359話・なら、私もそれを貰わなきゃ!
「ちょ!どういう事なのよ、シュン。あのココちゃんの凄まじい動きと
攻撃力は一体何なのっ!?」
ココの動きや攻撃力が前よりも桁違いになっている事に、アミューが
目を見開き喫驚し呆然としている。
「ああ。あれはね...」
喫驚して口をあんぐりしているアミューに、僕はSTSUPカプセルの効果と
そのマジックアイテムをココに上げた事を教える。
「へぇ...ココちゃんにそんな凄いアイテムをねぇ...」
「ココはか弱い女の子だからね、あれをあげてもまだ心配なくらいだよ!」
「ほほう『か弱い』。だったら、『か弱い』私にもそのマジックアイテムを
くれるんだよね、シュン♪」
アミューが『か弱い』を強調しながら、添えた両手を蒼井の前にスッと差し出す。
「え...アミューは別にか弱くなんてな―――」
「か弱いわよね!か・弱・い・わ・よ・ね・っ!!」
「は、はい!アミューはめちゃくちゃ、か弱い女の子です!なのでどうぞ、
これをお納め下さいっ!」
アミューの黒い威圧感に思いっきりたじろいた僕は、急ぎ慌てて
マジックボックスの中からSTSUPカプセルを取り出し、片膝をつき、
頭を垂れながら、カプセルをアミューに手渡した。
「ありがと、シュン。いつかピンチの時がきたら使わせてもらうね♪」
「あ...うん。どういたしまして...」
アミューの感謝のお日様笑顔に、僕の胸がドキッと鼓動を高鳴りあげ、
頬は赤く染まってしまう。
「さて...ココちゃんの方はっと......」
アミューが蒼井に貰ったカプセルを懐にしまい、ココ達の方へと
目線を向ける。
「さ、さぁ、どうした...ココ?お、俺はまだ闘える...ぞ!」
ロキが瓦礫を払い、素早く身を構えて闘いの為の気合いを入れる。
「そんな肩で息をするくらいダメージを受けているのに...
そこまでボクを信じられないですか?だから闘うんですか...?」
「いいや...それは違うんだ、ココ!」
「え?」
ココの悲痛な嘆きの訴えを否定するかの様に、ロキが首を何度か
左右に振る。
「信じる、信じない...正直こんな選択はもうどうでもいいんだ。
俺がまだ闘う理由は只のひとつ!戦闘種族、狼族の獣人として
純粋に今のココと闘いたい...それだけなのさ!」
「ボ、ボクと闘いたい...?」
「ああ。キミと純粋に闘いたい!キミのお兄さんとお姉さんが
あのオーク野郎の介入を阻止してくれている、今の内にな!」
ロキがココの顔を真剣な面持ちでジッと見つめ、自分の思いを熱く
凛々と語ってくる。
「でも...それだったら、別に今じゃなくても、奴隷を解除した後に
いくらでも闘えるじゃないですか!」
「それは無理だな。ココの性格を考えれば、こういうきっかけでもないと
マトモに闘ってはくれないだろう...そうだろ?」
「そ、それは...」
ココの説得に対し、ロキから痛い所を突かれたココは、正直そうだと
言わんばかりの動揺を見せ、言葉が口どもってしまう。




