美枝子さんと五月の焼きそば
その日、美枝子さんは落ち込んでいた。二号室の住人が引っ越してしまったせいだ。だから俺は言った。
「美枝子さん、今晩なにかごちそうしてくれませんか」
俺の住んでいる「ひかり荘」は、いまどき珍しい貸間である。外から見るとごくふつうの二階建ての家なのだが、一階は大家の住居、二階は六畳間が三つと共用の台所と風呂とトイレがあって、この六畳間を一つずつ貸しているのだ。俺の部屋は三号室で、一号室に住んでいるのは立花美枝子さんという七十過ぎのおばあさん、二号室には堀信彦という男が入っていた。堀は俺と同じ大学で、学部こそ違うが同じ一年生だ。
俺がひかり荘に住むことにしたのは、一にも二にも家賃が安いからである。堀もたぶんそうだ。ただ、ここは食事つきではないので、住人は各自適当に外食するか、スーパーやコンビニで弁当などを買ってきて部屋で食べるか、もしくは自炊する必要がある。
俺も堀もたいてい朝は出来合いのおにぎりや惣菜パン、昼と夜は学食だった。自炊する場合は二階の廊下のどんづまりにある共用の台所を使うことになる。流しと二口ガスコンロがあるだけの貧相な設備である。しかしここが実は一号室の美枝子さんの城であった。美枝子さんはここに大量の鍋釜包丁のたぐいを持ち込み、毎日自炊をしている。
俺が学校に行くために部屋を出ると、美枝子さんが台所で朝食に使った皿を洗っているのをよく見かける。美枝子さんは「長谷川さん、行ってらっしゃい。勉強がんばって」と笑顔で声をかけてくれる。ときどきそのあとに「今晩はおひまですか。もしよかったら夕飯をいっしょにいかが」とつづくことがある。美枝子さんの不思議夕食会のお誘いである。不思議というのはその献立のことだ。美枝子さんの手料理はどれもこれも変わり種なのである。
そして堀が引っ越してしまったのは、この不思議料理が大嫌いで、同じ屋根の下にいるのもいやだったからである。
俺と堀がひかり荘に入居したのはこの四月の初めで、たまたま同じ日だった。そしてその日の夜、美枝子さんはさっそく俺たち二人を夕食に招いた。ひらたくいえば歓迎会だ。献立は美枝子さんの部屋にお邪魔する前からにおいでわかった。カレーライスである。
俺と堀は緊張半分期待半分で美枝子さんの部屋に上がって、食卓として使われている卓袱台の前に雁首をならべていた。部屋は掃除と片づけが行き届いてすっきりしていた。卓袱台と座布団のほかには、片すみに炊飯器やトースターの載った低い机、その近くに小さな冷蔵庫と電気ストーブ、壁に姿見が一枚、それだけである。あとの所帯道具はすべて押し入れに収納してあるらしい。
美枝子さんは炊飯器から三枚の皿に飯をよそい、それを盆にのせて部屋の外に出ていくと、台所で鍋からカレーをかけて戻ってきた。卓袱台の上に三人前のカレーライスがお目見えした。
「うわあ、うまそう」と俺は言った。
「げっ、なんだこれ」と堀は言った。
そして俺と堀は顔を見合わせた。
「「げっ」ていうのは何だよ、失礼なやつだな」と俺。
「これがうまそうだなんて、本気か」と堀。
美枝子さんも座につこうとしていたが、困った顔をして立ち往生した。あきらかに雰囲気がおかしくなっていた。
「堀さん、もしかしてタケノコはお嫌いでしたか」
美枝子さんはおそるおそるそうたずねた。堀ははげしく首を振った。
「好きですよ。煮物とか天ぷらとか青椒肉絲なら。でも、これはないでしょう」
目の前の皿に人差し指を突きつける。薄切りにした孟宗竹のタケノコが、カレーの中にたっぷり入っているのである。タケノコのほかは挽肉と櫛切りのタマネギとグリーンピースで、定番のニンジンやジャガイモは見えない。付け合わせは福神漬けではなく紅ショウガ。
「俺は食ったことないから知らないけど、タケノコってカレーに合わないのか?」
「合うわけないだろう。タケノコは日本とか中国の食べ物で、カレーはインドの料理だ」
