7話・過保護
「メイーナ、何...その肩からかけているバッグは?」
「これ?これはね、シュンへのプレゼントが入っているんだよ!」
「僕へのプレゼント?」
「うん。まずは...これ!このアイテムは『マジックボックス』と
言って、武器や道具なんかを入れる事ができる優れ物だよ!」
メイーナがバッグからごそごそと取り出した小さな箱を僕の方に
見せて、その効果を説明する。
「へえ...こんなに小さいのに、アイテムの入れ物なんだ?」
「しかもこのマジックボックス、大小関係なく、色々な物を入れる事が
できるんだから!」
「へえ...それでこの中には、どれくらいの物を入れる事ができるの?」
「そんなの無限に決まってるじゃん!女神特製だから!」
「む、無限にですか...」
「はい、無限にですよ♪」
アイテムボックスを僕に突きつけ、メイーナがドヤ顔で自慢してくる。
「じゃ...次はこれとこれとこれ...これ!」
次にバックから取り出した物は、凄い輝きを見せる、兜、鎧、籠手、靴、
そして剣と盾だった。
「その装備品、何か神々しい輝きを放っているね......」
「ふふ~ん、そりゃそうよ!何せこれらはメイーナ様の作るアイテムの
中でも特製中の特製な装備品なんだから!右から順に...
『メイーナ・ヘッドアーマー』『メイーナ・アーマー』
『メイーナ・ガントレット』『メイーナ・ロングブーツ』
『メイーナ・ブレード』『メイーナ・シールド』...だよっ!
ハッキリ言ってこの装備たち、あの世界の最強装備の数十倍の強さを
持っている代物なんだから!」
「す、数十倍って!それさえあれば、魔王を倒せちゃうんじゃないのか?」
「うん、そうだね。これらを装備し、最大パワーでいけば、恐らく魔王なんて
ワンパンできちゃうと思うよ♪イヤ...ワンコロかな♪」
「ワンコロって一撃で殺せるって事だよな!じゃあ、それをクラスの
みんなに渡してやれよ!魔王を倒す為に召喚された僕のクラスメイト達に!」
「え...嫌なんですけど。何であんな連中に私の至高作をあげなきゃ
いけないのよ?」
うあ...メイーナの奴、「マジで有り得ないんですけど」っていう顔を
していやがる。
くう、クラスメイトの連中が、何か憐れになってきた。
「あの連中の事はランスロッド王国に任せておけばいいって♪
この私が絡んでいるんだし、悪いようにはならないよ、うん♪
さ、そんな事よりも......次のアイテムは~っと♪」
蒼井のクラスメイトの事など、全く気にもしないメイーナは
話を切り替えるように、次のアイテムをバッグから取り出す。
「じゃ~ん、これは名付けて『パーフェクトポーション』っ!
略して『WP』!効果は死んでさえいなければ、死にかけだろうが、
欠損しようが、パッパっと全部治しちゃう究極の回復薬だよっ!」
「な、何でも全部治しちゃう!?どんな状態でもかっ!」
「うん、どんな状態でもだよ♪手がもげようが、顔が潰れようが、
『WP』を使えば、たちまちにキレイに元通りって感じだねっ♪」
「キレイに元通りって...だからそんな便利な物、クラスメイト達に
渡してやれよ!頼むからっ!」
僕がメイーナに困惑した表情で絶叫すると、メイーナから先程と
同じ態度が返ってきた。
「えっと、次は...」
「ちょい、まだあるのか!」
「当たり前じゃん!まだこれ等は序章に過ぎないよ!」
それからメイーナ特製の武器、防具、アイテムを次々と紹介されていき、
全てを説明し終える頃には、数時間が経過していた。
「...と、まあ。これくらいの備えがあれば、取り敢えず何とか安心かな♪」
「何とか安心ってLVじゃねえよ!そのアイテムを使えば、寝てても勝てる
LVじゃねぇかっ!」
「しょうがないじゃないか!だってあんなアホみたいな世界にシュンを
転位させるのが、もう心配で心配でっ!」
ア、アホみたいな世界って、
メイーナさん、貴女どんどん言い方がひどくなってますよ......
もうこの世界の女神って自覚、全くないでしょう、貴女。
「......まあでも。ないよりか、あった方が便利な事は認めるから、
これらはありがたく頂戴しておくよ、メイーナ!」
僕は一応の感謝をメイーナに述べ、メイーナ特製の武器、防具、
アイテムの詰まったマジックボックスをポケットにしまう。