表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/172

混浴母艦

リガは若い男の兵士に案内されて、格納庫のすぐ脇にある「共同浴場」に通された。


兵士が鉄の扉を引くと、すぐに脱衣所だった。

扉の脇にゴツいブーツが綺麗に並べられている。

足元は傾斜のついたタイル。

鉄の網棚が壁際に並び、十人ほどの半裸の男女が服を着ようとしていた。


彼らが一斉にリガを見た。


大柄で筋肉質な女ーー左胸に青い紋様付きーーがいう。

「おいおい、ウル。なんで蛮人の子供なんて連れているんだ?」


ここまで案内してくれたウルが肩をすくめる。こうして見ると本当に若い。リガやヤズデギルドとたいして変わらないだろう。十二歳前後か。

「さっき、ぼろぼろの機体が〝先生〟のところに来たでしょう? あれの操縦士ですよ」


「まじで? このガキが? で、団長はなんで始末しないんだ?」


「全部を聞いたわけじゃありませんが、この子しか操縦できない機体なんだとか。ギレアド様が操縦しようとしたものの、吐き気を催して動けなくなったようです。団長が乗っても無理でした」


脱衣所の面々がざわついた。


「まじかよ。団長に動かせない機体?」と、片方の耳がない男がうなった。この男は右の二の腕に紋様がある。


五分刈り頭の男が額を叩く。

「それじゃあ、このお嬢ちゃん、今日から俺たちの仲間なのか?」


「違います。団長はまず毒見係に据えられました。信用がおけるまでは巨人には乗せないそうです」


兵士ウルはそういうと、リガの肩を叩いた。


「さあ!さっさと入ってくれ。ぼくも暇じゃないんだ」


リガが身を縮こめた。

「その、男の人がいるんですが」


「そりゃあ、いるさ。ここは軍艦なんだ。帝都の公衆浴場みたいに男女に分けるはずがないだろう」


「で、でも」


「早くするんだ!」


さきほどの女兵士が笑った。

「お嬢ちゃん、そいつはあんたに嫉妬してるのさ。ずっと殿下の侍従に志願しているのに聞き入れてもらえない。なのに、あんたはあっさり殿下のそばにいることになった。それが気に食わないのさ」


「違いますよ。ぼくは団長の命令を全うしたいだけです」

兵士ウルが網棚の下にあった背の低いロッカーを漁った。奥の方から服とタオルの束をとってリガに投げる。

彼女はどうにかキャッチした。


ウルがいう。

「裸を見られるのが嫌なら、なおさら早く入るんだね。いまは十二番隊と十三番隊の間だ。もうじき十三番隊が来るよ」


リガは彼を睨んだ。

「ご忠告ありがとうございます」


彼女は意を決すると、手早くコートを脱ぎ、インナージャケットを脱ぎ、シャツを脱ぎ、下着を脱いだ。


「では」リガは唖然としているウルに一礼すると、兵士たちの間をすり抜けて風呂場に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 毒見役ってなんか中国みたいだな ポンポン死んでるし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