353話・絆の結晶を賭ける
「しょうがないと思うならさ、賭けをしませんか、ロキさん?
ボクの紋章の力を信じるっていう賭けを!」
ココがロキを静かに見据え、そう述べる。
「賭け...そうだな。もしお前に騙されてたとしても、肥え太った
人族の奴隷でなんかでいるよりも、同じ獣人のココ...お前の奴隷で
いた方がプライド的にもまだマシかもしれないな...」
ココの賭けをという提案に、ロキが今の状況よりは幾分かマシかと
小さく呟く。
「じゃ、じゃあ!」
「だが本当にいいのか、ココ?賭けは負けた方も対価を払わなければ
いけないんだぞ?」
「はい...それはわかってます!」
ロキの言葉に、ココが当然という表情で首を縦にコクンと振る。
「ならいい。その賭け...受けてやるよ!で、勝負の方法は獣人らしく
力比べでいいのか?」
「ええ、それでいいですよ!」
「よし!それじゃ、俺とココ...1対1で勝負して、もし俺がココに負けたら、
俺は潔くキミの奴隷になろう。だがもし俺がココに勝ったら、そうだな...
キミのつけているその装備を戴く!どうだ?それでもやるか、賭けをさ?」
この装備を...お兄ちゃんとボクの絆の結晶を賭ける......。
「ロキ君、賭けの対価に上げたココちゃんの装備マジックアイテムですが、
それってココちゃん専用で、ココちゃんにしか装備ができませんよ?」
賭けの対象になっているココの装備アイテムは、ロキには装備する事が
できない事をルビが忠告してくる。
「別にそれはどうでもいいんだよ。その装備アイテムが装備できようが、
できまいがな。俺が賭けにした対価は、今さっき、ココが述べ語っていた、
あのお兄ちゃんとの絆...それが賭けの対価なんだから!」
そのルビの忠告に、ロキがこの賭けの本当の対価を伝える。
「どうだ、ココ?その大事な、大事な絆のマジックアイテムを
俺に奪われるかもしれないんだぞ?それでも、キミは他人である
俺を助ける為にそれを良しとするのかい?」
「うん。ボクはキミを...ううん、キミ達を助けたい!だからっ!」
神妙な面持ちでロキが賭けをするか、どうかを問うてくるので、
ココは静かに首を縦に小さく振って、返事を返す。
そうさ...お兄ちゃんがあの時、ボクをどん底の暗闇地獄から救い
出してくれたように、今度はボクが無理矢理奴隷にされている
この子達を助けるんだ!
ココが自分が味わった絶望と言う名の奴隷生活を思い出し、
その絶望を目の前の少年にさせまいと、心と身体に気合いを
入れて闘志を燃やす!
「そういう事だからさ、ルビお姉ちゃん。今から行う決闘に手出しは
しないでね!」
「ココちゃん...。うん、わかった!相手が卑怯な手を使わない限り、
私からは絶対に手出しはしないから、だから安心して戦って!」
ロキとの賭けを受け入れたココに、ルビがサポートは任せろと
言わんばかりに、大きな胸が揺れる程の力でドンッと胸を強く叩いた。




