第16話 マルクの故郷へ
「あっ!もうこんな時間なんですね、こっち来てください!」
「お、おう」
ルイに連れられ、ひとけのないところに来た。
「ここよく見えるんです」
「きれいだな・・」
俺とルイはしばらく花火を見ていた。
「あ、ルイに渡したいものがあるんだ、これ」
俺は昼間、ルイが魔道具店で見ていたペンダントを買っていた。
「え、これ」
「杖のこととか、魔力のこと、ルイには色々助けてもらったからそのお礼だ」
「そんな大したことはッ・・それにこんな高価なもの・・」
「良いんだ、受け取ってくれ」
ルイは俺に抱きつきながら言った。
「ありがとうございます!!フィン様大好きです!」
「えっ?」
「あっ、え、えーと・・」
「ごめんルイ!自分からデートに誘っといて・・実は・・」
「そーですよね!ごめんなさいわたし勘違いしちゃってこんなこと、わたしもう今日は帰りますね!!」
ルイは早口になり、俺の言葉の入る隙を与えない。
「ちょ、ルイ違うんだ!」
「こないで!ひとりにさせて!」
走って行ってしまった。
ルイは泣いていたように見えた。
今のルイにこれ以上言っても逆効果だと思い俺は宿へ帰ることにした。
次の日、俺は荷物をまとめて宿を出た。
「おはよ」
「おはよーフィン、元気ないね」
「まぁな」
「なにがあったの?」
俺はルイの誤解をどうしても解きたかった。
「なぁみんな、出発前にルイのところ寄ってもいいか?」
「いいけど」
俺たちはルイの店へ向かった。
「いらっしゃいませ!・・フィン様」
「ルイ!俺今日街を出るんだ」
「えっ!?」
「だから昨日はそれを・・」
「そうなんですね!そうですよね、勇者パーティーですもんね!昨日はすみませんでした、わたしごときが・・」
「俺もルイが好きなんだ!」
「えっ・・」
「だから待っていて欲しい!俺が帰るまで!」
ルイの目から涙がこぼれた。
「フィン何言ってるの?」
マルクが急に入ってきた。
きっと魔王を倒しに行くのに死亡フラグを立てるなと言うことだろう。
「すまないマルク・・」
「ルイちゃんも連れて行けばいいじゃん」
「へっ?」
「さ、さすがに魔王を倒す勇者の旅に彼女を連れて行くのはいかがなものかと・・」
「【好きな女の子】を連れて行くって言ったら聞こえは悪いけどね、でもルイちゃんは武器屋であり、Sランクの鍛冶師だよ。こっちからお願いしたいくらいだ」
「Sランク鍛冶師!?」
俺は頭が追いつかなかった。
「ねぇルイちゃん、フィンの杖に埋め込まれている神涙石ってルイちゃんがやったんだよね?」
「は、はい・・」
「フィンは知らないだろうけど、Sランク装備を作ったりSランク素材を加工できるのもSランク鍛冶師だけなんだ」
確かにこの水晶玉をのことを聞いた時、ルイはSランクの武器を作る為に用意したと言っていた。
「ルイちゃん、君はどうしたい?」
「わたしは・・お店のこともあるし・・」
奥からルイのお父さんが出てきた。
「話は聞かせてもらったよ、店のことは気にしなくて良い、お客さんもあまりこないしね」
「お父さん・・」
「世界は広いんだ、色々なものを見ておいで」
ルイは決心した様子で言った。
「わたしも同行させてください!」
「もちろん、よろしくね」
こうしてルイまでも仲間になった。
「ルイちゃん、そこの喫茶店にいるから準備が出来たらおいで」
「はい、急いで支度します!」
俺たちはひとまず喫茶店へ行った。
「なぁマルク、本当に良いのか?」
「勇者パーティーにSランク鍛冶師がいるなんて【鬼に金棒】じゃん」
「まぁそうなんだけどさ」
パンッ
ガルバンが俺の背中を叩き言ってきた。
「大丈夫だフィン!このパーティーにはルイの他にも技師がいるんだぜ!」
「えっ?」
「まぁあとでわかる!楽しみにしとけ!」
そんなことを話しているとルイが店にやってきた。
「皆様お待たせいたしました!あらためてよろしくお願いいたします!」
ルイは荷車にたくさんの荷物を乗せていた。
「あのー、ルイさん、この荷物の量はさすがに・・」
「え、ダメですか・・?」
マルクが答えた。
「全然大丈夫だよ、立派な馬車を新調したからね」
さすがマルクだ。
俺たちは街の正門へ向かった。
正門には人が10人ゆったり座れるくらいの大きさの立派な馬車があった。
馬も二頭だ。
「おぉ、立派な馬車だな」
馬車には扉がついていた。
「お待ちしておりました皆様」
そう言って馬車から出てきたのは、ピリオネ山へ行った時の運転手だった。
「ウィードさん!?」
「フィン様、また御縁があればと言いましたが、早くもご縁がやってきましたね」
マルクが自慢気な顔をしながら言った。
「ウィードさんは道やモンスターの生態、盗賊の行動などについてとても詳しいんだ。これほどの御者はいないよ」
どうやらピリオネ山から帰った後、マルクはウィードさんをスカウトしていたらしい。
「さすがだよマルク」
「でしょー」
「ただ、この馬車はすごい立派だが、ルイの荷物載せたらだいぶ狭くならないか?」
「まぁまぁ見てごらん」
そう言ってマルクは馬車の後ろに付いた扉を開けた。
「なんだこれ!」
俺は驚いた。
馬車の中にはみんながゆったりと過ごせる大きな部屋があったのだ。
「これは空間魔法を施した魔道具なんだ」
「まじか・・」
「だから中は外から見た馬車の何倍もの広さになっている」
「これなら全く問題ない、世の中には色んな魔道具があるんだな・・」
関心している俺の横からふたりが馬車へ駆け寄った。
「なんですかこの魔道具!!こんなの見たことないです!」
「そうね、わたしも色々旅してきたけどここまでの魔道具は初めて」
「いったいこの馬車いくらするんですかね!!」
「数十億、いや、数百億かも」
「ですよねですよね!!」
「空間魔法を物に施すってどうやったのかしら、これは誰が作ったのかしら」
「馬車の外見も中もすごく綺麗なので最近作られたんですかね!!」
「もしそうだとしたら是非その方にお会いしたいわ」
ルイとノアは興奮して早口で話していた。
このふたりは気が合うんだろう。
「よし、じゃあ出発しようか」
馬車に乗り込んだ。
俺たちはこれから3日かけてマルクの故郷である【ヘンドブルグ】へ向かうのだった。




