427話・ドラゴンを追う、シュン
「あ、あれは...あの姿は間違いなく、俺達竜人族の奥義、竜神化の
強化型...竜神・二段の化!?」
おのれぇぇぇ!おのれぇぇぇええっ!!
なんであいつだけがぁぁぁ!あいつだけがぁぁぁぁぁっ!!
くそぉぉ、くそぉぉぉぉっ!!
ニーズから放たれている圧倒的オーラを目の当たりに、ザケナイは
先程まで見せていた余裕の笑みなどスッカリと消え去り、代わりに
その表情には悔やしさと怒りの入り混じった怨嗟の念を浮かべ、
そして震える唇を上歯でグッと強く噛みしめて抑え込む。
「さて...時間もあんまないしさ、速攻で行かせてもらうっ!」
『竜神の加速ッ!!』
ニーズが腰を静かに落として身構え、背中の羽根を大きくバッと広げた
瞬間、ニーズの姿がザケナイの視界から消えていなくなる!
「なっ!?き、消えたっ!?ニ、ニーズの動きが全く見えなかったっ!?
チィィィッ!ど、どこだぁぁぁ、ニーズゥゥゥッ!どこに消えや――」
目の前から一瞬で消えたニーズの姿を見つけようと、ザケナイが周囲を
キョロキョロと見渡していると...
「あれれぇ?一体どこを見てるのかな、ザケナイ君?私はここだよぉ、
こ・こ・♪」
「ニ、ニーズッ!?」
ニーズの声のする方角に慌てざまでザケナイが顔を向けると、そこに映るは
グララの下で口角を上げ、ニヤリと微笑んでいるニーズの姿だった。
「う、嘘だろ...!?い、一瞬でこの距離に......そんなっ!?」
動揺で動きをとめる、ザケナイのその隙を狙って...
「うりゃさぁぁぁあっ!」
ニーズは遠心力をフルに使ったアッパーパンチを繰り出し、グララの
下顎を思いっきり叩き殴った!
「グァッギャァァァ―――――ッ!!」
ニーズの全力アッパーパンチを食らったグララは、雄叫びを上げながら
大きな弧を描き、遠く遠くへと勢い良く盛大にぶっ飛んで行った!
「グ、グララァァァッ!!」
自慢の愛竜グララを救出する為、ザケナイが急ぎ慌ててその後を
追うとするが...
「おっと、一体どこに行こうとしてんのかしら、ザゲナイ君♪」
ニーズがザゲナイの前に素早く回り込み、その進行をとめる。
「ぐ...こ、このぉぉ......俺の邪魔をするんじゃねぇ、そこを退けぇっ!」
グララの救出をニーズに邪魔され、ザケナイが顔を真っ赤にして怒りを
露にして拳を震わせながら叫声を上げる。
「ねぇ、シュン君。今吹っ飛んで行ったドラゴンの後処理...頼んでも
いいかな?」
だが、そんなザケナイを完全に無視して、ニーズが蒼井いる方角に顔を
向けると、先程ぶっ飛ばしたドラゴン...グララの後始末を頼む。
「おう、わかった。あのドラゴンは僕に任せておけ!」
ニーズの頼みに対し、蒼井が右腕を前に突き出して満面の笑みを見せると、
了解と言わんばかりのサムズアップをビシッと決めた。
そして僕はココに...
「少し早く飛ぶから落ちない様に、しっかり掴まっているんだぞ、ココ!」
...と、声をかける。
「はい。ボクの方はいつでもオッケーですよ、お兄ちゃん!」
蒼井の言葉にコクンと頭を下げてそう述べると、ココが蒼井の身体に
回していた両腕にギュッと力を入れる。
「それじゃ、ニーズ。そっちの方はキミに任せたからな!」
僕はニーズに向けてビシッと敬礼を見せると、先程ニーズによって
ぶっ飛ばされたドラゴンの後を追うべく、急ぎその方角へと飛んで行った。




