63話・メイーナは可愛いなぁ♪
「あ...お兄ちゃん、こっちこっち!」
僕の帰りを待っていたココが手招きをして誘導してくる。
「ゴメンね。ちょっと予想外の事が起こって遅れちゃった...ってどうしたの?
そんなにぷくって膨れっ面になって」
「膨れっ面にもなっちゃうよ!だって、ボクはお兄ちゃんの従者なのに置いて
いっちゃうんだもん!」
「そんなに怒らないでよ、ココ。相手の人数が人数だっただけに、ココを連れて
行くにはリスクが大き過ぎて...とくかく、この通り謝るからさ!」
頬を膨らませてプンプンと怒ってくるココに、僕は両手を合わせて謝りながら、
連れて行かなかった訳を話す。
「ううん、こちらこそごめんねお兄ちゃん。ボク...それをわかってて
意地悪を言っちゃったんだ。でも...お兄ちゃんがボクの見えない所で、
もしもって思ったら...いても経ってもいられなくなって...ぐす」
ココは自分が役にたたない事や、蒼井にもしもがあったらと思うと、
不安が募ったのか、その瞳からうるうると涙が溜まっていく。
「ほら...泣かないでココ。ボクはキミの笑顔を守る為に頑張ったんだから
そんな顔をされると、ちょっと悲しくなっちゃうよ...だから...ね♪」
僕はそう言うと、ココの頭に手を置いて優しく撫でる。
「ぼ、ボクの笑顔の......うん、わかったお兄ちゃん!こ、これで良いかな♪」
ココはうるうるした涙をバッと拭うと、口角を上げてニッコリした微笑みを
蒼井に見せる。
「うん...ココはその表情が一番似合ってるよ♪」
「そ、そうなの...?似合ってるかぁ...えへへ、そっかぁ~♪」
蒼井に誉められたココが恍惚な表情を浮かべると、身体をクネクネさせて
喜んでいる。
「あ...!シュン、突然で申し訳ないんですが...私はここで一旦、失礼させて
もらいますね!」
「そっか、それじゃまたね、メイーナ」
「ちょっとぉぉっ!?軽い!いくらなんでも軽過ぎますっ!前にも言いましたが、
女神でも泣くときは泣くんですからねっ!!」
メイーナが涙をうるうるさせて、蒼井の態度に猛抗議の言葉を投げ掛ける。
「はは...冗談だって、冗談!だからそんなに怒らないでよ。もう...本当、
メイーナは可愛いなぁ♪」
「ほへぇっ!?か、可愛い!?」
メイーナは突然言われた好意の言葉を聞いて、顔から火が飛び出す勢いで、
身体中が真っ赤に染まっている。
「本当に...シュンは油断も隙もないですね...。いきなりそんな言葉を発して
くるなんて...」
「いきなりは駄目だったかい?」
「そ、そんな事はありません...。寧ろ、もっと言って下さいっ!」
「う、うん...なるべく精進します...はは」
グイグイ来るメイーナに、僕が若干引き気味になってしまう...。
「こ、コホン...では、名残惜しいですが、この辺で―――」
「ちょっと、またあなたは勝手に入ってき―――」
メイーナが別れの挨拶をしようとしたその時、誰かがメイーナへ
話かけてくる声が蒼井の耳に聞こえてきた。
「はは...じゃ、またね!シュン♪」
そう言うと、メイーナの声が聞こえなくなった。
「今の声、一体誰だったんだろう?ま...いいか、後でメイーナに
聞いてみるか。それじゃココ、そろそろアミューの所に戻ろう!」
「うん!」
ココの頭に手をポンッと置いて蒼井がそう言うと、アミューがいる場所に
移動する。




