4話・意外な展開
「え...今、何て言いました?」
「だから、ギフトは要りませんっと言いました!」
「......その意味、分かって言っていらっしゃるのかしら?」
「ええ...勿論ですよ。さっき光牙院君達の話を聞いていましたから」
そう...神託の儀を断ると何の力も得られず、どこかわからない所へ飛ばされて
裸一貫で、始めなきゃ行けないって事を。
「何故なんです?確かに半ば強制に近い申し出だったかもしれませんが、
しかし神託の儀を受けてギフトさえ授かれば、あの世界では英雄として
扱われ、生きていくのに何の苦労もしないで済むのですよ?」
確かにそうだろうね。
そして恐らく、召喚先は女神様の送り出す先だから、きっと安全な国なんだろう。
そんな国だから、全力で僕らをサポートしてくれるだろうし、住も食も金の方も
何の不自由もしないと思う。
でもさ...それだとさ、多分自由がなくなっちゃうじゃん。
それに魔王討伐の他に、国との戦争に巻き込まれる可能性も否めない。
そんなのは絶対に嫌だよ!
僕は今から行く世界をまたにかけて冒険したいんだ!
それを得る結果、例え何の力も得られずともいいっ!
だから僕は迷いなく、こう答えるのさ......
「......それでもです!それでも僕は、そんな力よりも自由を選びますっ!」
僕は女神様の顔を真剣な表情で見て、力強い声で自分の言葉を発する。
すると、
「く...くく.........くくく♪」
「――へ?」
「そっか、そっか~♪あははは♪いい、ホントいいよ、キミ!まさかその
答えを出す子がいるなんて、ビックリだよ♪」
突如、女神様が先程までの神々しい表情を崩してケラケラと笑い出す。
「その喋り方......そ、それが女神様の本当の素なんですね?」
「へえ...驚いた。その事であんまり驚かないんだ?」
「まあ...何となく女神様からはそんな感じのオーラが滲み出ているのを
感じていましたから......」
光牙院君と話をしている女神様を見た時、そう感じたけど、
どうやらやっぱり、あれは演技だったようだ。
「ええ、おっかしいなぁ~?これでも頑張って神々しさを演出していた
つもりなんだけどなぁ~!」
女神はポリポリと頬を掻き、何故バレたという顔で不思議がっている。
「それより、キミ。本当にいいんだね?本当の本当にギフトなしでも?」
「ハイ!」
「ほう。迷いのない返事だね。うふふ............合格ですっ!」
「―――え!?」
突如、女神様から告げられる合格の単語に、僕は目を丸くしてしまう。
「ご、合格って...一体なにが合格なんですか??」
「うふふ♪それはね、私の贈るギフトの中でも、もっとも最強のギフトを
授けるに足るかどうかのテストに...だよ♪」
「さ、最強のギフトを授けるテストに......ご、合格ですか!?」
それって、どういう事なんだ?
確かに僕、ギフトはいらないって答えたよな?
な、なのに何でその僕が、最強のギフトを授かるって話になっちゃうんだ!?
意味がわからずに混乱している僕に、女神様が言葉を更に続けていく。
「実はね。この神託の儀の本当の意味は、今のキミの様にギフトを否定して
までも自由を望む、そういう人物を選定する場だったのさ♪」
「じ、自由を望む人物を選定するって...ちょっとそれ、おかしくないですか?
だって女神様のこの神託の儀って、今から行く世界で魔王を倒して欲しいから
なんでしょう?」
「ふん、自分が英雄になりたいから、苦労したくないから、助かりたいから、
そんな保守の為に勇者になる奴なんかに、世界を背負って生きていく度量が
ある訳ないわよ!」
女神様の表情が、まるで今にでも地面へ唾を吐き捨てそうな顔になっている。
「そ、それを言うなら、自由を得たいって理由の方が軽い気持ちだし、
世界を背負うなんてできる訳がないと思うんですけど!」
「くくく...これが面白い事にね、自由をなんていう人物の回りには
自然と団結の輪が出来て、そしていつの間にか世界の中心になっちゃって
いるんだよねぇ。ホント不思議だよねぇ♪」
「......と、言う訳だから、さあっ!人族の女神こと...メイーナ様の送る、
最強最高なギフトをその身に刻みなさいっ!」
「い、嫌だぁああっ!今の話を聞いたら、それを受け取ってしまったら、
絶対に自由がない予感が――――はぐッ!?」
「うふふ...逃がしませんよ♪」
僕がそのギフトを拒否する為、その場から急ぎ逃げ出そうとし、後ろを
振り向いた瞬間、女神メイーナ様に後頭部を鷲掴みにされ、そしてギフトを
強引に授かってしまうのだった。




