程度に。
「すごい!涼しいだけだ!」
「よかった、今フィン様が付けているのは悪食の指輪です」
「あくじき?」
「これは魔族の魔道具なんです」
「えっ・・」
「フィン様は魔力の自然放出をコントロールしているけれど、そんなことできるのは特級魔族や、Sランク以上の冒険者くらいですよね?」
「まぁ自然放出をコントロールするのは結構大変だったからな」
「この指輪を付けると指輪が体内の魔族のマナのみをすべて食べつくします。下級魔族や中級魔族はこの指輪を使って人間に紛れていたんです」
「なるほど、ということは今俺の中には魔族のマナが無い状態なのか」
「そうゆうことです」
「すごい!ありがとう!!」
「ほんとはこっちの魔道具をあげるつもりだったんですけど・・」
「え、それって・・」
とにかくルイのおかげで威力の問題は解決した。
「ところでこれいくら?俺実はあんまり手持ちなくて・・」
「あぁ、あげますよ!こんな魔道具魔族にしか価値はないので」
「良いのか?」
「もちろんです!」
俺はありがたく貰うことにした。
「問題も解決したのでそろそろ解散ですかね!」
「あーこの後なんだけどさっ・・俺の宿に・・」
「あ!わたし明日の朝パン屋さんに並んで大人気のフランスパン買わなきゃいけないんでした!!」
「あぁ、そうなんだ・・」
今日は解散することになった。
(そうだよなぁ、まぁ問題も解決できたし目的達成ってことで今日は帰ろう!)
そうして俺はひとりで宿に帰った。
一方ルイは・・
(この後俺の宿に!?なになに!?それってそうゆうことだよね・・!?昨日会ったばかりなのに!?でも断らなきゃ良かった!?んーーーーーーーーっ!!)
また顔を赤くしているのであった。