「その理屈だとカレーにジャガイモ入れるのはどうなる。ありゃアメリカの野菜だぞ」
「知るか。とにかくカレーにはタケノコは入れないものだ」
「あ、おまえもしかして、酢豚にパイナップル入ってるのも認めない派?」
堀は親の仇である宇宙人を見るような目で俺を見た。美枝子さんが割って入った。
「冷めるとうまくないから、お話はほどほどにして食べませんか」
「けっこうです」
そう言い捨てて堀は立ち上がった。
「せっかく用意していただいて申し訳ありませんが、僕は食べられません。これで失礼します」
止める間もなく部屋を出て行ってしまった。俺と美枝子さんは顔を見合わせた。
「なんだあいつ、あの態度は」
「いえ、こっちが前もって好き嫌いをたしかめなければいけませんでした。うっかりしました」
「そんなもんですかねえ」
俺はスプーンを取って、カレーを口に運んだ。鰹節でだしをとっているようだ。タケノコの歯ごたえとカレーの香りと飯の甘みが合わさって、すこぶる美味であった。結局、堀の残していったぶんまで平らげた。
それから少したって、大学生活が始まって間もないある日の昼、学食で堀を見かけた。どうやら一人で食事をしているようだ。隣の席が空いているので、俺はもやし大盛りの醤油ラーメンの載った盆をそこに置いた。
「よう、邪魔するぜ」
「どうぞ」
やつとは学部が違うので同じ講義はひとつも取っていないし、共通の友人もいない。一つ屋根の下に住んでいるとは言っても、ほとんど寝に帰るだけの家なので、意外に話をする機会はない。
やつの前の盆には定食らしき献立が載っていた。飯と味噌汁、チキンカツと千切りキャベツ、ホウレンソウのごまあえ、沢庵漬け。
「チキンカツと味噌汁を一緒に食うのは有りなんだな」
俺がつぶやくと、堀は横目でこっちをにらんだ。
「何が言いたい」
「チキンカツは西洋の料理で、味噌汁とかごまあえとか沢庵は日本の料理だろう。おまえのルールだと引っかかるんじゃないのか」
「こないだのつづきか。あんなもの思い出したくもない」
「そこまで嫌かねえ。実際うまかったぞ、タケノコのカレー」
「飯がまずくなるような話をするなら、どこかよそに行ってくれ。もしくは僕がどこかに行く」
堀が箸を置いて席を立つそぶりを見せるので、俺は謝った。
「悪い悪い。嫌がらせするつもりはなかったんだ。ただ純粋に不思議に思っただけでさ。実際に食わないことには本当にまずいかどうかわからないんだから、ひとくちぐらい食ってみてもよかったんじゃないか」
「まずいと予測できるものをわざわざ食ってみる必要はない。おまえはそこらへんに生えてる雑草なんかをいちいち味見するのか?」
「たしかに雑草は食わないな。でも美枝子さんの料理を雑草扱いするのはどうかねえ。うまそうなにおいがしてただろう、あれ」
「においだけならな」
ここまで話したところでやつは定食をすべて食べおわり、さっさと席を立った。俺は呼び止めた。
「なあ、おまえ専門は国文学だって言ったっけ」
「そうだ。それがどうした」
「森鴎外の好物に饅頭茶漬けというのがあるんだけど、どう思う。飯に饅頭を乗せて、上からお茶をかけて食べるんだ。飯とあんこがマッチしてなかなかの美味だという……」
「僕は鴎外は嫌いだ」
それだけ言い残して、足早に去って行った。
こんなやりとりがあったあとで、俺は妙な遊びを思いついた。堀を見かけたらこっそり近づいて、やつの嫌いそうな食べものを耳元でささやくのだ。
それまで気にとめていなかったのだが、家も学校も同じなだけあって、堀とはちょくちょくニアミスしているのだった。俺は道路やキャンパスを歩くときに近くに堀がいないかつねに注意を払うようになった。標的を発見したら気配をひそめて接近、耳元に爆弾を投下する。堀はとても愉快な反応を見せる。たとえばこんな感じだ。
「シチューオンライス」
