第14話 報酬の分配とノア
俺たちは報酬の分配をする為、広場の席に座った。
分配は一応リーダーであるマルクが行う。
「よし、じゃあ分けようか、まずは150万の四等分で一人当たり37万5千ゴールドだね」
俺は受け取り、自分に言い聞かせた。
(うん、これでも十分だ、そうだ、3日働いただけでこんなに貰えるんだ、それだけでありがたい)
「あとアイスドラゴンの分だね、はい、ひとり6億」
「え・・?」
「フィンどうしたの?」
「俺たちも貰えるの・・?」
「当たり前だろ?もしかして歩合制だと思ってたの?」
「え、だって今まで他のパーティーでもそうだったし・・」
「言ってなかったね、勇者パーティーでは他のパーティーと違って魔王を倒すまでの長い道のりを共にするんだ。だから報酬はみんな平等に分ける事にしてるんだよ」
「マルク様・・」
そうして俺は6億37万5千ゴールドもの大金を手に入れたのだった。
今回のクエストでマルクを心底見直した。
「それともうひとつ」
「まだ報酬あるのか!?」
「違うよ・・ノアちゃんのこと。ノアちゃんはもしかするともうこのパーティーと行動を共にしたくないだろう・・でも一応聞いとくね」
「・・・」
「ノアちゃん、僕たち勇者パーティーに入って一緒に魔王を倒してくれないか?」
ノアは少し間を置いて言った。
「わたしはモンスターが怖いです」
「そうだよね・・」
「でもわたしは魔法の更なる高みへ登りたい」
「え、ということは・・」
「わたしのこと、ちゃんと守ってね勇者さん」
「やったー!!」
いつもクールなマルクが珍しく喜んでいた。
ぐぅ~~~
ガルバンのお腹が鳴った。
「よし、ノアが仲間になって遂にフルメンバーになったな!飯行くか!!肉肉!!」
俺たちはガルパンに連れられ少し高めのステーキを食べに行った。
「なぁマルク、もう仲間探しは終わったんだろ?このあとどうするんだ?」
「そうだね、一度僕の故郷に帰って王に報告しなきゃね」
「王?」
「うん、パーティーメンバーが揃ったら王に報告するのが決まりなんだ。それから魔王討伐への旅に出る」
(魔王討伐なぁ・・)
俺は数日間みんなと行動をして居心地が良くなっていた。
「出発はいつ?」
「僕の故郷までは3日かかる、明日準備して明後日にでもこの街を出よう」
俺たちは食べ終わり店を出た。
「僕とガルバンは宿に帰って準備をするよ」
マルクとガルバンは長期間滞在したせいか、荷物が多くなりすぎたようだ。
「ノアは?」
「わたしは装備や魔道具を買いに行く」
「俺も魔道具店に用事があるんだ、一緒にいいか?」
「えぇ」
俺とノアはルイの店へ向かった。
「こんにちはー」
すると奥からルイがニコニコで出てきた。
「いらっしゃいませフィン様!」
「やぁルイ」
「今日はなにをお探しで?」
「いや、今日は新しくパーティーに入ったノアの付添なんだ」
ノアはペコリと頭を下げた。
「ノア様ですね、始めまして。本日はなにをお探しで?」
ルイはノアを店中案内してくれた。
2時間ほどでノアの買い物は終了。
「お会計689万ゴールドになります!」
ノアは魔道具や魔導書を沢山買っていた。
ノアの荷物の多さはこれが原因だった。
「ルイ、明日も仕事か?」
「明日はお休みですが、どうされました?」
俺はノアに聞こえないくらいの声で言った。
「あ、明日デートしないか?」
ルイの顔が赤くなった。
「デデデデデ、デートですかッ!?」
「ご、ごめん、嫌だったら良いんだ!」
「行きます!」
「ありがとう、明日またお店に迎えに来るよ!」
そうして俺とノアは店を出た。
「ルイさんと何を話してた?」
「え、あー、なんでもないよ!」
「そうか、ルイさんが好きなのか」
「うん、そうなんだ・・・ってなんで!?」
「フィンの顔に書いてある」
そうだ。前回の事で俺はルイの事が好きになっていた。
そしてノアにバレてしまった。
「実はさっきデートに誘ったんだ」
「そう、でもあなたも明日この街を出るのよ」
「わかってる、だから誘ったんだ」
「ふーん」
そんな話をしながら俺とノアは宿へ帰った。
「この街も明日までか、また来ることはあるのだろうか」
俺はベッドに横になり、これからの事や妹のこと、ルイのことなどを考えていた。
「あ!俺服持ってない!!」
冒険者である俺はいつどこへ行く時も冒険用の装備を着ていた。
その為、私服を持っていなかった。
(さすがにデートにこんな魔導士のマントなんかで来られたら嫌だよな・・まだ夕方だ、行くか)
俺は服を買いに行った。
ひとまず人の集まる街中を歩いた。
(服って言っても仕立ててもらうには時間が足りないから、仕立て済みのものを買うしかないよな)
【服屋ポッポ】
目の前に服屋の看板が見えた。
(ポッポ・・名前的に良くなさそう・・)
店の前で立ち止まっていると中から紳士なおじいさんが出てきた。
「いらっしゃいませ、服屋をお探しですか?」
「あ、あぁ、はい」
「では中へどうぞ」
俺はとりあえず中に入ることにした。
店内は壁一面に服の生地があり、展示用の服が3着ほどある小さな店だった。
見ただけでわかる、これは仕立て屋だ。
「どのような服をお探しで?」
「あの、すみません、俺明日には服が必要で、仕立ててもらうとなると時間がないんです・・」
「心配ご無用です、すぐに仕上がります」
「すぐに!?」
「はい、すぐでございます」
半信半疑だったが俺は一応おじいさんに注文をしてみた。
「俺明日デートに行くんです。でも冒険者なので私服がなくて・・」
「そうですか、どのような服をご所望でしょうか?」
「すみません、服全然わからなくて・・」
「承知致しました、では体のサイズを測らせていただきます」
「はい、お願いします」
おじいさんは俺の体をメジャーで測り、店の奥へ消えていった。
(本当にすぐできるのだろうか・・)
「お待たせいたしました」
「えっ!?」
「こちらをご試着いただけますか?」
「まだ5分しか経ってませんよ!?」
「はい、私はAランク裁縫師ですから」
「Aランク!?」
この世界では冒険者以外にもランク分けされる職業がある。
裁縫師などの技術職だ。
ただ技術職のランクは冒険者とは訳が違う。
技術職のほとんどがBランク以下なのだ。
そのため、Aランクとなれば王宮専属の技術師として、将来も保証される。
「なぜこんな小さなお店を?」
「のんびりやりたいものでね」
「そんなものですか・・」
俺は仕立ててもらった服を着てみた。
デザインも良く、俺の体のサイズにピッタリだった。
「す、すごい!ありがとうございます!」
「お気に召したようでよかったです」
「お代はいくらですか?」
(Aランクだから高いんだろうな・・200万とかか!?でも金ならある)
「4万3千ゴールドになります」
「えッ、安すぎませんか!」
通常の仕立て屋で服を仕立ててもらうのには最低でも10万はかかる。
おじいさんが提示したのはその半額以下だった。
「ほとんど趣味でやっているので良いんですよ」
「また来ます!」
俺は新しい服を着て宿へ帰った。




