ep.???(2) 人生2周目…?①
桜舞う登校中…
暖かな春の日差しとかすかに香る緑のにおい。
そしてオレの脳裏には、汚い紫とも言えよう古の青が…
うぅ…
「なぁ…」
「…?
どうしたんだ父上?顔色が悪いようだが…。」
少しためらった後、ため息といっしょに吐き捨てるように言った。
「帰っていいかなぁ…?」
数ヶ月前…
「はい。じゃあね。
今日の動画は一旦、ここらへんで終わろうかなと思います。
次回はね。いよいよ、ラスボスをね、倒していきたいなぁと思います。
それではご視聴、ありがとうございました。
バイバイ。またねっ。」
収録終了。
エンディングへ自然に繋ぐべく、少し間を開けたのち、録画停止ボタンを押す。
そうして、オレの仕事は一旦終わる。
「フゥー…
疲れた~!
あとは編集して投稿…
ぬぅ゙ん゙…クッソ…
字幕だりぃ〜!
アシスタントでも雇おうかなぁ…なんつって。
んなこと言える金がねぇ!
まぁでも…
これで食えていけて、且つちょっとの贅沢ができんだから…
それだけでも感謝か。」
"絶対売れてやる"。
その一心で、オレはゲーム実況者となった。
昔から憧れてはいたが、本当に仕事にできるとは思っていなかった。
「てか!
オレはひとりで何ブツブツ言ってんだ?
まぁいっか。
飯作ろう。飯。
あいつが帰って来る前に。
風呂も沸かしといてやらんとな。」
"独り言"…
それは、あふれ出す虚無感から自身を守るための…
いわば生理現象だ。
「ただいま戻った。」
愛する息子、神大の帰宅。
高身長、イケメン、学業やらスポーツもそこそこ優秀。
オレとは違い、恵まれててよかったと、心の底から思う。
「おぅ!お帰りぃ〜!
今日はどうだった?」
「これといったことは。」
「そ、そっか…
ふ、風呂に入ってこいよ。
飯はあとちょっとで出来上がるからさ。
汗とか綺麗サッパリ流して、気持ちよくご飯食べようぜ!」
「あぁ。そうする。」
今の会話からわかると思うが、オレに対して愛想のない子だ。
しかも只今の時刻…冬の20:30だ。
部活にも、塾に通っているわけでもない。それなのにこの時間。
普通なら叱るんだろうな。そうするだろう。心配だから。
もちろんオレだって心配さ。だが…
オレは親失格だから。親ヅラする資格はない。
「父上…シャンプーの詰め替えはどこだ?」
「あぁ、持っていくから中で待ってて!」
「いってらっしゃ~い!
弁当持った?
ハンカチは?
ネクタイとかつけ忘れてない?」
「父上。」
「ん?どうしt――」
神大は靴を履き終えると、ふわりと立ち上がり、オレのほうに振り向いて…
目が、合った…。
いつぶりだろうか…いや、初めてか?
こんなにも…力強く、やさしく、全てを見透かすような目…。
この子が本当にオレの子…?
「俺が帰るまでに、この手紙を読んでおいてくれ。そして、
準備をしておいてくれ。」
「え、あぁ、うん…?」
て、手紙…?!あの神大が?オレに?
いやいや、嬉しくないわけじゃあないが…なにか変だ…。
体調でも悪いのか…?
「行ってくる。」
「え?ちょっとまって!
準備って、なんの準備?!」
言い終わる前に神大は出かけてしまった。
まぁ、帰ってから聞けばいいか…。
「フゥ…」
ひと通りの家事は済んだ…
残るは動画の編集…
と、いつもならそうしているところだが…。この手紙、読んでないな…。
読むか…
テーブルの上に置いておいた手紙の封筒を破れないように開いた。
の目にまず飛び込んできたのは――
『我が息子、魔佑大へ。』
すぐに閉じた。
手紙って、親父からかよォ…!!!
うんうん。オレは思ってたよ、てっきり。
可愛い可愛い息子の神大くんが、日頃のお礼とかで書いてくれたんだと。普段愛想がないのは照れ隠しであって、でも感謝は伝えたい…。だから書いてくれたんだと。
…まぁ、オレごときがそんなものは期待すべきではないが…
だが、神大から読んでおくように言われたので、しぶしぶ続きを読んでみる。
『小難しい話は置いておいて、結論から言おう。
お主は"中二病"なのじゃ。
主に限った話ではないがのぅ。
儂も、主の兄である力太、主の息子、神大も。
昨今、日本を中心地点として世界中で中二病が急増してきておる。
世はまさに"中二病の時代"なのじゃ。』
・ ・ ・
こいつぁ、何を言うてまんにゃわ…?
"中二病が急増"…? "中二病の時代"…?
そ、そうか…うん…。だからなんなんだ…?なんか黒歴史を持つ大人が今後増えそうですね(?)
てか、オレが中二病とかそもそものそもの周知の事実だし、それが"中二病の時代"ってやつと何の関係が…?
あんたらが中二病なのは…まぁ、はいそうですかってカンジなのだけれども。
マジになんなんだこの手紙…
読めば読むほど意味が分からないし、"こんなことに時間を…"とイライラしてきた。
「アホらし。」
吐き捨てるように言いつつ、読みかけのままの手紙を雑に放り投げた。
その瞬間、オレは一瞬だけ、目がくらむような光に包まれた。
まぁそん時は、その日が雷予報だったから、それだと思った。あとから思ってみれば、直撃でもしねぇとあんな光り方しねぇと思うし、音もしなかったな…。
とかく、動画の編集をすべく、作業部屋へ戻ろうとしたその時だ。
ズルズルと何かが脚にまとわりついてきた。
なんということだろう。鬼のパンツの丈夫さくらいには信頼があるはずの愛着ズボンがずり落ちた。
「なんでまた急に…
また瘦せたか?」
それだけで済めば良かったんだがな。
ずり落ちたズボンに手を伸ばすと、服の袖が手に覆いかぶさってきた。
その時やっと気づいた。体に対して服の丈がおかしい。
"瘦せたかな?"なんてもんで済ませられるか。身体が縮んでいる…ッ!
いや、落ち着け…普通に考えてそんなことあるわけがない…!
「姿見…!」
なんにしろまずは確認だ。きっと気のせいだ。そうさ、気のせいだ。
焦りなのか恐怖なのか、謎のモヤモヤに駆られて冷汗が止まらない。
寝坊したときの"そんなのウソだ"感ッ…。
自室の部屋のノブに手をかけた。だがこっちも…
「…ドアノブの位置が…高い……?」
身体が覚えている…。このノブは腰より下の位置にあったはず…。
やはりおかしい…!
家事をやってた時まではこんなことにはなってなかった!!!
その間…!いつもと違う…家事から現時点に来るまでに、したこと…
・ ・ ・
「手紙…!!!」
そう。原因は手紙だった。
手紙には親父の仕掛けがあって、それによって若返らされてしまった。
このあとのことは…話すと長くなるし、パニクってて覚えてなかったり、そもそも理解に苦しむことだらけだったり…。
詳しいことは追々説明、ここでは端的に言おう。
人生をやり直すことになった。
中二病がマジに能力を手に入れたこの世界で。
毎日投稿目指してます!
ひと区切りついたら一旦お休みして、
完結まで書ききったら、もしくはまたひと区切りつくまで書いたら投稿していくつもりです