「うわあ!」
「いかがですか」
「なんだ、長谷川か。後ろから忍び寄ってきていきなり何を言うんだ」
「何って、シチューオンライス」
「修辞的疑問文に律義に答えるな。そんなおぞましい言葉、二度も聞きたくない」
「ポテトサラダにリンゴが入ってるのどう思う」
「またか。往来で変なこと話しかけてくるのやめろ。リンゴをマヨネーズで和えるなんて正気の沙汰じゃない」
「おまえって、唐揚げにレモンかける派?」
「レモンの汁というのは要するにジュースだ。おかずにジュースをかけて食うなんて、育ちの悪さが知れるね。というかおまえ、僕がどう答えるかわかってて聞いてるだろ」
「たらこスパゲティ」
「和洋折衷を履き違えた愚行だ」
「栗ごはん」
「あれはなぜか世間ではごちそう扱いされてるけど、本来は糅飯の一種だと思う。好んで食べるものじゃない」
「カテメシ?」
「米が十分に手に入らない時に、ほかのものを混ぜて嵩増ししたやつ。麦飯とか、粟飯とか、芋飯とか、大根飯とか。どんなひどい食べ物でも、飢え死にするよりはマシだからな」
「ああ、なるほど。菜飯なんかもそれですぞなもし」
「栗は栄養があるから、栗ごはんも栄養面でなら評価できないことはない。味はともかく」
せっかくやつの専門に合わせて国文学ジョークを披露したのに、無視されてしまった。
「じゃあ、茶碗蒸しに栗の甘露煮が入ってるやつはどうだ?」
「なんだそれは。ありえない」
「うまいんだけどな、あれ。ガキだったころ、弟と奪い合うみたいにして食ったもんだ」
「そういう食生活だったから、こういうふうに育ったんだな」
「何とでも言え。うまいもんはうまいんだ」
「納豆に砂糖をかけて食う地方があるって知ってるか?」
「知らん。去れ」
「ちなみに、こないだ美枝子さんのところでマヨネーズで納豆をあえたのを食ったけど、うまかったぞ」
「おまえまだあの人のところに出入りしてるのか」
もちろん出入りしていた。一つ屋根の下に住んでいるのだから、なにかしらの付き合いがあるのが当たりまえなのであって、堀が美枝子さんと完全に没交渉になっていることのほうがおかしいのである。この話をしたのは五月のはじめごろ。後から考えれば、このころにはやつはすでにひかり荘を出る腹を固めていたにちがいない。
そのときまでに美枝子さんのところで夕飯をよばれたのは、最初のタケノコカレーの時を含めて三度。二度めのときは菜の花のナポリタン、三度めのときはホットケーキの大根おろし乗せだった。納豆をマヨネーズであえた付け合わせが出たのは三度めのときである。
「もっとおとなしい献立にすれば、堀さんにも来てもらえるんでしょうけど」
美枝子さんはそんなことを言っていた。かなり悩んでいる様子である。
「いやあ、あいつがひねくれてるのが悪いんで気にしなくても」
「人に食べてもらえない料理は意味がありません。意地を張って妙な創作料理を出しつづけるのではなくて、ありきたりな料理を作るべきなんでしょう。少なくとも堀さんを呼ぶつもりなのであれば」
「だったらそうすればいいんじゃないですか。普通の料理が作れないってわけじゃないんでしょ。俺は変わった料理も好きですけど、普通の料理も好きだし、どっちでも喜んで食べますよ」
美枝子さんはホットケーキが大根おろしでふやけていくのを眺めながら、
「でも、普通の料理は立花美枝子の料理じゃないんです。やっぱり自分の料理を食べてもらいたいという欲が捨てられなくて」
俺は大口をあけてホットケーキをぱくついた。甘さ控えめのケーキ、ツンとくる大根おろし、そして大根おろしに垂らした醤油というのは珍妙な組み合わせだったが、不思議とよく合った。
「美枝子さん、あんまり悩んでると老けちゃいますよ。だいたい堀のほうこそ若いくせに頭が固いんです。「常識とは十八歳になるまでに身につけた偏見のコレクションである」っていうのは、堀のことを言った言葉ですよ、きっと」
