51話・魔導兵器グランキュード砲
「ん...?よく見ると、あの黒い箱の周りに何か黒い塊の様な物が見えるな...?
イヤ...あの塊は...沢山の人だかり...なのか?」
南南西の方角に沢山の人だかり...じゃあ、あれがメイーナの言っていた、二百人の
魔族っ!?
うわ...思っていたより、かなりの人数じゃないか...!
「しかし、あの大きな黒い箱...どこかで見た様な気が......?嗚呼、思い出した!
くそ、魔族どもめ!そういう事ですかっ!」
「え、何々!?もしかして、あの黒い箱の正体が何なのかわかったのっ!?」
「ええ...あの黒い箱...あれは間違いなく、魔導兵器グランキュード砲っ!」
蒼井の問いに対し、メイーナは困惑な面持ちになって、答えを述べる。
「魔導兵器...グランキュード砲?それがあの黒い箱の正体なの?」
「ずっと前にだけどさ、あの兵器を1度見た事があるんだよ...。だから多分、
間違いないはず!しかしあの魔族達め...中々に厄介な物を持ち出してきたもの
ですね...全く!」
た、確かに、グランキュード砲って...名前からして、かなり厄介そうだもんね...。
それに、いつもあっけらかんとしているメイーナが、こんなに困惑している
くらいだし...
これはめっちゃ、厄介LVが高い予感がする...。
「そっか...あのグランキュード砲って、そんなに厄介な代物なんだ...!?」
「ええ...かなり厄介ですよ、何せあの兵器はですね、シュン。魔力を糧に起動する
破壊兵器なんですから!」
「魔力を糧に起動...?それじゃ魔族があれだけ集まっているのは、あの魔導兵器に
魔力を注ぐ為になのか?」
「多分、そうでしょうね...。チッ...魔族どもが、本当に面倒な事をしてくれて...」
メイーナが面倒そうな声でそう呟くと、軽い舌打ちをかます。
「でもさ、こう言っちゃいけないのかもしれないが、あんな兵器を使わず、
あの魔族全部で直接攻めた方が、手っ取り早いんじゃないのか?それなのに、
何で魔族はそんな面倒をするんだ?」
僕は少し疑問に思っていたこの事を、メイーナに聞いてみた。
「ああ、シュンは魔法防壁の事を知らないんでしたね?」
「魔法防壁?」
「シュンも見たと思いますが、カトンの周りを囲んでいたあの壁の事ですよ!」
「カトンの囲んでいた壁...あの壁がその魔法防壁ってやつなのか?」
僕の質問に、メイーナが魔法防壁の詳しい説明をしてくれた...。
魔法防壁...あの壁には、物理攻撃や魔法攻撃を弾く魔法がかけてあるらしく、
相当な腕の持ち主じゃないと、ビクともしないらしい...。
「じゃあ、空からは攻撃されたら駄目じゃん!」
...と言う僕の疑問に対しては、
魔法防壁は見た目は壁だけど、実際はあの魔法防壁からオーラの幕が
町全体をドーム状で包み込んで守っているらしい。
「なるほど...メイーナの説明で魔法防壁の事はわかった。じゃあさ、
魔導兵器ってやつの攻撃も、魔法防壁には効果がないんじゃないの?」
「それが効いちゃうんですよ。あの魔導兵器って...魔力を圧縮して打ち出す
破壊兵器でして、その圧縮が二百人分の魔力なら、恐らく魔法防壁の効果を超える
攻撃のはず...なのでカトンは、魔法防壁ごとキレイに吹っ飛んじゃうだろうね...」
「そ、そんなに威力があるの...あの魔導兵器って...!?」
メイーナの神妙な面持ちで語る、魔導兵器の威力に僕は喫驚し、額から汗が
じわじわとあふれ出す。
「そんな威力じゃ、このメイーナの装備やアイテムを使っても、あの魔導兵器の
前には、手も足も出ないんじゃないのか?」
「え...?シュン、あなたは何を言っているんですか?いくら威力があろうとも、
所詮は魔族風情が作った物ですよ...。そんな物如きで、この女神メイーナ様の
作った物が負けるはずないじゃないですか!」
メイーナは、声だけでもわかるくらいのドヤ顔をし、ひっくり返るくらいの
ふんぞりで自分の作った装備やアイテムを自慢してくる。