59話・黒い雷
「さて...魔族討伐も無事にすんだし、アミューに気づかれる前に帰ろ――」
「な、なんだ、これは!?なんで、魔族達が全て倒されているんだっ!?」
僕がカトンへ帰ろうと足を動かしたその時、背後の方から誰かの声が
聞こえてきた。
「ろ、ロザリオ隊長!見て下さい!?あ、あそこに誰かがいますよっ!?」
ロザリオ隊長と呼ばれた人物の横にいる騎士が、こちらを指差して
叫声を上げる。
「あそこ......!あ、確かに誰かいますね...。おぉぉいっ!そこにいる貴様!
貴様は一体、何者なんだ!見た所...どこかに所属している騎士のようですが...?」
なっ!き、貴様...!?初対面の相手に対し、いきなり貴様呼ばわりですか...っ!?
「なぁ...メイーナ。あの物凄く失礼な連中...一体、誰だかわかる...?」
僕は相手の態度の悪さにブスッとした顔になり、あの連中が何者なのか、
メイーナに聞いてみる。
「あいつらですか...?あいつらの掲げている旗印を見るに...先程、魔族が
攻める予定とか言っていた『クランチ城』の連中みたいだね?」
ああ、言ってた、言ってた!僕が守ろうとしたカトンじゃなく、本当はその
城を攻めるはずだったんだっけ?
「お、おい、そこの貴様っ!ロザリオ隊長が質問をしていらっしゃるんだぞ、
黙っていないで、さっさと質問に答えんかっ!」
うわ...こいつも貴様呼ばわりしてる...。
「それに黙っていないで答えろ...だと、こいつら...本当に失礼で不愉快な
連中だなっ!」
こっちの世界の騎士って、こんなに程度が低く礼儀がなっていないのか...?
命令するかの如く、乱暴な言葉を投げかけてくる騎士に対し、蒼井が苛立つと
同時に、眉間に浮かんだ青筋がピクピクと動く。
そんな考えを頭に浮かべていると、未だに自分達の質問に答えない僕に
苛立ったのか、騎士の一人がズンズンと足音を立ててこちらへ近づいてくる。
「き、貴様!いい加減に答えんと、その首を叩き落と―――ギャアアァァッ!!」
何も答えない蒼井に我慢ができなかった騎士が剣を抜いたその瞬間、騎士の頭上へ
黒い雷が降り注ぎ、騎士の姿が消し飛んだ!
「な...ジルリがいない...?ま、まさか、今の雷で死んでしまったのか...!?」
その場にいたはずの同僚の姿を探す騎士だったが、しかしどこを見渡しても、
その姿は見当たらない。
「え...今の雷って、金剛石のジャッジメント・サンダーじゃないよな...?」
確か、ジャッジメント・サンダーの雷の色って白いけど、今の雷は
黒かったし...。
「今の雷は私ですよ、シュン!」
「や、やっぱりメイーナだったのか!」
「だってこの劣化種め、シュンに罵倒しただけでも万死に値するのに、
首を落とすだと...そんなの絶対に許すマジだぁぁぁ―――っ!!」
メイーナは拳をブルブル震わせながら、当然の報いだと言わんばかりに
叫声を荒らげて怒っている。
「はは...流石は本家の裁きの雷だな...。金剛石の発動より早いだなんて...
でも、ここまでの清々しい判断は少し見習う所があるよな...」
僕は金剛石の腕輪を撫でながら、先程の魔族との戦いで判断ミスした事を
思い出し、乾いたニガ笑いが浮かんでくる。
「く、くそ!ロザリオ隊長、い、今の雷はあの鎧野郎の仕業なのでは...
...って、ロザリオ隊長!?どうしたんですか?顔が真っ青ですよ!?」
「ま、まさか...まさか、まさか、まさか!今の黒い雷はまさか......っ!?」
「ロ、ロザリオ隊長ぉぉ!ま、待って下さいぃぃ~!」
そう言うが早く、ロザリオ隊長が蒼井の方へダッシュで駆け出して行き、
その後を横にいた騎士も遅れながらついて行く。