美枝子さんはようやくくすりと笑って、ホットケーキを口に運んだ。
「冷麺って食ったことあるか。なんとスープの中にスイカが一切れ入っててな」
「今から昼飯だというときに食欲の失せるような話をするな」
「丸美屋の「のりたま」っていうふりかけあるだろ。あれ、こしあんが入ってるって知ってたか」
「知らなかったけどどうでもいい。僕はご飯にふりかけとかいう余計なものをかけるのはそもそも嫌いだ」
「赤飯に甘納豆が入ってるのも当然だめか」
「赤飯に入れるのは小豆だろう」
「金時豆の甘納豆を入れる土地があるんだよ」
「化外の地だな」
「おっ、今日の昼は定食じゃなくてパンを買うのか。これオススメだぞ、明太マヨネーズトースト」
「どこにでも現れるな、おまえは」
「明太子とマヨネーズの組み合わせは奇跡としか言いようがないね。マヨネーズは明太子と出会うために日本にやってきたと言っても過言ではない」
「悪趣味な奇跡もあったもんだ」
おそらく堀は食材の分類とその組み合わせによって味を評価しているのだろう。和食の素材と洋食の素材、肉と果物、主食物と菓子などといった組み合わせは無条件でまずいと感じるのだと思われる。チキンカツと味噌汁のような例外もあるが。
べつに堀が異常なわけではない。人間かならずしも舌ばかりで食べものを味わうとはかぎらないのだ。この料理は値段が高いからおいしいにちがいないと思い込んで食べれば、実際おいしく感じるものである。ほかにも、行列ができているからおいしいとか、星の数が多いからおいしいとか、盛り付けがきれいだからおいしいとか、国産だからおいしいとか、無農薬だからおいしいとか、手間がかかっているからおいしいとか、愛情がこもっているからおいしいとか、この手の例は枚挙にいとまがない。
そして五月の最後の土曜日、半端に曇った空から雨がぽろぽろと降る日のことである。堀が何度も部屋を出たり入ったりしているので、何をしているのかと思って見に行ってみたら、家財道具を運び出しているのだった。
「えっ、もしかして引っ越し?」
「ああ」
「声かけてくれれば手伝ったのに。いや、今からでも手伝うぞ」
「気持ちだけもらっておく。もう終わるところだ」
知り合いから借りたというミニバンに荷物を積み込んで、小雨の中をやつはさっさと立ち去った。引っ越し先は普通のアパートで、家賃はひかり荘よりだいぶ高いという。よほどここの暮らしが嫌だったようだ。
美枝子さんは朝から仕事に行っており、午後になって帰ってきて初めて堀が出て行ったことを知った。そして落ち込んだ。俺はこれまでしたことのないことをした。
「美枝子さん。今晩なにかごちそうしてくれませんか」
美枝子さんの部屋の戸を叩いてそう言ったのだ。何か食わせてくれとこちらから頼むのは初めてのことだった。少しして、部屋の中で立ち上がる気配がした。
「そうですね。何かおいしいものを食べて元気を出しましょうか」
その晩、例によって俺は美枝子さんの部屋にお邪魔した。卓袱台の上に登場したのは、ソースのにおいも香ばしい焼きそばである。もちろん普通の焼きそばではない。よく見れば、あらぬものがソースをまとって、当然のような顔で焼きそばに混ざっている。
「美枝子さん、みかんが入ってるように見えるんですが」
「そうですね」と美枝子さんは何くわぬ顔で、「正確にいえば、夏みかんです。出盛りは四月から六月ごろ。ちょうど今がいい時季ですね」
堀だったらひとめ見ただけで百メートル先まで逃げてしまうようなしろものだ。とにかく食ってみることにする。いきなりソースまみれの夏みかんの実を箸でつまんで口に放り込んだ。口の中ではじける酸味、それにわずかな苦み。甘辛いソースの味がそれを包みこむ。これはなかなかのハーモニー。
