64話・グリーン貴族
「所でココ。アミューの方は上手く誤魔化せたかい?」
魔族の群れに向かう途中で、ココの頭の中に交信して僕がそこに
いない言い訳をしておいてっと、お願いしていたのだ。
「あ、うん。お兄ちゃんはトイレに行っているって事にしてるよ」
トイレ...か。でも、ここに戻ってくるまでの時間合計を考えると
ちょっとトイレの言い訳じゃ長すぎる様な気が...
...って言うか、絶対大きい方だと思われてるよね...?
「ああ、シュン!人が地道に並んでいる最中にいつまでトイレに
行っているの、いくら大きい方でも長過ぎだっていうのっ!」
アミューが並んでいる列から蒼井を発見すると、激おこした表情で
こちらを見てくる。
ちょ、アミューさん!大きい方なんて、お下品発言はやめてぇぇ―――っ!?
それにアミューの雄叫びのせいで、ここに並んでいる人達が僕の事を
ジロジロと見てくるんですけどぉぉぉぉ―――ッ!?
「うう、この視線...とてつもなく恥ずかしい...」
僕はこの視線を何とか退ける為に、必死に誤魔化す言い訳を考える...。
「ち、違うんだよ、アミュー!トイレが終わった後、この門壁って大きいなって、
ココと一緒に眺めていたから遅くなったんだよ!」
「門壁を眺めていたから...?そっか、そう言えばシュンって、今日ここに初めて
きたんだっけか?それなら、この門壁も珍しいかもね♪」
蒼井の必死の言い訳を聞いたアミューが、取り敢えずの納得をして相づちを
打つ。
ふう...これでなんとか、トイレ大のイメージを和らげる事ができたかな...?
「それでどうだい...?今日中に町の中に入れそうかい?」
「うん、ここまま行けば、後1時間くらいで町の中に入れそうだよ♪」
「そっか、それなら良かったよ!」
ま...もし入れなくても、もう魔族の脅威はないから、安心なんだけどね。
それからアミューやココと談笑する事、1時間が経過......。
「おお、やっと...次が私達の番だよ、シュン!」
「ああ...ここまで本当に長かったな...」
前の検問をしている人を見て、やっと中に入れると僕とアミューは
安堵感で胸を撫で下ろす。
...と、思ったその時!
「おい!そこのクソガキ三人組。俺達がそこに並んでやるから、ありがたく思って
さっさと、そこからどきやがれっ!」
突然、俺達の目の前に理不尽全開の言葉を吐いてくる三人組のおっさんが
現れた。
「ちょっと、そこの人達!割り込みはやめてもらえますか?この子達は
ちゃんと並んでここにいるんだから!」
「ああん、貴様...誰にものを言っているか!?俺達はあのグリーン貴族の
ダージリン一族の者だぞ!」
「逆らうっていうのなら貴様は元より、家族や知り合いがどうなるか
わかっていて、言ってるんだろうな...?」
「な、なんだと!?あ、あの...グリーン貴族の中でも、特に悪評高い一族
ダージリン一族っ!?」
「そのダージリン一族が何故...ここカトンにいるんだ...!?」
ダージリン一族と聞いて、門番の兵士達が喫驚した表情を浮かべて、油汗に
近い冷や汗を掻いている...。
「そう言う訳だから...クソガキ共、そこをさっさとどきやがれ!」
「断る!」
「な、何だと...?貴様、今...何て言ったんだ?」
僕の発した言葉が予想外だったのか、グリーン貴族がイラついた表情で
聞き返してくる。
「なんだ?見た目も畜生なのに、頭の方も畜生LVなんだな...?」
先程戦ったあの魔族と同様、僕は自分を有利に立たせる為...わざと相手を
怒らせ、冷静さを失わせる汚い口調を発する。
「ほう...中々、いい度胸をしているじゃねえかクソガキ?その度胸は
そこにいる女達の目の前だからか...?それとも、単なるバカだからか?」
「さあ...どっちなんだろうな?」
僕は見下した目線を送って、相手を挑発し続ける。
「くぉの...クソガキの癖に大人を小バカにしやがって...!」
「なあ、なあ、兄貴!もうこんな面倒くさい事はやめにしてよ、さっさと
こいつらを排除して、中に入りましょうぜ!」
「ふん...それもそうだな...。ただし、殺るのは男だけにしておけよ...
そこの女どもは金になるからな...」
「了解だぜ、兄貴!ゲヘヘ...そう言う事だからよ、覚悟してもらうか!」
貴族のしたっぱが下卑た言葉を吐きながら、ゆっくりと蒼井達のいる場所へ
近づいてくる。




