35話・アミューの実力
しばらく、東の森をアミューの案内で歩いていると、少しだけ拓けた
場所に辿り着く。
「ほら、ここら辺がゴブリンの生息地だよ、シュン!」
「ここにゴブリンがいるんだね...?」
「うん。この拓けた場所がゴブリンがいるって証拠だしね!」
アミューの説明だと、ゴブリンが狩ったモノを食べる為に木を伐採する
かららしい。
あいつら、意外に頭がいいんだ...ちょっとビックリ。
「んじゃ、クエスト討伐...ゴブリン退治を始めますか...!」
僕とアミューは身構え周りを見渡すと、左の方に人影らしきモノが2つ見えた。
「あれは...うん、間違いないゴブリンだよ!よし!私が様子を見つつ近づいて
攻撃するから、シュンはそこに待機して、アイテムを使う準備をお願い!」
「うん、わかった...!」
僕が見守る中、アミューがゴブリンの元に少しずつ、少しずつと近づいて行く...。
「ぐるるる...」
「最初の一匹は頂いたっ!てりゃぁぁぁ―――っ!」
こちらの様子を伺っていたゴブリンの隙をついたアミューが、突撃する様に
ダッシュすると、ゴブリンに剣を大きく振りかぶってそして斬りかかる!
「ぐるあぁああぁあ―――――っ!!」
アミューに斬られたゴブリンは、断末魔を上げてその場に倒れ込む!
「そこ!油断だよ!ウリャァァァァ―――――ッ!!」
「ぎしゃああぁぁあぁぁ―――――っ!!」
斬った剣の刃を上に上げると、もう一匹のゴブリン目掛けて、
下から斬り上げる様にゴブリンを斬った!
「ふう...これで、残り数は後、3匹だね♪」
「おおぉぉ、ズゲェ―ッ!何、今のコンボ斬り!カッコ良過ぎだろ!」
アミューの連続斬りを見た僕は、その目を見開き興奮の叫声を荒らげる。
「なぁ、なぁ、アミュー!今使っていた技って、一体なんて言う技なんだい?」
「今の...?今のは技でも何でもない、ただの剣攻撃だよ?」
「え...?あの動きが技じゃない...マジで?」
アミューの言葉に、僕は思わず目を丸くし驚いてしまう。
「ほへぇ!それであの威力なんだ...本当に凄いんだね、アミューって!」
「まあ、一応、これでもBランクの冒険者なんで、これくらいはできないとね♪」
「Bランク...マジで?」
僕と年齢があんまりかわらないって感じなのに、もうそんな実力者なんだ...。
「もう...さっきから、マジで、マジでって...いくらなんでも、ちょっとばかり
驚き過ぎだよ、シュン...」
蒼井の誉め言葉に少し照れているのか、恥ずかしそうな口調でそう述べる。
「はは...ゴメン、ゴメン!だって僕、こういう魔物との戦闘ってさ、これが
初めてなんだよ!」
「え...シュンって、魔物との戦闘経験がないの?」
「うん。僕の戦闘経験って、あの屋台で倒したチンピラ二人と、後...
魔族だったっけ?そいつと合わせて三人だけだよ」
「へっ!?い、今、ままま、魔族って、いい、言わなかったぁぁぁっ!?
シュン...あなた、魔族と戦った経験があるのぉぉぉぉっ!?」
魔族との戦闘経験があると聞いたアミューが、目玉が飛び出そうなくらい
目を見開いて、ビックリしている。
「多分...だってその場にいた騎士が、そいつの事を魔族って呼んでいたから...」
「やっぱり魔族なんだ...。そ、それで、シュンはその魔族との戦闘状態から、
どうやって逃げ出す事ができたの?」
「逃げ出す?魔族からどうやって、逃げたのかって事?」
「う、うん!だって、あいつらに狙われたらそこで人生終了って言われているん
だよ!それを無事に逃げ果せるなんて...そんな方法があるんなら、是非、私にも
教えてよ~っ!?」
アミューが身を乗り出す様に蒼井に近寄り、答えを聞きたくて目をキラキラと
輝かせている。
「じ、人生終了って、いくらなんでも過大評価し過ぎじゃないか?だってあいつ、
結構あっさりと死んじゃったぞ?」
「へ...あ、あっさりと死んじゃった...!?じゃあ、もしかして魔族との戦闘を
回避したんじゃなく...倒しちゃった...と?」
「うん。だから、魔族ってそんな強くないと思うよ...。...て、あれ?アミュー?
ちょっと、人の話を聞いてる?」
「え、い、イヤ...え...た、倒した...魔族を...?それって、どういう意味...??」
蒼井の口から語られた、その信じられない言葉に、アミューの脳がついていけない
のか、錯乱状態であわわと慌てふためく姿を見せている。