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第四話 武術家vs金髪メイド

ちょいエロ回(濡れ場はありません)




「これでよし…っと」


黒のワンピースに袖を通し、その上からエプロンを締め、首元のタイを絞める。黒のショートウィッグとヘッドドレスを被り、ローファーを履いて洗面台の鏡の前に立つ。


鏡の向こうには、ヴィクトリアンメイドを見に纏った、東洋人の少女の姿があった。



「……」



鏡の前でくるりと回るとスカートが翻り、生足を新鮮な空気が撫でるスースーとした感覚を感じる。


両の手でスカートの裾をつまみ、西洋人の女性が社交の時にやるように一礼してみる。



初めて女物の衣装を身につけるということで、林は気恥ずかしさを感じつつもどこか楽しんでいるようだった。



「ラムちゃ〜ん?支度は終わったかしら?ってあっ——」



余りに着替えに時間がかかっているので耐えかねて居間からやってきたマーガレットは、メイド服を着て鏡の前で一人踊る林の姿を見るなり目を丸くした。



「か……か…」



「どうかしたか?メイド長」



「可愛いぃぃっ‼︎」



「——っ⁈」



そう叫ぶやいなや、マーガレットは林に飛びつき、思い切り抱擁する。


肋を全力で締められ、強制的に呼気を吐き出させられた林は、何とか息を吸おうとするが、至近距離で感じる女特有の甘ったるい香りに思わずクラッときてしまう。


それに、マーガレットと林では体格差があるので彼女が林を抱きしめると自然に林の頭はマーガレットのたわわに実った乳房に埋められる訳で、林は気恥ずかしくなって何とかその真綿で首を絞めるようなクリンチから抜け出そうともがく。



「やぁぁぁん可愛いぃぃっ‼︎こんな可愛い生き物がこの世にいるなんて‼︎あぁ食べちゃいたい!なんて可愛いのぉぉぉ⁈お姉さんチューしちゃおっ‼︎」



「は、離せ‼︎」



「あら?ラムちゃんひょっとしてこうして大人のお姉さんに抱き付かれるのは初めてかな?もしかして興奮しちゃった?さっきからぁ〜私のふとももに何か硬い感触があるんですがぁ〜ねぇ〜」



「う、煩い‼︎」



林は木人樁を打つ要領でマーガレットの両手を外し、両手掌底で彼女を押して何とかクリンチを脱するが、その時林の両手はマーガレットの乳房を鷲掴みする格好になってしまう。



「きゃっ⁈エッチ!」



「人聞きの悪いことを言うなよ……そっちから仕掛けてきたのに全く…」



未だ掌に残る柔らかい胸の感触をスカートの裾でごしごしとかき消しながら、林はブツクサ文句を垂れた。



「御免なさいね。ラムちゃん。あんまり可愛いものだから、お姉さん興奮しちゃった❤︎」



マーガレットは軽く誤魔化すと、改めて舐め回すような視線でメイド姿の林を見つめた。



「あんまりじろじろ見るなよ…」



「う〜ん、確かに顔も可愛いし女の子の服も似合ってるんだけど…何か足りないわねぇ……」



「何が?」



「う〜ん、あっ分かった!これよこれ‼要はペッタンコなのよラムちゃんは︎。ウエストも無いし」



マーガレットはエプロン越しの自分の胸を両手で抱えると、ぷるんぷるんと揺らしながらそう言った。



「言われてみたら確かにな……。靴下でも丸めて詰めておくか」



「いやいや、確かもっといいのがあったから、ちょっと待っててね」



マーガレットは、クローゼットの下段の引き出しを漁ると、レースの布切れを何枚か取り出した。


ショーツにストッキング、ガーターベルトにコルセット、パッド付きのブラが1セットだ。



「やっぱり女の子のおしゃれは体型からやらなくちゃ。さ、服を脱いで」



「は?」



「服を脱いでこれを着るの。それとも私が一枚一枚丁寧に脱がしてあげましょうか?」



「前者で頼む。向こうを向いててくれ」



「ええ」



「ったく変態め……」



スルスル…と衣擦れの音を響かせながら、林は一枚一枚身につけていた衣服を剥ぎ取り、生まれたままの姿になる。





* * * *





夕方の屋敷の一角。フレデリカは、マーガレットの帰りが余りにも遅いので心配になって林の部屋にやってきた。



「はぁっ…はぁっ……メイド長…もうダメだ……出そう…」



「ダメよラムちゃん。男でしょ?あともうちょっとだけ我慢なさい」



「そ…そんな……」



「ほらあと一回。締め付け強くしてくわよ。もっと腰を上げなさい」



部屋の扉の奥から林の悲鳴とも嬌声とも取れるような声、そして明らかに興奮した声色で林を宥めるマーガレットの声が漏れているのを聞き取り、フレデリカはぽっと顔を赤くした。



(まさかメイド長……あの護衛屋ともうそんな関係に⁈いや、前から可愛い年下の男の子が好きって言ってたけど……それにしても早過ぎないかしら⁈)



こうしている間にも、部屋の外には絶え間なく二人の嬌声が漏れ出ている。


フレデリカは耐えかね、音を立てないように慎重にドアノブを回して中を覗き見た。



「あぁ…メイド長……出る…もう出る…」



「だぁめ❤︎がまんがまん」



「………内臓が出るって言ってんだろうがぁ‼︎」



「出ないわよそんなもの。私も他のメイドも、西洋人の女性はみんなこれを締めてるのよ?」



ランジェリー一式を身につけ、壁に手をついた姿勢の林の背中でコルセットの紐を結んでやると、マーガレットはエプロン越しに自分のウエストをぽんぽんと軽く叩いた。



「さぁ、服を着て鏡の前に立ってみて。さっきとは大分シルエットが変わったと思うから」



林は言われるがままにメイド服を着直し、エプロンの紐を締めた。


寸胴な男性の体型から、しなやかでメリハリのある女性の体型へと変わった自分の姿を鏡越しに見た林は、その場でくるりと一回転した。



「はぁ……なぁんだ。びっくりした」



扉の向こうではフレデリカが一人、人知れず胸を撫で下ろしていた。



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