第4話 杖を買う
俺は約束通り中央広場へ向かった。
ここは人口50万人ほどの大きな街バールヘヴンだ。
中央市場では一日では周りきれないほどの店が並び、商人の出入りも多く、装備を揃えるにも困らない。
人に溢れた中央広場の噴水で俺はマルクとガルバンを待った。
少しして、2人が現れた。
「おはようフィン」
「よう、よく眠れたか?」
「おはようございます〜」
マルクは俺を下から上へ舐めるように見た。
「ねぇフィン」
「はい?」
「君の装備どう見てもAランクじゃないよね?良くてDランクだ」
「そうですね、実はお金が全然無くて・・」
(まぁ見た目でわかるよなぁ)
ガルバンは腕を組みながら言った。
「その装備だとBランクの魔物の攻撃でも耐えられないんじゃないか?」
マルクはなにか決心したような顔で言った。
「よし、僕が君の装備を揃えよう」
「え、いいんですか?」
(よっしゃラッキー!)
「仕方ないよね、そんな装備で戦って死なれても迷惑だし」
やはりマルクはちょいちょい鼻に触る言い方をする。
(装備を買ってくれるんだ、我慢しよう・・)
Aランク装備を全身揃えるとなると最低でも2000万ゴールドは必要だ。
さすが貴族だ。
そうして俺たちは街で一番大きな防具屋へ向かった。
「いらっしゃいませー」
「店主、この店で一番上質なAランクの魔法使い装備を一式くれ」
「一式!?お客さん、手持ちはぁ・・」
マルクは小袋を机の上に置き中を開いた。
袋の中には白金貨が山のように入っていた。
「し、失礼いたしました!!今すぐご用意させていただきます!!」
店主は店に展示されているものではなく、店の裏から装備一式を持ってきた。
「これがこの店で一番の装備でございます」
そう言って店主が見せた装備は見事なものだった。
全体的に黒で統一され、シンプルな見た目ではあるが、大量のマナが宿っていた。
そして黒いマントの留め具には魔石が使用されていた。
「いくらだ?」
「一式で5000万ゴールドになります」
(5000万ゴールド!?そこそこ良い屋敷が買えるじゃねぇか・・)
「ではそれを貰おう」
それを見ていたガルバンは言った。
「俺の装備ももう古くなってきたなぁ」
そう言ってチラチラマルクの方を見たが、マルクはガン無視だった。
マルクは支払いを終え店を出た。
「あ、ありがとうございます~」
「フィン、敬語はやめてくれないか、君の敬語にはあまり敬意を感じない」
「じゃあお言葉にあまえて、さんきゅーな」
俺がマルクに対してあまり敬意を持っていないことはバレていたようだ。
勇者パーティーを抜けたら装備は即売ろう。
マルクに連れられ、次は武器屋へ向かった。
「ここは武器屋だが、魔法使い専用の武器屋なんだ」
「へぇ~、そんなのあるんだな」
店へはいると杖や魔法剣、魔道具などがたくさん並んでいた。
店へ入るや否やマルクはまたもや店主の元へスタスタと歩いて行った。
店頭に並んでいるものは眼中にないらしい。
「店主、この店で一番上質なAランクの杖をくれ」
「はい、少々おまちくださいな」
そう言って店主は店の裏に行った。
上質なものはどこも盗難対策などで店頭には置かないらしい。
店主を待っていると店の奥から少女が出てきた。
「あッ!!昨日はありがとうございました!!」
昨日助けた少女だった。
「おう、無事家に帰れたんだな」
「はい!おかげさまで!」
不思議そうな顔をしているガルバンは言った。
「昨日なにかあったのか?」
俺は昨日の事を説明した。
もちろん殺したことは伏せた。
「やっぱりお前は良いやつだな!仲間にして本当によかった!!」
ガルバンは大男だがやはり気の悪いやつではない。
「申し遅れました、わたしはルイと申します。今日はなにをお求めに?」
「あぁ、Aランクの杖を買いに来たんだ。って言ってもマルクが買ってくれるんだがな!」
ルイは俺のところに駆け寄り手を握ってきた。
「Aランク?」
「ん?」
「嘘ですよね?あなたのマナ・・」
「わぁぁぁあああ!」
俺はルイを連れてマルクとガルバンから離れた。
(マナの自然出力は抑えていたはずなのになんでバレた!?)
「なんでルイは俺がAランクじゃないってわかった?」
「わたし手を握ればマナの本質がわかるんです」
「でもマナに敏感であれば自然放出されているマナの量で手を握らなくてもわかるだろ?」
「あなたのマナ、不自然だったから」
「?」
「わたしにはマナが見えます。通常自然放出されるマナは揺らいでいるものです。でもあなたのマナは丸みを帯びていて綺麗すぎるんです」
「マナが見えるのか・・」
聞いたことがある。
稀にマナを可視化できる子が生まれることがあると。
都市伝説だと思っていたが本当にいるんだな。
「すまないがあいつらには秘密にしておいてくれないか?事情があってAランクってことにしてるんだ」
「色々大変なんですね、わかりました」
俺はふたりのところに戻り、ルイは店の裏に行った。
「なに話してたんだ?」
「あぁ、昨日突き飛ばされてたから怪我とかないかなって思ってさ!ははッ」
「ふーん」
ガルバンは信じやすい性格のようだ。
マルクは少し怪しんでいた。
しばらくして店主と少女が出てきた。
「お待たせいたしました」
「遅かったな」
「申し訳ございません、杖の最終メンテナンスをしておりまして」
「まぁよい、見せてくれ」
店主は大きな箱を開けた。
すると立派な杖が出てきた。
身の丈ほどある長い杖で、金属の様な質感。
杖の頭は円状になっていて真ん中には青い水晶玉が浮かんでいた。
(この水晶玉どこかで・・あッ!!)
俺がルイの方を見るとルイはニコッと微笑んだ。
「うん、良い杖だ、いくらだ?」
「そこのお兄さんは娘の命の恩人だそうで。なので2000万でいかがでしょうか?」
この杖、魔法使いでない俺でもわかるがとても2000万で買える代物じゃない。
しかもこの水晶玉・・
「そうか、なら善意を受け取っておこう」
そう言いマルクは杖を買ってくれた。
みんなで店を出たところで、俺は忘れ物をしたと言い店へ戻った。
「あの杖、とて2000万で買える代物じゃないと思います。本当によかったんですか?」
「はい、あなたが助けてくれなければ娘は今頃ここにはいなかったでしょう、それに比べればこのくらいの値下げ安いものです」
「ありがとうございます・・杖はまだ良いとして、あの水晶玉はッ?」
あんな水晶玉見たことがない。きっと高価なものに違いない。
ルイが答えてくれた。
「あの水晶玉は神涙石という水晶から削りだされた特別な水晶玉なんです。Sランクの武器を作る為に用意していたものでしたが、さっきお渡しした杖に差し替えちゃいました」
神涙石は世界が闇に沈んだ時代に、神が涙を流しそれが積み重なってできたという伝説からついた名前らしい。
「そんな高価なもの・・それに俺、本当は魔法剣士なんだ。こんな水晶玉は手に余る・・・」
「大丈夫ですよッ!もし杖がいらなくなったら、その水晶玉を使って魔法剣を作って差し上げます!」
「・・うん、じゃあ貰っておくわ!ありがとう!」
「いえ、こちらこそ助けて頂いてありがとうございました、またいらしてください!」
そうして俺は店を後にした。




