98話・見え見えの安い挑発
「おや?みなさん、どうなされました?急にさっきまでの勢いを
感じられなくなりましたが...?もしかして、私の殺気を受けて
怖じけついてしまったのですか...?」
アンジュに諭された屋台の主達が、無作為に動かず間合いを図っていると、
ファングがワザ悪態をついて煽ってくる。
「あのクソじじぃ...!人を小馬鹿にした表情で挑発しやがって...」
「だが、アンジュさんの言う様に、なんの策も無しにあいつと戦っても
むざむざと殺されるのは明白...」
「いやはや...なんでしょうね、この脅えきった表情の数々は...そんな気概で
よくもまぁ、我が主のガッコ様に逆らおうと思ったものです...全く、愚か者で
滑稽な連中ですよ...くくく」
打つ手を模索中の屋台主達にファングは更に悪態をつき、怒りを買う様な声で
屋台の主達を罵ってくる。
「お、おのれ、言わせておけば...もう我慢できねぇぇ...!こうなったら、
玉砕覚悟でやってやるぜっ!」
気合を強引に入れ直した屋台の主のひとりが、持っていた武器を握りしめて
ファングへ突撃しようと腰を踏ん張って身構える。
「待ちなさい、ウンジュさん!あんな見え見えの安い挑発に乗って
どうするのよ!落ち着きなさいなっ!」
「ア、アンジュさんっ!?」
ファングへ襲いかかろうと息巻いている屋台の主の前へ、アンジュが
乗り出す様にバッと飛び出してそれをとめに入ると、屋台の主が慌てて
動きをとめる。
「全く...あれだけ、無茶はしないでって言ったのに......!」
「す、すいません、アンジュさん!つい、カッとなってしまって......」
しかめっ面で飛び出した屋台の主を注意すると、冷静さを取り戻した
屋台の主が、ペコペコと何度も頭下げてアンジュへ謝ってくる。
「反省するのはあなたもですよ、アンジュさん!」
「キャッ!?」
「いくらこいつをとめに入る為とはいえ、迂闊にあのじいさんの前へ
出ないで下さい!」
迂闊な行動を取る諦アンジュの腕を無理矢理に引っ張って、自分の後ろへ
立たせる。
「あ...ご、ごめんなさい!ウンジュさんをとめるのに必死で、その事を
失念していたわ...」
もしもの事を考えて怒ってくる屋台の主に対し、自分の落ち度を認めた
アンジュが申し訳なさそうに謝罪する。
「ふふ、そこは安心して下さい...アンジュ様は怪我させず、丁重に
お連れしろとガッコ様よりのご命令ですので...」
「なっ!?あのストーカー野郎...まだ、アンジュさんを諦めてなかったの
かよ!」
「ストーカーは心外な表現ですね...そこは慈愛が深いと表現して欲しい
ものです!」
ファングが人差し指を立てて、チッチッチッと左右に振って、屋台の主達へ
訂正を進言をしてくる。
「何が慈愛だ...気持ち悪い......」
アンジュが目をキッと細め、感情のこもっていない能面な顔でガッコの事を
聞こえないくらいの声で呟く様に軽蔑する。
「そう言う事ですので、アンジュ様はそこで安心して見ていて下さい...」
「まぁ...但し、ガッコ様に逆らったここの連中の......」
ファングが剣を構え、アンジュ以外を見渡し......
「命の保証までは、知りませんがね......くくく...」
ファングが目を据えて屋台の主達を睨むと、その身体から殺意のオーラが
噴き出してくる!




