34話・東の森
「ハァ...ハァ...くそ、なんでこんな所に、魔族の奴がいるんだよ!」
「ギャハハハ!逃げろ!逃げろぉ!逃げ惑え、下種で劣等な種族がぁぁっ!」
『喰らって死にさらせぇぇっ!魔轟波ぁぁぁ―――っ!!』
「ぐはぁあぁぁぁ―――――っ!」
「タビットォォッ!?」
魔族の放った黒い衝撃波がタビットと呼ばれる男に直撃した瞬間、
タビットと呼ばれた男が、その場からいなくなった様に消えさった!
「そ...そん...な、タビット...まで...そんなぁ......」
目の前で消えたタビットと呼ばれる男の場所をブルブルとその身を
震わせて見ている。
「ふん、本当...ヘドが出る弱さだな...。こんなに脆いクソな人族が...
何で、この世界に君臨していたのか...理解に苦しむクソさだぜ...!」
ダビットと呼ばれた男と、そこでブルブルと震えている男を見て、
魔族が呆れた口調で言葉を洩らす。
「さぁてぇ...後はそこのガキとてめえで終わりだな...」
「ひいいぃぃっ!?」
「そんなに怯えるなよ...てめえも男だろうが...最後の瞬間くらい、
気合いを入れろやっ!!」
魔族はその怯えている男に剣を突き出し、気合いの叫びを上げると、
大地を蹴りあげ突進してきた!
「ひぃぃぃっ!?い、嫌だ...嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ...俺はこんな所で
死にたくない...こんな所でぇぇ、死にたくないぃぃぃ―――――っ!!」
「え...!?ご、御主人様!?」
グサ――ッ!!
「そ...そんな...御主人...様...何で...」
魔族に怯えていた男が自分の奴隷の子どもの首根っこを掴み、
そのまま、魔族の突進してくる剣に目掛けて投げつけた!
「あの野郎...ガキを盾にして逃げやがった...!あいつらの方が
余程、魔族みたいだな...っ!」
魔族が呆れている隙をついて、その怯えていた男が一目瞭然に
その場を逃げ出していた。
「ぐ...うう...う...」
「お前人生、運がなかったな...。あんなクソみたいな主人の奴隷に
なっちまうなんてな...」
「うう...ハァハァ...ぐふ...ううう...」
「さて...目的の為に俺達の姿を見た者は始末しなきゃけないんだが...
どのみち放って置いても、このガキは数十分でくたばっちまうか...」
「ハァ...うう...ハァハァ...ぐふ...う...うう」
「どうする、ガキ?その苦しみを数十分も味わいたくないのなら、
俺が今すぐに楽にしてやってもいいぞ...?」
魔族は少し憐憫な顔でその奴隷の子どもを見て、介錯はいるかと
問いただす。
「ボクは...まだ...生きたい...まだ...死ねないんだ...ゴフ、ゴフ...!」
「そうか...なら、お前の命が果てるまでには、後数十分の時間がある...。
それで何とか生き残りをかけみろ...。もしかしたら、助かる希望があるかも
しれないぜ...じゃあな、ガキ!」
奴隷の子どもの答えを聞き、魔族は突きつけていた剣を鞘になおすと...
逃げた男を追う為にその場を去って行く。
――――――――――
そんなの出来事が繰り広げられていた東の森へ、シュンとアミューが
ゴブリン討伐の為にやって来た。
「ほら、見てシュン!あれがゴブリンの生息地【東の森】だよ!」
シュンはアミューの案内で辿り着いた東の森を見ると、そこには
大きな森が広がっていた。
「東の森...あの町の東の方角にあるから、東の森か...」
安直なネーミングセンスだなぁ...もうちょっと捻って考えようよ、
カトンの町の人...。
「さぁ、アミュー!日が暮れる前にゴブリンをさっさと討伐しちゃおう!」
「うん、そうだね...でも、その前に戦闘準備はしておかなきゃね!」
「あ、そうだった...戦いの準備は大事だよね!」
こうして、僕とアミューはしっかりと討伐の準備をして、そして東の森へと
入って行った...。




