426話・竜神・二段の化
「だぁ!もうっ!また攻撃を無効化された~っ!ホント何なのさ、
あの武器は!竜神化の攻撃を弾き返すなんてぇぇっ!」
快進撃の一撃だと思われたニーズの攻撃を、いとも簡単に打ち消して
しまったザケナイの持つ武器に、ニーズが地団駄を踏んで悔しがる。
まぁ正確には、シュン君にも私の竜神化による攻撃が効かなかったっていう
例もあるちゃあるけどさ。
でもあれは、シュン君が使用していた武器や防具がメイーナ様の作成した
アイテムだったからであって、私の力が云々と言うレベルじゃないもん!
だからシュン君の場合、効かなかった通じなかったカウントには入らないと
思うんだ!
うん、そうそう!あれはレア中のレアな相手だったっ!
なので、シュン君はノーカウントですよ!ノーカウントッ!
はっ!?
ち、ちょっと待って......
じゃあ、何っ!?
ザゲナイが持っているあの武器......あれって、メイーナ様の作った武器と
同格レベルかもしれないって事なの!?
ニーズがふと気づく、竜神化をいとも容易く無効化させてしまった、
あのザゲナイが持つ謎の武器に...
そしてその破格な性能に信じられないといった表情で、ニーズが両目を
白黒させてしまう。
う...こ、これは不味いな。
うっかり判断をミスったりでもしたら、あいつにやられちゃう可能性が
あるって事か...
くそう!それはなんか癪に障るなぁ...
「ふう...こうなったら仕方がない。少々危険だけど、あの武器を相手に
するには『あの技』を使うしかないか......」
正直いって、この技はまだ完璧には取得できていないから、あんまり
使いたくはないんだよなぁ...
だってさ、使用後はめっちゃ弱体化するし、身体の倦怠感が激しいし。
でもあの武器を抑え込むには、この技を発動させるしか方法がないいねぇ。
それにこんな所でいつまでのチマチマ時間を取られていたら、亜人達の
救出が遅れちゃって、シュン君に悪い印象を与えかねない...
うう...そ、それだけは何としても避けたい事案!
うっし!ここはシュンの信頼を得る為...そしてソニア王女様の為にも
頑張って、もうひとふんばりしますかねっ!
すぅぅぅ~~はぁぁぁぁ~~~。
「さぁっ!覚悟は決まったぁぁっ!いっくぞぉぉ、私ぃぃぃぃっ!!」
ニーズが深い深呼吸をして、ある技の発動に踏ん切りをつけると、ニーズは
腰を落としてどっしりと身構え、そして両の腕を技起動の為の場所に構える。
「なっ!?あ、あのニーズの構え、ま、まさか『竜神・二段の化』っ!?」
い、いや...ありえねぇぇっ!い、いくらあいつでもその技を使えるわけがねぇっ!
その技はな、選ばれし者...竜人族のエリートのエリートのみが使えるとされる
究極の奥義だぞっ!?
あの天才ガドライド様や知性の塊コールレインでさえも使えないんだぞっ!?
「それを...それをお前ごとき、ソニアの腰巾着が使える筈がな―――――」
『発動しろ!竜人族奥義ぃぃっ!竜神・二段の化ぁぁぁぁぁっ!!』
ザゲナイの妬み声を掻き消すようにニーズが叫声を荒らげ、気合いを最大に
込めると、究極奥義...『竜神・二段の化』を発動させる!
すると、ニーズの身体の周りにバチバチと唸るオーラがほど走り、頭の生えている
二本の角が、背中の羽根が、そして尻尾が、少しずつ大きくなっていく。
うぐ...こ、こいつは...中々キツイ......な......身体が軋んで痛い......
「でもさぁぁぁぁっ!!」
軋みで痛みを訴える身体を懸命に抑えつけ、ニーズが更に気合いの叫声を
荒らげ...竜神・二段の化を完成へと向かわせる!
そして...
「ハァ...ハァ...ハァ...ぶ、無事に変化完了!どうだ、ザゲナイ!これが...
これこそが...竜神化の強化形......」
『竜神・二段の化だぁぁぁぁぁぁっ!!!』
ニーズが天に向かって猛々しく咆哮すると、それと同時に空気をドンと
叩く様な大きい重低音が周囲一帯に鳴り響く。




