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まずは服を脱ぐ

わたしがヤズデギルド、だ?


少女の言葉に、ぼくもリガも呆然とした。


ちんまりした体を、ぶかぶかの軍用コートで包んだこの子が、アリシャを殺し、都市のみんなを殺し、山の民を虐殺したヤズデギルドだって?


少女が「答えよ」という。


いや、まさか。

どう見たってただの女の子だ。


あれか? 中央に立つ大柄な老人がヤズデギルドで、やんごとない身分だから、部下の女の子に代弁させているということか?


その老人がいう。

「殿下、このもの、もしや言葉がわからないのでは?」


「む」ヤズデギルドが顔をしかめ、さきほどまでとは異なる言語でいった。


「我が名はヤズデギルド。太陽王が娘にして、この第九軍団の長である。貴様の名を述べよ」


ぼくの巨人の脳の奥底から湧き出した知識が、ヤズデギルドの古い言葉を翻訳した。


誤解の余地はない。やはり、この女の子こそ、アリシャの仇、ヤズデギルドだ。


ぼくは言葉の内容をリガに伝えた。


彼女が考える。


〝ど、どう答えればいいんでしょうか?〟


〝落ち着くんだ。投降前に打ち合わせしたとおりに〟


リガが小さく息を吸った。

その場に片膝をつく。


「大丈夫です殿下、わたくしは殿下のお国の言葉を理解できます」


「ほう」と、ヤズデギルド。


「わたくしはリガ、都市エスドラエロンの不可触賎民にして、いまは真に自由となったものです」


「なに!?エスドラエロン?」初老の男が腰の剣のつかに手を当てた。「小娘!よもや、仲間の復讐か!?」


「とんでもございません。わたしはあの街では人間として扱われておりませんでした。奴隷以下の存在として、日々肉にされるのを恐れながら暮らしていたのです。そこにあなた様が現れ、自由をくださったのです」


「ほうほう」ヤズデギルドが小さな顎に細い指を当てた。「興味深い話だな。しかし、自由を得たお前がなぜこんなところにいるのだ? それに、あの奇妙な巨人はなんだ?」


「わたしは巨人工房で清掃係をしておりました。あなたたちが襲ってきた時、身を守るために修理中の機体に飛び乗ったのです。


すると、巨人の体の外で、何かものすごい爆発が起こって、そのあと急に寒くなりました。もうダメだと思ったのですが、操縦桿を握ったところ、巨人を操ることができまして、街の外に逃げ出したんです。


行くところもなく途方にくれていたら、雪の上にこの船の跡を見つけたので、延々追いかけてきたのです。お会いして、助けてくださったお礼をいいたくて。それとーー」


ヤズデギルドが目を細めた。

「それと、なんだ?」


「その、ひょっとしたら、わたしも何かお役に立てるかと思ったんです。巨人を動かせるわけですから」


「で、見返りに食料をよこせというわけか」


リガが恥ずかしそうに腹を押さえて見せた。


「わたしも巨人も、もう何日も食べてなくて」


「なるほど、それであんな風に倒れたわけか」


含み笑いをするヤズデギルドに、初老の男が身をかがめて耳打ちした。

「殿下、かんたんに信じなさるな。もし本当に害意なく追いかけてきたなら、どうして山の上に潜んでいるのですか。堂々と母艦の後ろから歩いてくればよいはずです」


リガが手をあげる。

「煙が見えたからです。なにか戦いが起きているなら、無闇に近づくのは危ないと思ったんです」


「賢い子だ」とヤズデギルド。「話の辻褄は合っている。それにあの急峻な山を越えたとなると、巨人を操る腕もいい」


「殿下!」と、老人。


「まあ、そう心配するな。わたしは証拠もない話を盲信するほど愚かではない。娘、まずは、服を脱いでもらおうか」


〝は?〟と、リガ。


ヤズデギルドが淡々という。

「聞こえなかったか? 服を脱ぐんだ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 入れ墨の有無を確認とみた
[一言] いいぞもっと書いてください SF成分が満ち足りてきました
[一言] これはぁ…身体に傷の一つや二つないと拷問でもされそうですねぇ…
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