55話・え...勘違い?
「うわ、ビックリした!突然、大声を出すのやめてくれるかな?」
「う、うるさい!こんな光景を見せられれば、誰でもこんな声になるわ!」
ナックがかざした手の先に見えるのは、無惨に白い球体へと吸い込まれていく
魔族達の姿だった。
「き、貴様は一体、何者なんだ!どうしてこんな事をする!」
「イヤ...するでしょう。こっちだって、あんたらの逆恨みで町を攻撃されて、
滅びたくなんてないし...!」
「町を滅ぼす...?な、何を訳のわからん事を抜かしてやがる!」
「とぼけるな!あの魔族の仇を打つ為、こんな大袈裟な軍隊を引き連れて、
更に魔導兵器まで持ち出して、カトンの町に攻め入ろうとしていた癖に!」
しらばっくれるこの魔族に向けて、僕は人差し指をビシッと突き出すと、
叫声を上げて抗議の言葉を投げかける。
「あの魔族に、カトンの町...?嗚呼、確かジャッカを偵察に出していた場所が
そんな名前だったな...。だが、あの町に攻め入る計画なんてないぞ...?」
「ハァ...!?攻め入る計画がない...?だってお前達は、ジャッカとか言う魔族の
仇を血眼で探していたんじゃなかったのか!」
え...ど、どういう事?こいつ、嘘を言っている様には見えないぞ...!?
「血眼で仇打ち?何故、下っぱ風情の為にそんな面倒な事をせねばいかんのだ!
お前ら下種じゃあるまいし...!」
ええ...!本当にどういう事なの!?こいつの話を聞く限り、メイーナが言っていた
魔族がカトンを襲うって話と、全く違うんですけどっ!?
「ちょっと待っててもらえますか、魔族さん...すぐ済みますんで......。
おい、メイーナ!これは一体どう言う事なのかな...?何かメイーナの
言っていた事と全然違うんですけど...!?」
「あ、あれ~おっかしいなぁ...?こいつらの事だから、てっきりあの町を
襲うとばかり思っていたんだけど...」
魔族の予想外の言葉を聞いたメイーナも少し困惑した言葉を発し、ハテナ顔を
している。
「ええぇ――ッ!?それじゃ、メイーナは確証なしで魔族が攻めてくるって
言ったわけなの!?」
「テヘペロ♪」
テヘペロじゃねぇぇ―――――ッ!!
じゃあ僕、ここに来損じゃん!あれだけカッコつけたのにめっちゃ滑稽じゃん!?
「お、おい、貴様っ!い、今...メイーナとか言わなかったかっ!?」
蒼井の口から発されたメイーナと言う言葉を聞いた魔族が、目を丸くし
こちらを見てくる。
「ハッ!そ、その胸に刻まれた紋章は、ま、違いなくメイーナの紋章っ!?」
「ね...シュン、さっきからこいつ、私の事を呼び捨てにしているんですけど、
この世から完全に亡きモノにしたいんですけど......と、言うことでシュン、
さっさとこの魔族を亡きモノにして下さい!」
そ、それだけで!?呼び捨てにされたってだけで、亡きモノにですかっ!?
メイーナさん、それはいくらなんでも魔族の事、嫌い過ぎでしょうっ!?
「あれ...?そう言えばメイーナって、ココを殺そうとしたあの魔族は
片付けたんだよね?正直、こう言う事はあまり言いたくないんだけど...
どうしてこいつは殺らないんだ?」
僕はこの素朴な疑問をメイーナに聞いてみた。
「私達女神って、基本...自分の管轄外の人物には干渉してはいけないって
ルールがあるのよ...。あ、シュンはこっちの世界の住人じゃないから、
そのルールからは例外だよ♪」
「干渉してはいけない...?だったら、何であの魔族には干渉したんだい?」
「だって、あのクソ魔族...シュンの事をあんなに悲しませやがって...!
だから、この私が直々に引導を渡したかったんだ...。まあ、そのせいで
この後...何かの謹慎処分を受けちゃうのは確定なんだけどね...はは...」
「き、謹慎処分!僕のせいで...その...ゴメン、メイーナ!」
僕はメイーナに精一杯の感謝の念を抱き、そして謝罪の言葉を口にする。
「いいのよ、私の赴くままに行動した結果だし...後悔もしてない...。だから、
そんな顔をしないの!」
「うん...。ありがとう、僕やココの為に...怒ってくれて!」
本当...メイーナには、感嘆の念しか思い浮かばないよ!
「はは...その笑顔を見れただけで、この後の謹慎も辛くなくなったよ♪」
まぁ...それに、一応、逃げ道は作っておきましたから、悲壮感に浸る必要は
ないんですけどね...♪
メイーナが蒼井に聞こえなくらいのか細い声で、ニヒヒと微笑むを浮かべる。
「まぁ...そんな訳なので...サクッとその魔族を殺っちゃって下さい!
こんな兵器を用意してる連中です...どうせ、どこか別な場所を襲うつもり
だったんでしょう...」
「だろうね...。じゃなきゃ、こんな大がかりな軍団なんか引き連れやしない
だろうからね!」
僕はメイーナの言葉を肯定すると、目の前の魔族に剣を構えて、身構えるの
だった...。




