62話・シュン、カトンへ帰る
「そ、それで、そのグランキュード砲は、一体どうなったのですかっ?
その...姿がない様ですが、もしかして......!?」
「あ...うん。グランキュード砲は、亜空間の彼方に消えて行ったよ」
「ぐ、グランキュード砲までも...ですかっ!?しかも、それをたった1人で
やってのけるなんて...勇者様の力は、本当に凄まじい強さなのですね...」
蒼井の強さを目の当たりにしたロザリオが、目を丸くし冷や汗を頬に掻いて
驚きを隠せないでいる。
「さて...魔族も無事に討伐できた事だし、ロザリオさん...僕はそろそろ帰らせて
もらいますね♪」
「えっ!?ま、待って下さい!?それは困りますっ!貴方様は我が城をお救いに
なられた英雄っ!その恩人に何もお礼もなく返したとあっては、我が国と誇りが
汚れてしまいます!」
帰ろうとする蒼井を見て、ロザリオが待つよう必死に引き留める。
「そ、そんな事を言われても...僕もカトンに人を待たせているんで、
いつまでものんびりとここにいる訳にはいかないんですよ!」
「カトン...?」
「じゃ、そう言う事なので...ロザリオさん...さようならですっ!」
「ちょっと、お待ち下さい!シュン様ぁ~!―――キャアッ!?」
その場を去ろうとする蒼井の肩をロザリオが掴もうとした瞬間、
物凄い速さで蒼井が空中高く飛んで行った。
「し、シュン様がそ、空をお飛びに...!?もしかして...シュン様は
勇者様以上の存在なのでは......!?」
天を仰ぐ様に上空を見ているロザリオが、消えていったシュンの事を
ドキドキした恍惚な表情でボーッと見ている。
――――――――――
「ふう...あの数の魔族やグランキュード砲を見た時、どうなる事やらと
思ったけど、流石メイーナのアイテムだね!何とかなるってLVを凌駕していたよ!」
「当たり前です!あの程度の魔族が、私のアイテムに敵う訳ないじゃないですか!
LV1がLV1000に向かって戦った様なものですよ...♪」
メイーナがドヤ顔全開で、自分のアイテムたちをこれでもかって言うくらい
自慢してくる。
「あ...でも、あの魔族の隊長には結構、苦戦してたよね...♪」
「う...それはあの時も言いましたが、自動「防御」で攻撃じゃないから...
その証拠に、剣の必殺技は見事に決まっていたでしょう!」
ああ...確かにメイーナ・ブレードから放たれた技は、ジャッジメント・サンダーを
避けていたあの魔族の隊長を、思いっきり吹っ飛ばしていたっけ...。
「しかし...防御とは言え、あの程度の魔族に避けられるとは...これは大幅な改良を
しなきゃいけないようです......さぁて、どう改造してやろうかしら...うふふ♪」
メイーナが蒼井に聞こえない声でそう呟くと、目を輝かせて何かを企む様な不適な
微笑みを浮かべている。
メイーナとそんな感じの会話を続ける事、数十分後......。
「お...見えた見えた、カトンの壁が...!よし、あの裏側に降りるとしますか...」
やっと辿り着いたカトンの門...少し離れた人から見えない死角にスッと降り
立った。




