411話・ここは私が食いとめます!
「取り敢えず、歩けるスピードでいい。急いでこの場を離れ、迷いの森の
出口に移動するぞ!ここでジッとしていたら、ドラゴンの餌行きになるのは
確実だしな!」
ソングは周囲で休んでいる亜人族達に顔を向け、急ぎここから離れようと
声をかける。
「そ、そうですね!そういう事だからみんな、ここにいたらドラゴンが
やって来て大変な事になるの。まだ身体の疲れは取れていないでしょうけど、
急いでこの場所から離れるわよ!」
ソングに続いてウインも亜人族の仲間に、キツイだろうけどもう少しだけ
頑張ろうと激を飛ばす。
「わ、わかったよ、お姉ちゃん...ぼくもドラゴンの餌なんて絶対に嫌だよ!」
「だね。お兄さんやお姉さんの言う様に、ここから離れないと死んじゃうし...
一緒に連れていって!」
「わ、私達も死にたくない...だからなんとか頑張って身体を動かしてみる!」
「お、おれだって、やっと自由になれそうなんだ。こんな疲れでそれを
オジャンになんかしてたまるもんか!」
ソングとウインの言葉に、他の亜人族のみんながそう返事を返すと、
疲れきっている身体を無理矢理動して、ゆっくりだがその場を離れていく。
それからソング達は疲れている身体を頑張って動かし、ドラゴンの雄叫びが
聞こえた方角...その反対の道を選んで早歩きながらも懸命に逃げていくのだが...
「グギャアァァァァァ―――――――ンッ!!」
「く、くそ...逃げても逃げても、雄叫びの大きさが強くなってくる!
なんで、あのドラゴンこっちに向かってくるんだ!?」
「これは僕の考えなんですが、ドラゴンは恐らく僕達を攻撃する為に
向かって来ているんじゃないと思うんです!」
「は、それはどう言う事なんだ?」
ソングが竜人族の少年の述べる言葉に困惑していると...
「さっきのドラゴンが出していた悲鳴な雄叫び...あれは何かのダメージが
原因で、きっとその痛みで暴走しているからだと思います!」
近くを歩いていた先程の竜人族の少年が、神妙な表情で自分の思考した
可能性をソングに伝えてくる。
この少年が言うにはこういう事か?
迷いの森の出口がある方角...つまりここに、ドラゴンの奴が一直線に
我を忘れて暴れ狂い突進して来てるって事か...
「クソ...なんてこった」
運がないにも程がある!女神は俺達に恨みでもあるのか!?
「く...こ、こうなったら仕方がありません。私がここに残ってドラゴンの
進行を防御魔法で阻止し、何とか時間を稼いでみせます!だ、だからその間、
ソングさんは他のみんなを連れて出口の方へ急いで逃げて下さい!」
ウインが急にその場に立ち止まると、真面目な表情でソングにそう嘆願すると、
気丈な笑顔でニコッと微笑む。




