67話・補欠の勇者
「ハァ...何を考えていたかは知らないけど、あれほど殺意を持つなって
忠告したのに...」
僕は消えていった貴族に対し、憐れみのこもった言葉を口から洩らす。
「ちょっと、シュン!」
佇んでいた僕の所へ、喫驚した表情のアミューが駆け足で近寄ってきた。
「何なの、その格好...!それにさっき言っていた勇者って、本当の事なの!?」
「あわわ...アミュー、少し落ち着いてよ~!?」
アミューが僕の両肩をガッシリと掴むと、上下左右に激しく揺らしてくる...。
――――――――――
「ふう...少しは落ち着いた?」
「てへへ...ごめんね、シュン。あまりの衝撃に、思わず取り出しちゃったよ♪」
アミューが微笑みながら、チロッと舌を出してくる。
「でも、そっか...シュンが勇者様か...」
「ま...補欠みたいなもんだけどね」
だって実際の所、僕って勇者召喚されていないわけだから...勇者と名乗っても
いいのだろうかと思うし...。
「しっかし、グリーン貴族を圧倒するなんて、補欠でも勇者って凄いんだね!」
うわ...勇者を語るアミューさんの瞳が、キラキラとしていらっしゃる...!
やっぱり、この世界の住人にとって、勇者の存在ってメイーナの...つまり、
女神の御使い様なんだな...。
それじゃ、僕の...勇者の次に取る行動は......。
僕は心の中で何かの決意を意にすると、門番の兵士達の方へと視線を向けた。
「ねぇ...門番の兵士さん......」
「はひいぃぃ――!?さ、先程の態度のなら、し、仕方がなかったんですっ!
仕方がなかった...だ、だから、お許しをぉぉぉ―――――っ!!」
「お許し下さい、勇者様!お、俺達みたいな下の地位じゃ、あいつら相手には、
逆らう事なんてできないんです!」
蒼井から視線を向けられた門番の兵士の二人が、真っ青な表情になり、その身を
震わせなが慌てふためきながら土下座をしてきた。
「そんなにビクつかないで下さいよ、二人とも。僕は別にあなた達を取って
食おうだなんて思っていませんから...。流石に、そこら辺の事情はわかって
いますので...」
「本当...ですか...許して...もらえるんですか?」
うわ、なんちゅう怯え方をしているんだ二人とも......。何もそこまで
怯えなくてもいいのに...。
いや、怯えるか...。何せ、目の前で一瞬にして三人も人が消え去ったワケ
だしな...。
「と、とにかく僕はあなた達に、グリーン貴族の本拠地はどこにあるかって、
聞きたかっただけなんで...」
「グ、グリーン貴族の本拠地を...ですか...?」
「ええ。それでそのグリーン貴族のトップがいる本拠地って、どこにあるのか...
知っていますか?」
「は、はい!あ、あいつらの本拠地は...ここから、数十キロ先にある
ゲットン町の中にあります!」
「ゲットン町...か。わかった...それじゃ、アミュー、ココ、今からちょっと
グリーン貴族を潰しに行ってくるから、ギルドに行くのは少し待ってね!」
僕はグリーン貴族の叩き潰しを宣言をすると、アミューやココに向けて
ニコッと微笑みを見せる。




