38話・どっちなんだ...!
「あ、あそこの岩影...何か怪しいなぁ............っ!?」
「ハァ...ハァ...ううっ、くぅ...ハァ...ハァ...」
「あの岩影から、確かに聞こえてきた......あそこでピンゴだ!」
僕は声の聞こえてきた岩影の方に、ダッシュで駆けて近づいて行く。
「あ...み、見つけた!間違いなく獣人の子どもだ!おいっ!大丈夫か!
息が荒いが、どこかケガでもしてい―――」
なっ!?こ、これはケガどころの話じゃない...。殆ど、虫の息じゃないか...!?
「ハァ...ハァ...誰...誰か...そこに...いるの...?」
「嗚呼!いる、ここいるぞ!まだ死ぬんじゃないぞ!今...治してやるから...っ!」
僕はWPを素早く取り出して、獣人の子どもの口の近くに持っていく。
「ほら...これを飲めば、きっとそんなケガなんてすぐに治っちゃうからな!」
「ハァ...ハァ...ハァ...ごふごふ...うぐうぅぅ......っ!?」
くそ、血が口から逆流してWPが喉を通って行かない...!それに殆ど、意識が
飛んでるから、薬を飲む力もないときている...。
「しょうがない...こうなったら、口移しで......」
僕はWPを自分の口に含み、それを獣人に飲ませる為に僕の口と獣人の口を
くっつけると、一気にWPを流し込んだ。
ごく...ごく...ごく...ごく......
「ふう...何とか、薬を飲ませるのには成功したな...。後は目を覚ますのを
待つだけだ......」
――――――――――
「うう...うう~ん...!?ここ...は...どこ...?ボク...確か...!?」
薬を飲ませてから数分後...獣人の子どもが目を覚ました。
「やぁ!気分はどうだい、獣人の...お嬢さんでいいのかな?」
君...女の子だよね!?僕のファーストキスの相手は女性って事で、
いいんだよねぇっ!?
だって、この獣人の子...こんなにもつぶらな瞳をしていらっしゃるし、
髪も長いし、それにそれにネコ耳だしっ!
あ...でもこの獣人の子...自分の事をボクって、呼んでいた様な気が...!?
うう...これは一体、どっちなんだ...!女の子なのか...?それとも男の子なのか...?
く...まぁ、いいさ...。最悪、キスした相手がおっさんとかじゃなかったんだ...。
それにこの子、よく見ると結構可愛らしいから...もし性別が男性だったとしても、
心のキズは、そこまでダメージを負わないだろう...。
よし!僕の腹は決まったっ!!
「も、もし、違っていたらゴメンね...はは!」
「え...あ、はい...ボク女だから...それで合ってますよ?」
うっしゃぁぁ―――っ!ファーストキスの相手が女性で良かったぁぁぁっ!!
「???」
そんな迷い事を蒼井がしているとは露知らず、獣人の娘がキョトンとした顔で、
蒼井の方を見ている。




