395話・みんなで見送り
「もう!なんか、お兄ちゃんもみんなも忘れているみたいだけど、
奴隷紋はボクにしか消せないんだよ?なのにボクを置いていって
どうするんですか!」
「あ!そう言えば!?」
「そ、そうだった...連れ去られたみんなもわたし達みたいに魅了の
チョーカーをつけられている可能性が高いですよね。仕方ない...
それじゃお姉さま、みんなの事はお姉さまに託しますね!」
ココの言葉にファニが納得すると、頭をペコッと下げてゆっくり
蒼井から離れていく。
「ではみんな、今から子ども達をちょちょいと救出してくるからね!」
みんなに向けて笑顔でそう述べた後、パチンとウインクする。
「行ってらっしゃい、シュン様、ココちゃん!どうかお気をつけて!」
「日が暮れる前までには帰ってくるんだぞ!じゃないと夕御飯抜きに
しちゃうからね!」
蒼井の笑顔にルビもニコッと微笑みを返し、その横にいるアミューも
子どもの様な意地悪を述べつつも、同じくニカッと笑顔をこぼして
蒼井達を見送る。
「あはは...それは早く帰らないといけないか...なぁ、ココ♪」
「うん...そうだね、お兄ちゃん♪」
アミューの約束ごとを破らないようしなきゃと、蒼井とココが
笑顔を向かえ合う。
「じゃあ、ロキさん。良い吉報を持って帰るからね!」
「はい!期待してお待ちしています!ですが、無理は絶対にしないで
下さいね、ココ様、シュン様!」
「気をつけてね、シュン様、お姉さま!どうかみんなの事...お願いします!」
「お姉さま、お兄さま!頑張ってみんなを助けてあげてね!」
「姉さまもシュン様もケガひとつなく、無事にちゃんと帰って来るんだよ!」
ココの挨拶に、ロミ、ティとファニ姉妹、スイネットが蒼井とココの二人に
期待と希望...そして心配の入り混じった表情で見送る。
「よし...それじゃ、ココ。移動中は結構スピードが出るから、地面へ
落ちないよう、僕の身体をしっかり抱きついているんだぞ!」
「落ちないよう......こ、これで...いいかな、お兄ちゃん?」
蒼井の指示に、ココがコクンと頭を下げて返事を返すと、蒼井の胴に
両腕をグッと回し込み、密着する様に力強く抱きしめる。
「あ...ココちゃん、ズルい。それは抜け駆けだぞ!」
「う、羨ましいですわ、ココちゃん...」
蒼井にギュッと抱きついているココを、アミューとルビが羨望の眼差しで
見ていた。
「さてっと、ナヒの言っていた方角は...こっちの方、だったよな?」
そんなアミュー達の目線に気づく事なく、ココがしっかり抱きついたかを
確認すると、ナヒの示した方向へゆっくり身体を向ける。
そして、空高く飛び上がろうとした、その時...!
「ちょっとぉぉ!シュンくぅぅぅん!ストップ、ストップゥゥゥッ!!」
どこからともなく聞こえてくる謎の声が、蒼井の事を呼びとめてくるのだった。




