391話・蒼井の信用
「あの~お姉さま。御主ーーゲフン!......シュン様は一体誰に
向かってお話しをされているのでしょうか?」
対面には誰もいないはずなのに、そこに向かって話しかける蒼井の
姿を見て、ティが困惑の混じったハテナ顔で不思議がっている。
「うふふ。あれはひとりごとじゃないんですよ。あれはですね、
ナビゲーションシステムといって...」
「ナ、ナビゲーション?シ、システム??」
「う~ん、ナビゲーションっていうのがどういうものなのか、
それを上手く伝えて説明するには、少し時間が難しいですか...」
正直言って、ボクもその意味を理解するのにけっこうな時間を
取られちゃったしなぁ。
「とにかく。今は時間があんまりありませんから、そこら辺の
事情は後から追々と説明していきますね♪」
「はい!その時は是非、お姉さまとマンツーマンでお願いします!」
「「「な!?」」」
「そ、そうはいかないよ、ティお姉ちゃん!ひとりだけ良い思いは
絶対にさせませんから!」
「ええ。その説明には絶対、あたし達もついて行くからね!」
自分ひとりだけ抜けがけしようとするティに、ファニとスイネットが
激おこ表情で叫声を荒らげ、異議を口にする。
「あはは...ココちゃん、好かれていますなぁ。それで...シュン。
その子ども達を助けに行くつもりなの?」
「ああ。助けられる可能性があるのなら、やっとかないとね!」
アミューの問いに僕はニコッと微笑みを見せると、頭を縦に小さく
振った。
「え?た、助けにとは...も、もしかしてゲットンに連れていかれた
私達の仲間をですか!?」
「うん。そうだけど?何か問題でもあるの?」
「い、いいえ!問題などありません!それどころか、とても
ありがたい申し出です!ですが......」
仲間を助けに行くと口にする蒼井に対し、ロキが感謝の言葉を
述べるものの...
「仲間達が連れ去られてかなりの時間が経っています。残念ですが、
今から向かっても、きっと間に合いはしませんでしょう...」
...とロキが首を力なく左右に振り、無念な表情でそう告げる。
「大丈夫、絶対に間に合うって!それに行動しなきゃ、この状況は
良い方には動いてくれないぞ?」
「シュン様の言いたい事はわかります!わかりますが、昨日の朝に
この町を出た者に今から追いつくだなんて、奇跡でも起きなきゃ絶対に
無理ですよ!」
自信満々の態度で「間に合う」と豪語する蒼井に、ロキが困惑と諦めの
入り混じる表情を浮かべ、蒼井の言葉を否定してくる。




