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沈まぬ太陽

夜が来ないのは理屈がつく。


ここが極圏なら、白夜によって何ヶ月間も昼が続くことは何も不思議ではない。


でも、太陽が天球の頂点にとどまり続けているのはどういうことなのか。


たとえ白夜でも、太陽はそれなりに動くはずだ。


地球が自転している以上、太陽は動くのだ。


しかし、現実問題、ぼくの頭上のそれは一箇所にとどまっている。


となると、やっぱりここは地球ではないのか。


ずっと遠い未来。人間ははるか宇宙の彼方まで進出し、この恒星と自転周期が一致している惑星に植民したものの、文明の黄昏を迎え、科学技術が衰退した。そういうことなのか。


ドストエフがぼくの首を動かし、都市とは反対側の地平に顔を向けた。


どこまでも真っ白な雪と氷の世界が広がっている。


ぼくの目は一キロ先で跳ねるうさぎそっくりの生物を捉えていた。というか、あれはウサギそのものだ。長い耳に長い後ろ足。


遠くで稲光が煌めき、かなり遅れて雷鳴が轟いた。


本当にここが植民惑星などということがあるのだろうか。

この光景、ぼくが目で見て、耳で聞き、肌で感じる世界は、地球みに溢れている。たまたまこの星の土着生物がウサギにそっくりで、たまたま雷の性質も地球のそれに似ているのか?


彼方で、稲光ではない何かが光った。

ぼくの恐るべき視力でも何かはわからない。


モニターの向こうでジャムリがいった。

「なんすかね?」


「都市ガンガの方角だ。あまりいい予感はしないな」


「いやいや、隊長はちょっと気にしすぎですよ。単に熱盗賊と一戦かましてるだけでしょ」


「だといいんだがな」


また光が煌いた。


ぼくたちはそれを横目に都市の外周をぐるりと回る。都市の周囲は七つの丘に囲まれており、厳しいアップダウンが連続する。


ぼくは肺が破裂するかと思うほどに無理をさせられた。


そういうわけで、丘の影からひっそりと近づいていた単独行動の敵機といきなり相対したときには、呼吸が苦しくて苦しくて、動きが極めて鈍かった。


敵が手にしていた巨大な鎌のような武器を振り下ろした。ドストエフがとっさにぼくの体をひねったが、よりによってここでこむらがえりが発生した。ぼくは苦痛で体が固まり、そのままもろに右脇腹をごっそりえぐられた。


ジャムリと彼の巨人が駆けつけて、どうにか危機を脱したが、ぼくもドストエフも激しい不安に襲われていた。ぼくの状態は日をおうごとに酷くなっている。


致命傷を負ったのは、それから四日後だった。



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