第17話 ヘンドブルグ
目が覚めた。
知らない部屋に朝日が差し込んでいる、豪華な装飾、少し揺れている。
「あ、ここ馬車だ」
俺たちは新しい馬車、新しい仲間と共にマルクの故郷であるヘンドブルグへ向かっていた。
「おはようございますフィン様」
「あぁ、おはようルイ」
ルイはみんなより早起きし、全員の朝食を用意してくれていた。
食料はウィードさんが3日分の食料を積んでいてくれたらしい。
俺はルイの作ってくれたご飯とコーヒーを飲んだ。
(なんて優雅な朝だ・・これが勇者パーティーか)
居心地が良すぎて、魔王討伐のことを忘れてしまうほどだった。
優雅な朝を堪能している時、部屋の小さなドアが空いた。
「ここからは馬車を狙った盗賊が現れる可能性があります」
馬車を引いているウィードさんが言った。
部屋と運転席はそこのドアで繋がっているようだ。
「了解、俺が行きます」
部屋の居心地が良すぎてダメになってしまいそうだったので、俺は自ら見張りを引き受けた。
ドアから運転席に出て、ウィードさんの隣に座った。
俺は少し気になったことをウィードさんに聞いた。
「ウィードさん寝ました?」
昨日の朝に出発して丸一日経っていた。
「いえ、私は5日間寝ずとも行動できます」
「5日!?いやいや無理しないでくださいよ」
「無理などしていませんよ、Aランク御者はこれくらい当たり前です」
「は、はぁ・・」
ウィードさんはAランクの御者らしい。
バールヘヴンは優秀な人材が多かった。
「ん、寝ずに行動できるってことは、もしかして明日の朝にはつくってことですか?」
「そうですね、私の場合寝ないので、3日の距離を2日で移動できますから」
これはすごい。
しばらく走っていると、ウィードさんは急ブレーキをかけた。
「あそこに盗賊がいるのがわかりますか?」
「あそこ?」
目を細めて見ると点ほどの小ささでなにかあるようなないような。
「あれ盗賊なんですか?」
「はい、4人いて全員手に武器を持っております」
「よく見えますね・・」
「ここは迂回ルートがありませんが、いかがなさいますか?」
ウィードさんは見張りがいなくてもこの目の良さで迂回して行けるらしい。
「俺ひとりで充分ですね」
「承知致しました」
馬車は盗賊の方へ向かった。
「おいお前らそこをどけ」
「何言ってんだぁ?俺たち盗賊だぞ?金目の物をすべて置いて行きゃ命までは取らねぇよ!」
「レンジグラビティ」
俺は上級重力魔法で盗賊たちへかかる重力を倍増させた。
「な、なんだよこれ!」
「謝って持ち物すべて置いて行けば命は助けてやるよ」
「くそっ!Aランクか!ついてねぇ・・」
「レンジグラビティ」
「ぐおぉぉぉ!わかった、すまなかった!だから魔法を解いてくれ!」
魔法を解いた。
それと同時に盗賊のリーダー的なやつが切りかかってきた。
グサッ
俺は腰の短刀で相手の喉を突き刺した。
「メテオ」
残りの盗賊に向けてメテオを放った。
「ウィードさんお待たせしました」
「えぇ、お見事でした」
それから昼頃までモンスターや盗賊と戦うことはなかった。
「フィン様、ウィード様、お昼ご飯ができましたよ!」
ルイがドアを開けて声をかけてきた。
「ありがとうルイ」
ルイはニコッとして戻っていった。
「さぁ、一旦止めてウィードさんも行きましょう」
「いえ、私は運転したままいただきますので」
ウィードさんから絶対に運転席から降りることはないという強い意志を感じた。
「じゃあ俺行ってきますね」
「はい、ここから先は安全な地帯ですので、どうぞごゆっくりなさってください」
俺は馬車内へ戻った。
「おはようフィン、ウィードさんは?」
「マルク今起きたのかよ、ウィードさんは運転しながら食べるって」
「やっぱりか」
マルクはウィードさんの性格を知っているようだった。
「ルイちゃん、すまないがウィードさんにも持って行ってくれないか?」
「もちろんです!」
昼食を食べ終わり、コーヒーを飲んだ。
「フィン様、少し良いですか?」
ルイに呼ばれて扉を出て、走っている馬車の後ろに一緒に座った。
「どうした?」
「ねぇフィン様、魔王・・フィン様の妹さんの件はどうするんですか?」
「そうなんだよな・・どうすれば良いかな」
「うーん、魔王討伐の日に仮病使うとか?」
「いや、それだと別日になるだけだろ」
「そうですねぇ・・勇者様にはさすがに魔族ですなんてカミングアウトできないし・・」
「だよなぁ」
「Sランクという事実は言っても良いんじゃないですか?Sランク装備とか付けれますし」
「んー、そうだよなぁ、でも今さら嘘ついてましたってのもなぁ・・」
「まぁそうですね・・」
ガチャ
「フィン」
「ん、ん!?」
「会議するよー」
マルクが街に着いてからのことを説明してくれるらしい。
俺たちは馬車内に戻った。
「今回ヘンドブルグへ行く目的は、パーティーメンバーの報告と出発のパレードの為だ」
「出発のパレード!?」
「あぁ、魔王を討伐する勇者パーティーだからね」
「そうゆうものなのか・・」
「まず、王への報告だが、これは僕がするからみんなは後ろにいていいよ」
「ほうほう」
「次にパレードだ、これはみんなにもお願いしたいことがある」
「なんだ?」
「頼もしい姿を見せてほしいんだ」
「頼もしい姿か・・」
「僕は剣を上に掲げる、ガルバンは腕組みをしてドッシリ構える」
「おぉかっこいいな!」
「フィンとノアちゃんは綺麗な魔法を放ってほしいんだ」
「綺麗な魔法かぁ、考えておくよ」
「そしてルイちゃん」
「え、わたしもですか!?」
「もちろん、君もパーティーの一員だからね」
「は、はい!」
「ルイちゃんは笑顔で手を振っていてくれ」
「・・・それだけ?」
「うん、それだけ、あとウィードさんはいつも通りでいいか」
俺たちは街についてからのことを色々と確認した。
そこからも危険地帯のみ見張りを交代でしてついに目的地のヘンドブルグへついた。
「皆様、無事ヘンドブルグへ到着しました」
俺はウィードさんの声で目が覚めて、窓から外を見た。