俺はがつがつと焼きそばを口に運んだ。夏みかん以外の具はニンジンとピーマンと豚肉というごく当たりまえのものだが、夏みかんの酸味が加わったせいか、ひと味かわった感じがする。
卓袱台の上には焼きそばのほかにサラダの小鉢があった。ちぎったレタスと細切りのキュウリと茶色い揚げ物らしきものを白いドレッシングで和えてある。茶色いのがクルトンであれば普通のシーザーサラダだが、どうも違うように見える。食べてみた。クルトンよりパサパサしているが、味は似ている。
「それは油麩です」
「アブラフ?」
「要するに油で揚げた麩ですね。地場食材です」
結果としてはクルトンで作ったシーザーサラダと大した違いはないように思うが、とにかく何か普通ではないものを使わずにいられないのが、美枝子さんの料理である。
「このシーザーサラダぐらいなら堀さんにも食べてもらえましたかねえ」
結局のところ今日の話題はそこに戻ってくるのだった。
「無理だと思いますね。和食の食材にチーズドレッシングがかかってる時点で、あいつはそっぽを向きます」
「なるほど。言われてみればそうかもしれません」
美枝子さんは、堀が出て行ったのは自分のせいではないかと思ったのだろう。たしかに、それも原因のひとつではあったかもしれない。だが俺が事あるごとにおちょくったこととも無関係ではないだろうし、そもそも堀のような神経質な人間にはほかの住人との距離が近い住居は不向きである。同宿しているのがどんな人間であっても、やつはいずれ出ていくことになったのではないかと思う。
「まあ、世の中の人全員と仲良くできるというもんでもないでしょうし、しょうがないですよ。堀の出て行ったあとに、そのうちにまた誰か新しく入ってくるでしょう。きっとつぎの人は美枝子さんの料理を食べてくれますよ」
「長く生きてますから、そうやって割り切るしかない物事もあるのだとわかっていますが、それでも残念ですねえ」
またしてもためいきをこぼす美枝子さんであった。俺は空になった皿を持って腰を浮かした。
「ところで、焼きそばのおかわりはありますか」
「ありますよ。台所のフライパンに入ってます」
「じゃ遠慮なく」
苦笑いする美枝子さんを後にして、俺は部屋を出た。台所の明かりは消えており、正面の小さな窓から月が見えた。雨はもうやんだようだ。明日はきっと晴れるだろう。
夏みかんの焼きそば
材料(2人前)
焼きそばの麺…2食
ソース(粉末のものでも可)…適量
豚こまぎれ…50グラム
ニンジン…1/2本
ピーマン…1個
夏みかん…1個
作り方
(1)夏みかんの皮と袋をむいて、種を取りのぞく。
(2)ニンジンは細切り、ピーマンも種とヘタを取って細切りにする。
(3)フライパンに油を引いて、肉、ニンジン、ピーマンを火が通るまで炒める。
(4)(3)に焼きそばの麺を入れて、ほぐしながら炒める。
(5)麺がほぐれたら(1)の夏みかんを入れ、ソースも入れて手早く混ぜる。
(6)できあがり。
私はおいしいと思うのだが、人に食わせたことはまだないので、味の保証はできない。
焼きそばを作る際に、鍋に水を入れて蒸し焼きにする人が多いと思うが、私の家では近年その方法を廃止した。かわりに、麺を袋から出す前に袋の上から揉む、という方法を採用している。こうすると水を入れなくてもほぐれやすくなる。
どうしても蒸し焼きにしたいという人は、夏みかんを入れる前に蒸し焼きにしたほうがよいだろう。
夏みかんのかわりに八朔を使うのもよい。グレープフルーツでやってみたこともあるが、これは甘ったるくなってしまってダメだった。おそらく伊予柑、オレンジ、温州みかんなどもダメだろうと思う。
夏みかんは、むくのが面倒なのが問題である。どんなに手際よくやっても、それだけで十分ぐらいは取られる。手でひとつひとつむくのではなく、グレープフルーツをほじくって食べるためのギザギザのついたスプーンを使うといいかもしれないが、私は試していない。