384話・女神の他人事発言
「あ、あんたがそんな表情を乱すとは...その契約の指輪...
も、もしかして相当ヤバイ代物なの?」
「まあ...ね」
ナナーシュの問いにメイーナがひと言述べ、コクンと頭を縦に振る。
「あれってその名の通り、契約を簡易で行える、特殊なマジック
アイテムでさ...契約書や長ったらしい呪文抜きでその場で
即実行で主従関係ができるんだよ...」
「へえ...結構便利なアイテムじゃないの...。それのどこが厄介な
代物なのよ?」
「それがさ、あの指輪って未完成品で制限縛りが殆どがないのよ...。
だから、指輪を使用した者の力が弱くても、順さえちゃんと組めば、
複雑な契約をせずに、あっさり契約できちゃうんだ」
「マ、マジでか......」
契約の指輪の予想以上の効果にナナーシュは驚いてしまう。
「だからその契約する相手が、例え大精霊クラスの精霊だろうが、
私達みたいな高位の位置にいる女神だろうが、その順を充たせば
契約できちゃうんだな、これが!」
「な、なんですとぉぉっ!わ、私達女神とでもぉぉぉっ!?」
契約の指輪の物凄い効果に、ナナーシュが先程よりも更に驚き、
目を見開いて驚くしかなかった。
「...っていうか、あんた何でそんなマジックアイテムを作ったのよ!?」
ハッ!?
「ま、まさか...あんた、私達を操ろうとしてその契約の指輪を作ったん
じゃないでしょうねっ!?」
ナナーシュが、ワナワナと身体を震わせてメイーナが人差し指を向けてくる。
そんなわけないじゃん...と言いたいけどそれも面白いそうですね。
今度はそれ前提で作ってみますか♪でも、そうなるとスペックと
条件しばりを変えないとデミリットの方ヒドイ事になりそうですし...
うぬ、うむ...なら、ここをこんな感じにすれば......」
クスクスと笑顔を浮かべ、メイーナが悪巧み全開の表情で何かを
懸命に思考している。
「あんたの言う言葉は...全くシャレにならないからホントやめてね...」
その悪どい事を考えていそうな顔を見て、ナナーシュが呆れ口調で
ジト目になっている。
「でも、そっか...あの水人族の女神が契約の指輪をねぇ...。
そしてそれを持って、あなたの所に移動したのか、私の所に
移動したのかわからない状況なのですね?」
「まぁ、そういう事!」
「ふ~ん、なるほどねぇ...。それじゃ、その女神があなたの所に
行ってたら大変だよね?」
「あんたの所に行っても大変なのよ!あんたの所にいってもねっ!!」
相変わらずの他人事を言ってくるメイーナに、ナナーシュが目を見開き
説教する様に叫声を上げる。
「別に、私の所で誰にその契約の指輪を使われても、全然気なんて
しないわよ?所詮、他人事だし♪」
「イヤ、他人事じゃないわぁっ!あんたはその人族のトップの女神様なの!
だから気にしろよ!頼むからっ!!」
メイーナのあまりにも人族に対し、気の毒な程に楽天的な考えをしてくるので、
思わずナナーシュが身を乗り出して人族に同情の念を発してしまう。




