478話・竜神山
「やれやれ......今からガドライド達との決戦だというのに、ホントあいつは
お気楽な性格だな。少しは緊張感を心に持て、馬鹿者めがっ!」
後先考えず、竜人族の里に向かって突撃していくニーズに、ヌーザが軽く
嘆息を吐き愚痴をこぼした後、ヌーザも背中に羽根を生やし、上空へと
上空し、ニーズの後を追い掛け飛んで行く。
「ち、ちょっと二人とも、僕を置いていっちゃ駄目だよ!?僕、竜人の里の
ある場所を知らないんだからっ!」
僕をその場に置き去りにし、さっさと先に行ってしまうニーズとヌーザに
ビックリすると、慌ててメイーナシリーズを装着して空に飛び上がり、
そして二人の後を追い掛けていく。
それから何とか無事にニーズ達と合流した僕は、二人に軽い説教をして
僕を置いていった事への反省を促す。
――そしてしばらく空を飛ぶ事、幾数時間後。
僕達は山だらけの場所に辿り着く。
「あ!見て見て、シュン君!ほら、あそこだよ!あそこっ!あれに見える
大きな山こそが、私達竜人族の里がある『竜神山』だよ!」
ニーズの指差す方角に目を移すと、そこには言われた通りの大きな山が
聳え立っており、その中心部分には城壁らしきものが山と山をグルッと
一周、囲むようにして作られていた。
「うわ、でっかい山だな!」
ザッカの町がすっぽり入りそうだ。
「あの大きな山の中にニーズ達の住む里のあるんだ?それで、ニーズ。
キミ達の里には、一体どうやって入るんだい?」
「えっと、それはね。あの城壁の...ほら、あの場所!あそこのずっと右奥に
大きな門があるんだけど見える?」
ニーズが城壁右方向の数十メートルくらい離れた場所...そこに向かって
指を差す。
「......ん、大きな門?どれどれ?ああ...確かに、ニーズの言うあそこの城壁の
少し右離れの場所に大きな門らしきものが見えるね!ひょっとして、あれが
ニーズ達の里に入る為の出入り口なの?」
僕はニーズの指差した方角に向かってジィィーと目を凝らし良く見てみると、
そこには言われた通りの大きな門らしきものが目に映ってくる。
「うん、そうだよ!あの大門を通って、しばらく奥に歩いて進んで行くと、
そこに私達の住む里や、ソニア姫様が住んでおられたお城があるんだ!」
「あの大門をくぐった奥に......か」
しかしあの大門。
結構な数の兵士達が配置されているな。
それにあの城壁の所々に見える無数の窓から兵士達が見張っている。
これは中々厄介で難攻不落そうだ布陣な。
じゃあ、あの兵士達を無視して城壁を砕いて中に入るか?
...いや、駄目だな。
だってあの城壁の構造を見るに、恐らくはあの城壁、柱の役目も担って
いそうだし、
だからもしあの城壁を砕いたら、そのせいであの山の上部分が崩壊する
可能性が大きい。
もしそうなった場合、倒す敵以外のソニア様や市民まで被害が広がるのが
目に見えてくるしな。
僕は目の前の大きな山、その山と山の中央をグルッと一周してピッタリ
ガッシリと防御をしている城壁を見て、それを視野に入れる。
「......さて、あの布陣。どうやって突破し、中に侵入すればいいんだろうな?」
僕は首を傾げてしばらく悩んだ後、ニーズ達に顔を向ける。




