黒服の男たち
今より少し昔。世がUFOブームの真っ只中の頃。
真夜中にそれは現れた。人気のない、高速道路の工事現場。
宇宙局に送られてきた謎の電波。その暗号を解いた結果、明らかになった着陸地点。
空から飛来した円盤。迎え出たのは軍人、政府高官。
第一関門突破といったところ。お次はいよいよ人類と地球外知的生命体、つまり宇宙人と初の接触。無礼があれば惑星間の戦争に……いいや、ただ来るのが早かったと愛想をつかされるだけに終わるかもしれない。相手にもされない。猿同然。
そもそも戦争になるのだろうか。戦いに。一方的な蹂躙に終わるかもしれない。わからないことだらけだ。そもそも何が目的で地球に来たのか、どんな見た目なのか……。
しかし、円盤から現れた宇宙人は想像通りの姿であった。
グレイ型。定番の宇宙人。これには一同、一安心……いいや気を抜くな。これこそが彼らの仕業の可能性。それとなく情報を流し、親しみをこちらを驚かせないよう工作活動をしていたのかもしれない。
しかし、だとしたらなんだというのだ。宇宙の、彼らの星の礼儀作法も何も知らない。できることは笑顔を作ることぐらい。それすらも、もしかしたら挑発行為ととられるかもしれない。
そうとも、ただ為すがまま。相手がそれは無礼だと言えばそうなのだ。技術力の差はそのまま格差となる。黒船来襲。
頭を地面につけ、足を舐めてでもあの円盤、その技術が欲しい。だがそれは実質、支配されるということ。平等、対等な関係などではない。どうすればいいのか何もわからぬまま、人類の命運は迎えに出る彼らにかかっていた。
「わ、わからない……あいつら宇宙人……ニヤニヤしているように見えますが、我々を見下して、それともあれが基本形? ああ、わからない……え、長官? 長官! 何を! 気でも狂ったのですか!?」
突如、服を脱ぎ始めた政府高官。慌てて周りの者が止めるも振り切り、あっという間に全裸に。
「ど、ど、どういうつもりですか!?」
「……奴らの姿を見ろ」
「見ろって、見てますよ! グレイ型、想像したままの宇宙人ですよ!」
「……奴ら、服を着ているか?」
「え? い、いや、着ていないように見えますが、彼らの星ではあれが普通なのでは」
「いいや、奴ら、ニヤついているだろう。こちらが何も分からないと思って裸を見せつけているのさ」
「そ、そんな馬鹿な!」
「私にはわかる……奴ら、相当な変態だ。だからこっちも見せつけてやるのさ。
さあ、行ってくるぞ! お前たちも服を脱いだら来い!」
「ええ、いや、あの長官! 長官! ああ、もうおしまいだ……え?」
見事なまでに自分のモノを勃起させた政府高官は堂々と彼らに歩み寄り、そして……固く握手を交わしたのだ。
「ふっ、生命の象徴。敬意を払うのは当然というわけだな……」
「ええぇ……」
これを機に彼らとだけでなく様々な惑星の宇宙人と交流が始まった。
無論、世間には巧みに隠されてはいるが。
ゆえに、もし君たちの家に黒いスーツにサングラスをかけた男たちが訪ねてきても恐れることはない。
むしろ、誇りに思っていい。彼らは君のモノの大きさを称え、スカウトに来たのだから。