第6話 告白
「それにしても凄いもの貰っちゃったな」
俺は部屋に帰り杖をまじまじと見ていた。
この杖をこれから使い続けるには危険すぎる。
魔力の出力調整が難しすぎるのだ。
今日の事で、上級魔法を使えば特級魔法程度のものになることがわかった。
ということは中級魔法を撃てば上級魔法程度ってことか?
でもこれではダメだ。
今回はなんとか誤魔化せたが、次からはそうはいかない。
詠唱でバレてしまう。
(なんとかならないものか・・・)
俺は先ほどの荒野へひとりで向かった。
まずは下級魔法を普通に詠唱した。
「アクア!」
ギュルルルルルッ!!!
(ですよねぇ・・)
大きな水の竜巻が起こった。
威力としては中級~上級程度。
アクアは下級の中でも主婦が洗濯に使う程度の魔法だ。
次は最小限の魔力で唱えた。
(最小限最小限・・)
「アクア・・」
チョロッ・・
水鉄砲の様な勢いだった。
これでは全く使い物にならない。
すこーしだけ強めで・・
「アクアッ」
シュルシュルシュルッ・・・パンッ!
最初は程よい威力で丁度良かったが、魔力をキープできず弾けた。
「んー、これは困った・・」
魔力を最小限でキープする練習をすれば良いかもしれないが、出来るようになるまで勇者パーティーに隠し通せない。
「ルイに相談してみるか・・」
俺は急いでルイのいる武器屋へ向かった。
カランカラーン
「いらっしゃいま・・フィン様?なにかお忘れ物ですか?」
「ルイ、ちょっと相談があるんだ」
「ええ、わたしにできる事であればなんなりと!ですが今少々立て込んでまして・・」
「じゃあまた明日来るよ、忙しい時にごめんな!」
「申し訳ありません・・」
「いやいや大丈夫!んじゃっ!」
俺は店を出ようとしたが、ルイに呼び止められた。
「フィン様!」
「ん?」
「もしよろしければ、その相談ついでに今晩お食事でもいかがでしょうか・・?あ、ご迷惑であれば全然断って頂いて構いませんのでッ!!」
「全然迷惑じゃないよ!ありがとう」
ルイは耳が真っ赤だった。
「お店は19時に閉まるのでそのくらいにまた来ていただけますか・・?」
「了解!」
そうして俺は店を後にした。
「夜はルイと飯行くとして、それまでどうしようかなー」
(ん、ルイと飯・・ふたりでディナー・・こ、これってデートってやつではッ!?)
俺は人生で一度も彼女が出来たことがない。
彼女どころかデートすらしたことがない。
「意識すると少し緊張してきたな・・」
帰り道になけなしのお金で新しい服を買い、宿に戻って体を洗った。
「よし、これで大丈夫だ。一応な、一応。」
一応部屋も片付けて、一応ベッドも綺麗に整えた。一応ね。
そしてルイのもとへ向かった。
少し早く着いたので、店の前で待った。
「お待たせいたしました!」
「お、お疲れ様!」
意識すればするほど緊張してきた。
「どこか行きたいお店ありますか?」
「あ、ああ、ごめん特にないかな」
(さっきまで普通に話してたのに何で急に緊張するんだ・・!)
「じゃあわたしの行きつけのお店でも良いですか?」
「うん!ありがと」
そうして俺とルイは軽く話しながら店へ向かった。
カランカラーン
「いらっしゃーい」
ルイが連れてきたくれたのは、雰囲気の良いレストランだった。
周囲はうるさくもなく、静かすぎず、落ち着く空間だった。
レストランと言ってもすごく高級なわけではなく、庶民的なところだった。
ルイはお父さんと良く来るらしい。
「マスターこんにちはー!」
「ルイちゃん、【こんにちは】じゃなくて【こんばんは】よ」
そう言って出てきたのはこの店のマスター。
マスターはムキムキのオネェだった。
「えッ!!ルイちゃん彼氏できたの!?きゃー!いいじゃないいいじゃない、素敵なオトコじゃない♡」
ルイは顔が真っ赤になった。
「かッ、かかかか、かれ、彼氏じゃないですまだ!!」
「あら、まだってことは彼氏になる予定ってこと~?♡」
ルイの顔はさらに真っ赤になった。
「ごめんごめん、じゃあそこの席へどうぞ~♡」
俺たちは席へ着いた。
少し気まずい。
「なに食べよっか?」
「そ、そうですね、わたしはこれで」
俺たちは注文して、本題に入った。
「あ、相談のことなんだけどさ」
「そうでしたねッ!」
「俺Aランクってことになってるだろ?あの杖だと威力が強すぎてSランクってバレちゃいそうなんだ」
「あー、なるほど・・魔力調整も出来なさそうでしたか?」
「うん、少し弱めに打っても中級魔法が上級魔法くらいの威力になっちゃって・・」
「えっ、そんなことってあるんですか・・」
「そうみたい・・」
「んー、どうしましょう・・あ!」
「お?なんかありそう!?」
「いやぁ、でもアレはさすがに・・」
「アレって?」
「お店を出たらお店に少し寄っていただけませんか?」
「それはもちろんいいけど」
「お待たせしましたー」
注文した料理が来た。
「うわっ、めちゃくちゃうまそう!」
「ここのお料理はとっても美味しいですよ!」
パクッ
「うまい!めちゃくちゃうまい!!」
「お気に召して良かったです」
俺はデートという事を忘れ、無言で食べ続けた。
「はぁーうまかった~」
「たくさん食べましたね~、そろそろ行きましょうか!」
「だな!お会計お願いしまーす!」
会計の時にマスターがルイに耳打ちした。
「良い男じゃない、絶対逃しちゃダメよ♡」
ルイはまた顔が赤くなりコクリと頷いた。
「ルイどうした?」
「い、いえ!なんでもないです!!」
「?」
俺とルイはルイの店へ向かった。
ルイは店のカギを開けた。
「どうぞお入りください」
店に入るとルイはこっちを向いて言った。
「フィン様、ちょっと手を貸してください」
「あ、あぁ」
俺は手を差し出した。
ルイは俺の手に触れ、目をつむった。
するとルイの手が光り始めた。
「なんだこれ!?」
「・・・・」
どんどん光は大きくなっていく。
ルイは少し苦しそうな顔をしている。
「ルイ大丈夫か?」
光が急にはじけた。
「きゃッ!」
ルイはしりもちをついた。
「どうした?」
息を切らしたルイは立ってお尻を払い言った。
「フィン様・・フィン様は魔族なのですか?」
俺は驚いた。
「すみません、フィン様の中を少し覗かせて頂きました。フィン様のマナの奥底には邪悪で巨大なマナがありました。」
バレてしまった。
俺が魔族だと知ったらルイはどう思うだろうか。
きっと軽蔑して、もう会ってくれなくなるだろう。
でももうルイに嘘は通じない。すべて話そう。
俺は言った。
「あぁ、黙っていてすまない、俺は魔族だ。そして現魔王は俺の妹だ。」




