ep.???(3) 人生二周目…?②
「そんなに嫌そうにするな。
"せっかくなんだから少しは楽しもう"とか思わないのか?」
「だとしてもよ…!否めないんだよ!息子の学校に一緒に通う、この場違い感は!
しかも、なんで中二とかいう微妙な位置からやり直しなんだよ!」
「まぁ、いくら嫌がろうとも、その若返りはすぐに解けるわけではないんだし、かと言って放置するわけにもいかないからな。
嫌でも通ってもらうぞ。」
この前のやり直し云々の話なんだが…
とりあえず、オレは神大の通ってる学校に一緒に通うことになった。
なんでも、親父がオレを若返らせた理由が、オレの能力"最強"を駆使して俺TUEEEな人生やり直しを望んでたんだとか…。
うーん…ツッコミどころはいっぱいいっぱいだが…
とりあえず、もとに戻してもらおうと思ったんだ。が、親父は行方不明だとか…
うーん…この…。
"私立エンペラー魔術師養成学校"。
神大を含む、日本全国の中二病がここに通っており、能力の制御法を学ぶ。
夢見て自らここに転がり込んでくるやつがほとんどらしいが…
今となっては中二病は歩く災害ともなりうるわけだ。能力が発現した時点で半強制的に連れてこられるらしい。そしてオレもその口だ。
「ついたぞ。
俺達の教室、Eクラスだ。」
この学校には各学年ごとにAからEの、5つのクラスで分けられている。
このクラス分けは実力や成績をもとに分けられている。
オレはこの学校に来たばかりで、実力がどの程度か分からないため、とりあえずEクラスらしいが…
神大はなにゆえ???
よっぽど弱い能力者なんか?
それとも成績が悪いんか?
オレそんな話聞いてないけど?!
「おやおや…
今日はお仲間を連れてきたのかい?」
背後から放たれる馬鹿にしたようなご挨拶に、オレの中の何かが引っかかる。
振り返ってみるとこれまたびっくり。絵に描いたようなイジメっ子集団ぽいものがこちらへ向かってきている。
どうやら案の定、さっきの言葉はこちら側に…もっというと神大に放たれたもののようだった。
その声の主は――
「新学期も初日から健気に登校とは、随分とご立派だねぇ…」
「Wow…高身長…イケメン…女子…」
オレは思わずつぶやいた。オレの理想がまんま出てきたような美女を前に。
ボブ?くらいの長さで一部は縛ってある髪、色は落ち着いたトーンで抹茶のような緑、ぱっちりと開きつつも鋭い目、輪郭はキレを残しつつ美しい曲線を描いている。
そして中坊とは思えないボン…キュッ…bor――
待て待て待て…ヘンなこと考えんな。中坊相手だぞ…!脳ミソまで若返ったんか?!
それに、オレには一生を誓った人がいるだろ…!
「なにをあたふたしてるんだ、父上…」
その高身長イケメン女子はオレ達の方へ向かってくる。
「おはよう。庶民。
今日はいつにもまして辛気臭い顔してるじゃあないか。」
ぬぅ…
いくら高身長イケメン女子とはいえこれは目に余るな…
まさかとは思うが、昨年度も神大はこんな態度を取られ続けてきたのか…?
「おはよう。ミス遥。逆にミス遥はいつもより機嫌が良く見えr――」
神大が喋り終わらないうちに、その遥と呼ばれたやつは慣れた手つきで神大の肩に手を置き、みぞおちパンチを入れ込む。
そして――
「あ゙ぁ゙?」
あまりのことにオレは理解が追いつかず、ただポカンと立ち尽くすのみだった。
遥はオレのことはそっちのけでそのまま続ける。
「おい庶民。
いい加減にしろよな。
何様のつもりだよ庶民?
まだ"ボク達は対等な関係"だと、変な勘違いを起こしているのかい?
いいかい?
ボクはこの学校で一番の"学力"!
"魔力"!
"初持能力"!
そして…
自分で言うのもなんだけど…フフッ…
"魅力"を…持っているんだ…
さらに!
お父様はこの日本、いや世界で最も力のある財閥のトップ…!!
はぁ…
何回言えばわかるんだい?
君みたいな底辺の汚い庶民とは!格が違うんだよ!!」
もはやオレの恐怖すら追いつかないスピードで、遥は淡々と言葉を続ける。
息子を嬲られているのに、怒りすらも追いつけず、"本当にこんな貴族からのイジメなんてあるのか"なんて、関心してるまであった。
「敬語くらい使うのは…当たり前だよなぁ…
わかったら返事ぐらいしろよ…
ほぉ~らッ!
言えよ!
"わかりました。プリンセス遥"って!」
神大が喋らないごとに一発入れられる。
混乱のなかに次第に恐怖が追いつき始める。無自覚にオレは震えていた。
身体が憶えている。思い出したくもないこの空気感。昔と同じだ。
"汚い紫とも言えよう古の青"…。
今すぐにでも逃げ出したい。手足に力が入らない。
恐怖の支配が身体を蝕んでいく中、声だけは咄嗟に出ていた。
「おい。
やめろよ…!」
"あーあ、やっちゃったよオレ"と思いつつも、遥が神大を殴る手を止めてくれたことにとりあえず安堵した。
そしてそれもまた束の間。
「あ゙ぁ゙?」
良くも悪くもヘイトはオレに向いたようで。
ホントになにやってんだオレぇぇ!怖ぇぇぇ…!!
いくらイケメソ女子とはいえ、女の子だろオメェ!!!女の子がしていい顔じゃあねぇ…!!!
しかもこいつ、"お父様は世界で1番の財閥のトップ"とか言ってたよなぁ?!
もしかしなくてもこいつ、あの"皇樹 遥"?!
今じゃ世界で一番と呼ばれる財閥…
そしてこの学校を設立、運営してる…"エンペラー財閥"の会長の娘?!
おいおい…将来この日本でどう生きてけと…?
皇樹 遥を敵に回しちゃあまずいって…。
下手したら、初日で退学なんとちゃいますのん?!
い、いやでも、神大がボコボコにされちまうのはほっとけねぇ…!
息子が嬲られてる時に、助けない親がどこにいる?!
や、やってやるよ…!やってやるさ…!
「はぁ。忘れてた。今日は連れもいるんだったな。
それにしても…類は友を呼ぶ。随分貧弱な形をした奴を連れてきたね。」
「へぇへぇ。貧弱なナリしててすんまそん。
だとしてもオレぁこう見えて地元では"ガキ大将"って呼ばれてたもんでなぁ…。
武器持ち、体格も割とある相手数人を返り討ちにしてやったこともあったよ…。」
ハッハー…我ながら小物感満載のハッタリだぁ…しかもそれいつの話だよ!!!
まぁ、これでビビって退散してくれりゃあ万々歳ってもんだがよぉ…!
「やめろ父上…俺は慣れて――っ!」
神大が喋るとすかさずパンチをぶち込む。
「はぁ?
慣れてもらっちゃあ困るんだけど。」
こいつ…!
また神大を殴りやがって…!
「それに、コイツは今、ボクと話をしてるんだ。
ボクがわざわざ話してやってるのに、その時間を削らないでくれるかな?」
「うんうん。確かに慣れてもらっちゃあ困る。」
「お?君もそう思うかい?」
「あぁ。すんごくそう思う。
こんなクソ野郎のサンドバックになるなんて、慣れてくれるなよなぁ…!
ボッコボコにしてやろうぜ!」
毎日投稿目指してます!
ひと区切りついたら一旦お休みして、
完結まで書ききったら、もしくはまたひと区切りつくまで書いたら投稿していくつもりです